おすすめ群像劇小説4選|バラバラだった話がつながる爽快感!
群像劇とは、多くの登場人物が入り乱れ、ばらばらだった話が繋がりを見せ、やがて収束していくような作品のことです。
上質な群像劇ですと、ドミノが次々と倒れていくような、あるいはパズルのピースがはまっていくような爽快感を得ることができます。
ここでは、そんな傑作群像劇を4作ご紹介します。
おすすめ群像劇小説1
『ラッシュライフ』伊坂幸太郎
『ラッシュライフ』
伊坂幸太郎(著)、新潮社
~あらすじ~
画商の老人ととある賭けをする画家の女性。泥棒を生業にしている男。父に自殺され、新興宗教にはまる青年。不倫相手の妻を殺そうともくろむ女性カウンセラー。野良犬と出会う失業者の男。
彼らを取り巻く5つの話。そこに強盗の老夫婦や歩くバラバラ死体の謎が絡み、やがて話は、意外な結末を迎えることとなります。
だまし絵のような巧妙な構成
本作は伊坂幸太郎さんの第2作目の長編小説です。「伊坂幸太郎」という作家が注目を集めるきっかけとなった作品でもあります。
語られるのはとある街で起きる5つの物語。一見バラバラな話が、少しずつ関わり合い、収束していく筋書きとなっています。
伏線回収が鮮やかで、読後に「なるほど。そういうことだったか」と思えるようなそんな作品です。群像劇の醍醐味でもある少しずつ話が繋がっていく爽快感を味わえる一作となっています。
ちなみに本作は伊坂幸太郎作品ではおなじみとなっている泥棒の黒澤がはじめて登場した作品でもあります。他にも、前作『オーデュボンの祈り』の主人公のその後が描かれていたり、のちに発表される作品の登場人物が出ていたりと伊坂ワールドを読み解くうえで、欠かせない作品となっています。
おすすめ群像劇小説2
『バッカーノ』
『バッカーノ』
成田良悟(著)、メディアワークス
~あらすじ~
時は1930年。場所は禁酒法時代まっただ中のニューヨーク。そこに個性的な人々が集まります。
グランド・セントラルステーションに到着した緊張感のない泥棒カップル。問題を抱えたマフィアの三兄弟。カモッラという裏組織で昇進式を前にした青年――。
そんな彼らの物語の中に、「不死の酒」が紛れ込みます。「不死の酒」とは、その昔錬金術師が作り出した、飲めば不老不死になることのできる酒のことです。
「不死の酒」を中心に、あらゆる人々と組織の思惑が交錯。こうしてニューヨークの街での馬鹿騒ぎが幕をあけます。
これぞ群像劇
本作は人気ライトノベル作家成田良悟さんのデビュー作です。成田良悟さんは本作をはじめ、数々の群像劇を発表している小説家です。
本作の魅力は、「不死の酒」という設定と登場人物が入り乱れ、二転三転と小気味よく転がるストーリー展開にあります。
登場人物が多く、頻繁に視点移動が行われますが、「誰が誰だかわからない」とはなりません。というのも登場するキャラクターが個性的かつ魅力的であるからです。
読みやすく、最後にサプライズも用意されている本作はライトノベル群像劇の傑作となっています。
おすすめ群像劇小説3
『ブギーポップは笑わない』
『ブギーポップは笑わない』
上遠野浩平(著)、メディアワークス
~あらすじ~
このところ、わたしたち2年生の女子の間では奇妙な噂とも怪談ともつかぬ話が広まっている。
ブギーポップという不思議な人物の話だ。(p77より抜粋)
ブギーポップとは魔術師のような恰好をした少年にも少女にも見えるおかしな人物。「世界の敵」が現れた時、ブギーポップも姿を現します。
「世界の敵」が起こす奇妙な事件。そこに関わるブギーポップ。それを浮かび上がらせる5つの物語。
5人の高校生の視点から物語が語られたとき、話はやがて1つの形となり、全てが明らかになります。
後進に多大な影響を与えた傑作ライトノベル
本作は青春群像劇にミステリーやSFの要素が入った作品となっています。5つの話で構成されていて、それにより1つの奇妙な事件が徐々に明らかになっていきます。その鮮やかな構成と、退廃的ともいえる雰囲気が本作の魅力です。
本作は、後進に多大な影響を与えた作品で、数々の作家が、この作品から影響を受けたと公言しています。特に<物語>シリーズで有名な西尾維新さんは本作を読んで、小説を書くようになったほどです。
ライトノベルというジャンルを語る上では絶対に外すことのできない本作は、青春群像劇の傑作です。
おすすめ群像劇小説4
『ドミノ』
『ドミノ』
恩田陸(著)、角川書店
~あらすじ~
1億の契約書を待つ生命保険会社。下剤を盛られた子役。目的地になかなかたどり着けない老人。来日中の映画監督。推理力を競う2人の大学生など、28人の個性的な登場人物が、真夏の東京にそれぞれの目的をもって集まります。
まるで関係のない彼らの話が次第に絡み合い、話はドミノ倒しのごとく結末に向かって倒れていきます。
抱腹絶倒の楽しい群像劇!
本作はベストセラー作家・恩田陸さんが贈る群像劇です。本作の特徴は何と言ってもその登場人物の数です。約30人ものキャラクターの思惑や行動が交錯し、話は展開していきます。
この人数の多さは、群像劇でもなかなかありません。
これだけ多いと、登場人物が覚えられないかも……という心配もあるかと思いますが、本作はページをめくってすぐにユニークな人物紹介があるため、その心配はいりません。
次々と話が展開していく様は、まるで作品タイトルにもあるドミノのようです。本作は笑えて爽快な群像劇となっています。読むと元気になるような、そんな作品です。
一気読みがおすすめ! 群像劇の小説を読もう
群像劇は、味わうように何日もかけてゆっくり読むより、一気に読むことがお勧めです。それというのも、話が入り乱れる関係上、ゆっくり読んでいると前後の話の繋がりがわからなくなってしまうこともあるからです。
上述した4作は読みやすく、一気に読める作品となっているので、初めて群像劇を読もうと思っている方にお勧めの作品です。
群像劇を読もうと思っている方、是非参考にしてみてください。
今回ご紹介した書籍
『ラッシュライフ』
伊坂幸太郎(著)、新潮社
『バッカーノ』
成田良悟(著)、メディアワークス
『ブギーポップは笑わない』
上遠野浩平(著)、メディアワークス
『ドミノ』
恩田陸(著)、角川書店
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