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【2016年9月映画化】 犯人は誰だ!謎の男3人をめぐる群像劇「怒り」


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2014年に出版された、吉田修一さんの小説『怒り』。逃亡中の殺人事件の容疑者に似た、3人の男をめぐる人々の姿を描いた作品です。

2016年9月、この『怒り』の実写映画が公開されることが決定しました。豪華なキャストとスタッフが集結し、今から楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。

今回はこの映画『怒り』の原作をご紹介するとともに、映画のみどころに迫ります。

怒り』 吉田修一/著、中央公論新社

 

八王子郊外で起きた殺人事件。犯人は整形し逃亡

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東京都・八王子郊外で起きた尾木夫妻殺人事件。犯人の男は二人を刺し殺した後、その遺体を浴室へ運び、犯行現場には「怒」の血文字が残されていました。

男の名は山神一也。28歳、左利きでサッカー好き。右頬に縦に3つ並んだホクロを持っています。

警察は山神のモンタージュを公開し、全国へ指名手配をかけますが、1年経っても有力な情報が得られません。どうやら犯人は整形をし、顔を変えて逃亡しているようです。

山神一也は、いったいどこへ行ったのでしょうか。そこに、山神一也に似た3人の男が現れます。

 

犯人に似た3人の男たち

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漁協で働く、無口だが真面目な青年・田代

浜崎の漁協で働く洋平には、愛子という娘がいます。
愛子は、空手部部長だった恋人との事件がきっかけで様子がおかしくなり、ある日、家出をしてしまいます。数ヶ月後に歌舞伎町のソープランドで働かされているところを保護され、洋平に連れ戻されます。

そして愛子は、この浜崎の町に仕事を求めてやってきたあるひとりの青年と出会います。青年の名前は、田代哲也。田代は、洋平のいる漁協で働き始めます。

彼は無口ですが真面目な青年で、洋平の姪・明日香の息子にサッカーを教えたりするうちに、だんだんと地元の人々と交流を深めていきます。

愛子も田代と親しくなり、深い仲になっていきますが、田代は決して洋平や愛子に自分の過去を語ろうとはしません。

 

優馬と暮らし始める、ゲイの青年・直人

藤田優馬は、東京都内に住む32歳、ゲイの男。彼は病気の母親にも、兄にも「自分がゲイである」という秘密を話していませんでした。

母親の看病のためホスピスを訪れるかたわらで、ツイッターや出会い系アプリで男と知り合い、関係を持つことを繰り返す日々。

そんなある日、新宿の発展場で優馬は直人という男と出会います。直人を家に連れ帰り、いつしか彼と二人で暮らし始めた優馬。直人は少しずつ優馬の母親や周囲の人間にも受け入れられていきます。

しかし、直人の素性は謎に包まれていました。友達もおらず、仕事をしている様子もない直人。いったい今までどんな生活をしていたのか、優馬もわかりません。

優馬の母親は、ある日直人の右頬に縦に3つ並んだホクロを発見します。

 

離島の廃墟に寝泊まりするバックパッカー・田中

高校生の小宮山泉は、母親と二人暮らし。
母親が起こした不倫騒動のせいで、名古屋から福岡、そして福岡から沖縄の離島・波留間島へと逃げてきます。

波留間の高校へ通い始めた泉は、同級生の知念辰哉と親しくなります。辰哉のボートに乗り、近くの無人島・星島へ案内された泉。そこで、廃墟に寝泊まりするバックパッカーの男・田中と出会います。

田中は、ときどき那覇へ行っては仕事をして、お金が貯まったら星島へやってくるという暮らしをしていました。

ある日、辰哉に誘われ、那覇に映画を観に出かけた泉は、そこで田中と再会します。しかし、その後、泉の身に思わぬ事件が降りかかります。

 

信じたいのに信じることができない、人間の複雑な感情を描く

この作品は、犯人と似た特徴を持つ3人の男と、その周囲の人々を描く群像劇です。

人間は、他人をどこまで信じることができるのか、相手に疑いを抱いたとき、いったいどんな行動を取るのか。「信じる」ということの奥深さ、難しさが描かれていきます。

心に不安や鬱屈を抱えながらも、日々を生きている登場人物たち。一度心を許したはずの相手にも、疑念を抱かずにはいられない彼らの複雑な感情が描かれていきます。

毎晩一緒にメシを食い、狭いベッドで寝ているが、結局自分は直人を信じていないのだと優馬は思う。いや、相手の何を知れば、そいつを信じられるのか、まだそれを知らないのだ。(『怒り』単行本 下巻 p.126)

物語の後半、犯人の情報が報道され、「彼は犯人ではないか」と疑いをかけてしまう洋平や愛子、優馬たち。本当は信じているのに、疑いを消すことができない、その本当の原因に気づかされていく姿が切なく胸に迫ってきます。

 

豪華なスタッフ・キャストが集結! 映画も期待大

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映画版の監督は、同じ吉田修一の作品「悪人」を手がけた李相日氏。キャストは、愛子の父親・洋平役に渡辺謙さん、愛子役に宮崎あおいさん、田代役に松山ケンイチさん、優馬役に妻夫木聡さん、直人役に綾野剛さん、泉役に広瀬すずさん、田中役に森山未來さんと、人気・実力ともに申し分のない役者が集結しています。

人間の複雑な感情を描いたこの作品が、どのように映画で表現されていくのか、今から楽しみですね。

怒り』 吉田修一/著、中央公論新社

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ライター

ラッテ
3度の飯より本が好き。興味のおもむくままに、いろいろな分野の本を読んでいます。特によく読むジャンルは、IT、美術、語学、旅行、インテリア、漫画など。本好きが高じて、書店員をしていたこともあります。