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「日常の中の非日常」 少し不思議な伊坂幸太郎作品5選


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伊坂幸太郎さんは、日常の中にちょっとした不思議な要素を加えた作品を多く執筆している作家です。デビュー作の『オーデュボンの祈り』も喋るカカシがいる架空の島での物語でした。

ここでは、少し不思議な世界観を持った伊坂幸太郎さんの作品を5作紹介していきます。独特で洒脱な伊坂ワールドを堪能できる作品を用意しました。

 

死神の精度

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~あらすじ~

人間の世界にやってきた死神の千葉は、一週間後に死ぬとされる対象を観察し、その人間の生死を決める。千葉が「可」と判断すればその対象者は死ぬ。一方、千葉が「見送り」と判断すれば、対象者が死ぬことはない。これは、千葉と6人の人間の話。6つの話が語られた時、話は奇妙なつながりを見せ、爽快な結末を迎える。


音楽好きな死神の話

本作は、死神というファンタジー要素を加えたミステリー作品で、6編が収録されている連作短編集となっています。各話独立した話として描かれているようで、最終的に少しの繋がりを見せるところが面白い作品となっています。

こういった巧みな構成が魅力の一作ですが、本作は作品に漂うどこか退廃的な空気感も非常に魅力的な作品です。普段ミステリーをあまり読まない方にも是非読んでほしい作品となっています。

『死神の精度』(文春文庫)

 

魔王

fusigi-isakakoutarou3~あらすじ~

会社員の安藤は、自分が不思議な能力を持っていることに気が付く。その能力とは、相手に自分の喋らせたい言葉を喋らせる「腹話術」。その頃、犬養舜二という政治家が世間をにぎわせていた。歯に衣着せない物言いの犬養は、若者を中心とした国民から支持を得ていた。しかし、安藤は犬養と犬養を取り巻くその環境に違和感を抱き始める。そこで安藤は、とある行動に出ることを決意する。


伊坂幸太郎が描く大衆

本作は、安藤という男の物語です。安藤は、常に何かを考えているような男で、周囲から「考察魔」と呼ばれているほどです。そんな安藤は、いろいろなものに流されていく大衆に違和感や危機感を覚えます。そして、その流されていく恐怖が本作のテーマになっていると考えられます。

洒脱な会話と面白い設定を下敷きにして展開される物語は含蓄があり、考えさせられる内容となっています。

『魔王』(講談社)

 

モダンタイムス

fusigi-isakakoutarou4~あらすじ~

現在から50年後の物語。会社員の渡辺拓海は、失踪した五反田という先輩の仕事を引き継ぐこととなる。ちなみにその仕事とは、とある出会い系サイトの仕様変更だった。その仕事を受けてからだった。安藤の日常が少しずつおかしくなっていったのは。同僚や上司に起きる不幸。よく当たる不思議な占い。失踪した先輩の行方。これらが絡まり合っていく中で、過去にあった一つの事件が浮き彫りになっていく。


「魔王」のその後

本作は、「魔王」の50年後の時代を書いた作品となっています。そのため、魔王で出てきた登場人物が何人か登場します。そしてその登場人物が物語の鍵を握っています。

本作はとあるキーワードをインターネットで検索したことが原因で、命を狙われる人たちを描いた話です。そこには情報社会や管理社会に警鐘を鳴らすようなメッセージが込められています。

『モダンタイムス』上下巻セット(講談社)

 

終末のフール

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~あらすじ~

3年後に小惑星が衝突し、地球が滅亡するとされる世界。小惑星の衝突が発表された当時はパニックに陥っていた街も今では、小康状態を保っていた。余命3年の全人類は、その世界で一体何を想うのか。確執があった娘と再会する父。マスコミに妹を殺された兄。子供を身ごもった夫婦。余命3年の中で見つける人生の答えは果たして――。


伊坂幸太郎が描く終末世界

本作は、終末世界で生きる人々の物語となっています。描かれるのは、終末世界で起きると考えられる略奪行為や暴力行為といったものではありません。本作で描かれるのは、どこにでもあるような些細な幸福や衝突です。3年後に死んでしまうという設定が、それら些細な出来事を現実世界より、切実に浮かび上がらせています。

読後は、もしあと3年しか生きられなかったらどうするのかと、周囲に訊いてみたくなるような作品です。

『終末のフール』(集英社)

 

SOSの猿

~あらすじ~

困っている人を見かけると放っておくことができない遠藤は、本業とは別に悪魔祓いの仕事をしていた。そんな遠藤は幼馴染から一つの依頼をされる。それは、引きこもりの息子をなんとかしてほしいというものだった。そこで、遠藤は引きこもりの少年に接触する。一方その頃、会社員の五十嵐は、300億円の損失を出した株誤発注事件の調査を行っていた。そんな折、五十嵐の前に、『西遊記』に出てくる猿が現れて――。


虚構と現実の話

本作は、遠藤視点の『私の話』と五十嵐視点の『猿の話』が交互に語られていきます。2つの話が少しずつ絡まり合い、やがて株の誤発注事件の真相が明らかになります。『猿の話』では、斉天大聖を名乗る猿が五十嵐の前に現れ、五十嵐を惑わせます。このファンタジックな設定が、物語の先を読みづらくしていて、最後までどうなるかわからない話となっています。

本作は漫画家の五十嵐大介さんが描く「SARU」という漫画とリンクしているため、この作品が気に入った方は是非そちらも手に取ることをお勧めします。

『SOSの猿』(中公文庫)

 

まとめ

以上が少し不思議な伊坂ワールドを堪能できる5作でした。

伊坂幸太郎さんは、上述した5作以外にもファンタジーともSFともいえる不思議な作品を発表しています。紹介した中で面白いと思った作品があれば、ぜひ伊坂幸太郎さんという作家にも注目してみてください。

⇒伊坂幸太郎さんの作品をもっと見る

映画化している作品も多くあります。
興味のあるかたはこちらもチェックしてみてくださいね!

ライター

ツナシ
青春小説とミステリー小説が好きな20代。ライトノベルから純文学まで読みますが、浅く広くといった感じです。小説は読むのも好きですが書くのも好きです。
先日某小説新人賞を賜り、現在出版に向けて作業中。