田中芳樹『アルスラーン戦記』のあらすじ・魅力とは?
更新日:2019/11/8
『銀河英雄伝説』や『創竜伝』で知られる人気作家、田中芳樹さんが手掛けたファンタジー小説『アルスラーン戦記』。
1986年に第1巻『アルスラーン戦記 王都炎上』が出版され、2017年に完結。今もなお愛されている人気作です。
2013年には『鋼の錬金術師』などの人気作品を生みだした漫画家、荒川弘さんによって漫画化。2015年、2016年にはテレビアニメも放映されました。
ここでは、そんな『アルスラーン戦記』の魅力をお伝えします。
『 アルスラーン戦記 』あらすじ
『アルスラーン戦記』
田中芳樹(著)、光文社ほか
『アルスラーン戦記』の主人公は、パルス王国の王太子アルスラーン。武勇に優れた父アンドラゴラスとは違い、心優しい凡庸な少年です。
アルスラーンが14歳となり、彼はアトロパテネで初陣の時を迎えます。
対する敵は、イアルダボート教を信仰する異教徒のルシタニア王国。
パルス王国が有利と思われていましたが、大将軍カーラーンの裏切りによって敗北に追いやられます。(第一次アトロパテネ会戦)
アルスラーンは、万騎長ダリューンの助けによって戦場から逃げ出すことに成功。
しかし、父であるアンドラゴラス王は捕らえられ、パルス王国の王都エクバターナもルシタニア王国の手に落ちてしまいます。
アルスラーンはダリューンとともに、ダリューンの旧友ナルサスを訪ね、彼を軍師に迎えます。
その後、流浪の楽士ギーヴや、女神官のファランギースも加わり、アルスラーンの、ルシタニア王国から王都を奪還する戦いの旅がはじまります。
復讐に燃えるもう1人の王子ヒルメス
ルシタニア王国では、もう1人の「パルスの王子」が暗躍していました。
それが、死んだと思われていた王子ヒルメス。
かつてパルス王国を支配していた蛇王ザッハークの復活を望む魔導士たちの力を借り、自分の復讐を果たすべく、ルシタニアの客将となっていたのです。
アトロパテネ会戦も、魔導士たちが霧を発生させ、パルス王国に不利な戦況となるように仕組まれたものでした。
アンドラゴラスに父を殺され、自分も顔にひどい火傷を負ってしまったことで、復讐心に燃えるヒルメス。自分こそがパルス王国の正統な王であると考えています。
ヒルメスとアルスラーン。2人の王子の陣営と、その周辺国、そして魔導士たちの思惑が混じり合い、壮大な戦いが繰り広げられていきます。
スケールのある会戦描写と、魅力あるキャラクター
『アルスラーン戦記』の魅力のひとつは、大河ファンタジーとしてのスケールの大きさ、個性あふれるキャラクターたちが織り成す、智略を尽くした会戦の描写です。
パルス軍の軍師であるナルサスは、常に冷静に戦略を立て、相手の裏をかいて犠牲の少ない戦い方をするのが得意です。
そしていざ戦いとなれば、ダリューンをはじめとするパルス軍の将軍たちが一騎当千の戦いをみせてくれます。
対する敵軍も、ヒルメスをはじめ、ルシタニアの王弟ギスカールなど、クールで魅力あるキャクターが登場します。
戦いを通じて成長する主人公
そしてもうひとつの魅力が、主人公アルスラーンの成長です。
アルスラーンは、シリーズの初期はまだ世間しらずな甘さのある頼りない王子で、ときには失敗もおかします。
しかし、パルス軍の将軍たちや、ルシタニア人との交流、みずからの出生の秘密に触れることで、徐々に成長していきます。
特にナルサスには多くのことを教わり、価値観を広げていくのですが、印象的なシーンがあります。
カシャーン城塞の主を殺した後、奴隷を解放しようとして、逆に奴隷に返り討ちにされてしまいそうになるシーンです。
ナルサスは奴隷という生き方はある種楽なことでもあるとアルスラーンに告げます。彼もかつて同じ失敗をしたことがあったのです。
「だけど、おぬしは信念に基づいて正義をおこなったのではないか。そうだろう?」
ナルサスは、ため息をついたようであった。
「殿下、正義とは太陽ではなく星のようなものかもしれません。星は天空に数かぎりなくありますし、たがいに光を打ち消しあいます。ダリューンの伯父上が、よくおっしゃったものです。お前らは自分だけが正しいと思っとる、と」光文社『アルスラーン戦記 王都炎上・王子二人』 p.195より
こうして、アルスラーンは王都奪還を目指しながら、多くの将軍たちを惹きつけるカリスマ性を備えた王子へと変貌していくのです。
壮大な大河ファンタジー作品を
読み応えのある長編シリーズで、たくさんの国や陣営が入り乱れた戦争や政争の描写に一気に引き込まれていきます。
今までに『アルスラーン戦記』を読んだことのない方はもちろん、漫画版やアニメ版を見たことのある方も、ぜひ原作を手にとってみてください。
壮大なスケールの物語にきっとワクワクできますよ!
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