ここからプロ作家が誕生する!エンタメ系「公募新人賞」4選
毎年、公募の新人賞から何人ものプロ作家が誕生しています。中には、今までの作家にないとてつもない才能を持っている新人もいます。そのため、公募の新人賞に注目していると、いまだかつてない傑作に出会えることがあります。
ここでは、小説好きなら知っておいて損はない、エンタメ系公募新人賞を四つ紹介していきます。
江戸川乱歩賞
♦主な受賞作
『13階段』 / 高野和明
『放課後』 / 東野圭吾
『焦茶色のパステル』 / 岡嶋二人
♦特徴
江戸川乱歩賞は、ミステリー系の新人賞で推理作家の登竜門でもあります。
即戦力作品が受賞する傾向が強く、受賞作は新人賞ながら、どれも高い完成度をほこっているのが特徴です。上述した作品の三作家はのちに人気作家となっています。特に東野圭吾さんは、いまや日本を代表するエンターテインメント作家といっても過言ではありません。
♦最終落ちの作家がすごい
江戸川乱歩賞は、非常にレベルの高い新人賞で、受賞作家が素晴らしい資質の持ち主であることは間違いありません。しかし、最終候補に残る作家さんも優れた作家さんが多いところが特徴です。
いまや人気作家となっている島田荘司さんや堂場瞬一さん、折原一さんなども受賞には至りませんでしたが、乱歩賞で最終選考に残っています。
受賞作家のみならず、最終選考に残った作家からも目が離せない新人賞です。
メフィスト賞
♦主な受賞作
『すべてがFになる』 / 森博嗣
『クビキリサイクル』 / 西尾維新
『冷たい校舎の時は止まる』 / 辻村深月
♦特徴
メフィスト賞は、少し変わった公募新人賞です。一般的な公募新人賞というのは、まず「下読み」という応募作を読む作業があり、そこから二次選考に進む作品を決定します。そして二次選考にあがってきた作品を編集者が読み、選考を進めていきます。
ただ、メフィスト賞の場合、その「下読み」がなく、全ての応募作を編集者が読みます。ですから、編集の誰かがその作品を気に入れば、そのまま受賞ということもありえます。そのため少し変わった作品も受賞することがあります。そういったこともあり、メフィスト賞の受賞作は個性的な作品が多いところが特徴です。
今でこそ、応募作に枚数制限が設けられましたが、かつては上限がなく、原稿用紙何千枚分のとんでもない大作がやってくることも日常茶飯事だったそうで、そういった作品も何作か受賞しています。
♦カリスマ的な人気作家を続々と輩出
個性的な作品の多いメフィスト賞は、受賞作家が長く活躍することでも有名な新人賞で、今まで多くの人気作家を輩出しています。
理系ミステリーの旗手で、著作累計1,000万部以上を売り上げている森博嗣さん。ライトノベル界でカリスマ的な人気を博している西尾維新さん。巧みな心情描写でヒット作を数多く出している辻村深月さん。芥川賞候補に何度もノミネートされていて純文学というジャンルで高い評価を得ている舞城王太郎さんなど。メフィスト賞受賞作家は、根強いファンを持つカリスマ的な作家さんばかりです。
日本ホラー小説大賞
♦主な受賞作品
『夜市』 / 恒川光太郎
『黒い家』 / 貴志祐介
『ホーンテッド・キャンパス』 / 櫛木理宇
♦特徴
1994年にはじまった日本ホラー小説大賞は、2016年までに計23回行われています。その名の通り、ホラー小説を対象とした新人賞ですが、募集しているのは広義のホラー小説であるため、作風に幅があるのが特徴です。
上述した「夜市」はファンタジー色が強い作品ですし、「ホーンデット・キャンパス」は、作品にミステリー要素と大学生の軽い恋愛要素を加えたライトホラー小説となっています。ホラー小説が苦手な方でも読める受賞作が多いのが日本ホラー小説大賞の一つの特徴です。
♦乱歩賞同様、最終候補に残った作家もすごい
日本ホラー小説大賞は、江戸川乱歩賞と同様レベルの高い公募新人賞です。これまた江戸川乱歩賞同様、最終選考に残った作家さんや作品のレベルが高いところが特徴としてあります。
作家では、のちに直木賞受賞作家となる朱川湊人さんや道尾秀介さんなどが最終選考に残っています。一方作品の方では、社会現象を巻き起こした「バトルロワイヤル」などが最終選考に残っています。
最終候補に残る作品や作家にも注目したい新人賞です。
電撃小説大賞
♦主な受賞作
『塩の街』 / 有川浩
『ブギーポップは笑わない』 / 上遠野浩平
『アクセル・ワールド』 / 川原礫
♦特徴
電撃小説大賞は、ライトノベル系の新人賞としてスタートした新人賞です。
ただ、今はライトノベル作品の受賞と同時に一般文芸寄りの作品が受賞することもあるのが特徴です。ちなみにライトノベル系の受賞作品はライトノベルレーベルの「電撃文庫」から刊行され、一般文芸寄りの受賞作品は、「メディアワークス文庫」から刊行されます。「メディアワークス文庫」は、ベストセラー作品にもなった「ビブリア古書堂の事件手帖」が刊行されているレーベルです。
♦電撃小説大賞はここがすごい!
電撃小説大賞のすごいところはライトノベル系の新人賞でありながら、のちに一般文芸でも活躍するような作風の広い作家を多く輩出しているところです。
「図書館戦争」などで有名な直木賞作家の有川浩さんや上述した「ビブリア古書道の事件手帖」の三上延さんも電撃大賞出身です。ちなみに三上さんは最終選考に残りませんでしたが、“拾い上げ”でデビューした作家です。こうした“拾い上げ”の中からも多数の人気作家を輩出しているところが電撃小説大賞の大きな特徴です。
まとめ
以上が、代表的なエンタメ系の四つの公募新人賞です。この四つの新人賞出身の作家から流行やベストセラーが生まれることも少なくありません。
文学賞に注目すると読書の幅がぐっと増えます。ぜひ参考にしてみてください。
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