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夜空の下で読みたい!「星」がテーマのしっとり本


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毎年、七夕が近づくと夜空を見上げることが増えてきます。天の川をはさんだ織姫と彦星の伝説をはじめ、星座にはさまざまな神話があり、星を眺めているとなんだかロマンチックな気分になりますね。

今回は、星がきれいな夜にぜひ読んでほしい、「星」や「宇宙」をテーマにした小説や漫画をご紹介します。

 

新編 銀河鉄道の夜 / 宮沢賢治

1

「星をめぐる旅」を描く、ロングセラーの名作――

銀河をゆく鉄道に乗って、星々をめぐる旅をする、宮沢賢治の古典的名作です。貧しい少年、ジョバンニは、学校のみんなにからかわれる孤独な日々を送っています。その中で、唯一ジョバンニをからかわない、カムパネルラという少年がいました。

烏瓜を川に流すケンタウル祭の夜、ジョバンニが丘の上にやってくると、どこからともなく「銀河ステーション、銀河ステーション」という声が聞こえてきます。そして目の前が明るくなったかと思うと、いつのまにかジョバンニは「銀河鉄道」の小さな列車に乗っていました。そこには、カムパネルラの姿もありました。

ジョバンニとカムパネルラは、銀河鉄道に乗り、星座の間を旅して回ります。旅の果てに見つかる「ほんとうの幸」とはなにか。幻想的でどこか悲しげな雰囲気が胸を打ちます。

宮沢賢治は岩手県生まれの童話作家で、森羅万象の姿を生き生きと描く名作の数々は世代を超えて愛されています。この「銀河鉄道の夜」だけではなく、二つ並んだお星さまを主人公にした「双子の星」、醜いよだかが夜空の星のひとつとなるまでを描く「よだかの星」など、夜空を舞台にした作品を数多く残しています。

■『新編 銀河鉄道の夜』 宮沢賢治/著、新潮社

 

星の王子さま / サン=テグジュペリ

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不時着したパイロットが出会った、不思議な少年――

「星の王子さま」は、飛行士であり作家でもある、サン=テグジュペリの手になる童話作品です。1943年に出版されて以来、世界中で愛されている大ベストセラーです。

ある日、パイロットである主人公は、乗っていた飛行機が故障し、サハラ砂漠に不時着します。そこで主人公は、不思議な少年に出会います。少年は主人公にヒツジの絵を描くようにせがまれます。主人公は、飛行機を修理しながら、少年と話をし交流を深めていきます。じつは、少年は遠い小さな星からやってきた王子でした。少年は、星々をまわって旅をした時の話を主人公に聞かせます。

「童話」という形をとってはいますが、どこか抽象的な語り口で語られる物語は難解で、子ども向けというよりは、大人に向けた物語のようにも感じられます。「星の王子さま」には、まるで何かの暗喩のようなエピソードが多く盛り込まれているため、さまざまな解釈が存在し、解説本も多く出版されています。

一度読んだことがある方も、ぜひ再読されることをおすすめします。改めて読んでみると、それまでに気づかなかった新たな発見があることでしょう。

■『星の王子さま』 サン=テグジュペリ/著、内藤 濯/訳、岩波書店

 

天地明察 / 冲方 丁

3

江戸時代、「日本初」の暦にかけた天文学者の情熱――

「天地明察」は、江戸時代に実在した天文学者、渋川春海が、日本で初めての独自の暦を作り上げるまでを描く小説です。第7回 本屋大賞を受賞し、2012年には映画化もされました。

主人公である渋川春海(安井算哲)は、徳川家に仕える碁打ち衆ですが、その一方で本来の仕事とは関係ない算術や星の観測に熱中している男でした。ある日、老中の酒井に呼ばれ指導碁を打ちにいくと、酒井は春海に算術のことをたずねます。春海が算術に長け、星についても詳しいことを知った酒井は、春海に北極星の緯度を観測して回る旅に出ることを命じます。それは、改暦のための旅でもありました。

星は眺めて楽しむものだけではなく、その運行から方角や暦を知るための大事な指標でもあります。そして、星の動きを読んで暦を作るためには、数学の知識も不可欠です。

「暦づくり」というと一見地味なテーマのように感じられますが、天文と数学に長けた主人公が、試行錯誤を重ねながら改暦を目指す姿、その情熱にぐいぐいと引き込まれ、楽しみながら読み進めることができます。

■『天地明察』 冲方 丁/著、角川書店

 

プラネタリウムのふたご / いしいしんじ

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プラネタリウムで拾われた双子の辿る、数奇な人生――

プラネタリウムの解説員、「泣き男」は、ある日プラネタリウムに捨てられた双子を拾います。泣き男は、ふたりを「テンペルタットル彗星」にちなみ、テンペルとタットルと名付けます。ふたりは、プラネタリウムで「泣き男」の解説を聞きながら成長し、やがて別々の人生を歩むことになります。

手品師の一座についていき、凄腕の手品師として名声を得るテンペル。村にとどまり、郵便配達員として働きながら、プラネタリウムの解説を続けるタットル。たくさんの出来事や人との出会いが、穏やかに紡ぎ出されます。

現実世界を舞台にした話のようでもあり、無国籍ファンタジーの世界のようでもあり、童話のような味わいがあります。

双子の育ての父である泣き男や、成長したタットルがプラネタリウムで語る星座の物語も面白く、星を見上げたくなることうけあいです。

テンペルが見せる「手品」と、泣き男とタットルが映す「プラネタリウムのにせものの星」は、どちらも「人をだます」もの。だけど、「だます」こと、「だまされること」は決して悪いことではない。そんなことに気づかせてくれる作品です。

■『プラネタリウムのふたご』 いしいしんじ/著、講談社

 

星は歌う / 高屋奈月

5

星を愛する少女の切ないラブストーリー ――

大ヒットコミック「フルーツバスケット」の作者、高屋奈月さんによるちょっと切ないロマンスストーリーです。

主人公のサクヤは星を見るのが大好きな少女。星空鑑賞同好会の会長でもあり、星について勉強しています。サクヤは、従兄弟であり親代わりでもある奏と二人で暮らしていますが、彼女の18歳の誕生日の日、二人の家に少し変わった少年、チヒロが訪れます。帰り際、チヒロはサクヤを「がんばったな」と褒め、初めて人に優しい言葉をかけられたサクヤは感動します。

しかしその後、チヒロと再会すると、チヒロは打って変わってサクヤに冷たい態度をとり、「嫌いだ」と言い放ちます。その言葉で、サクヤはチヒロを好きになってしまったことを悟ります。

それぞれに葛藤を抱えた登場人物たちが、少しずつ進んでいく姿にグッときます。少し悲しくて優しいラブストーリーで、心理描写はとても繊細。星空の下でしんみりとした気分に浸りながら読みたい1作です。

■『星は歌う(1)』高屋奈月/著、白泉社
■『星は歌う』セット

 

星空の雰囲気に浸ろう

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夜空の星を見上げると、なんだかロマンチックで切ない気持ちになりますが、同時に元気をもらえますよね。今回ご紹介した本は、どれも幻想的でしっとりとした雰囲気のある作品ばかりです。夏の夜、ぜひ一度お手にとって、その世界観にじっくりと浸ってみてくださいね。

 

ライター

ラッテ
3度の飯より本が好き。興味のおもむくままに、いろいろな分野の本を読んでいます。特によく読むジャンルは、IT、美術、語学、旅行、インテリア、漫画など。本好きが高じて、書店員をしていたこともあります。