【中学・高校・大学】おすすめ青春小説|思春期、反抗期ほか
更新日:2019/8/12
思春期や反抗期。さまざまな時期を人は迎えます。
ここでは、中学・高校・大学別におすすめの青春小説をご紹介。
複雑で大人がなかなか理解できない心理や、友人たちと過ごすかけがえのない日々など、その内容は多岐にわたります。
ぜひ当時のことを思い出しながら読んでみてくださいね。
中学生が主人公のおすすめ青春小説
12~14歳くらいの中学生。この年頃は、人生の中で最も多感な時期といって過言ではありません。
複雑な思考に行き場のない感情。そういった正体不明の悩みを抱えていた人も多いのではないでしょうか。そして結局具体的な正体を掴むことができず、ただなんとなくやり過ごしてしまう……。
小説のなかでは、そういった中学生特有の不可解な部分を言葉を尽くして書いた作品がいくつもあります。
中学生の青春小説1『西の魔女が死んだ』
『西の魔女が死んだ』
梨木香歩(著)、新潮社ほか
中学生になったまいは、入学して間もなく不登校になってしまう。
田舎のおばあちゃんの家で生活することになったまいは、そこでおばあちゃんから魔女の話を聞き、魔女になる修行をはじめることに――。
本作は、繊細な少女まいの成長を描いた物語。些細な日常の中で、まいは大切なものを見つけていきます。そして、そんなところに本作の魅力や深さが詰まっているんです。
まいとおばあちゃんのやり取りのなかに、大人になっても大切にしたいことがたくさん書かれています。
中学生の青春小説2『バッテリー』
『バッテリー』
あさのあつこ(著)、角川書店ほか
中学校に入学する直前の春休み、野球少年の巧は祖父のいる岡山県へ引っ越すことになった。
ある日、引越し先で同じく野球をやっているキャッチャーの豪に出会った巧。お互い実力を確かめ合い、2人はバッテリーを組むことになる。
リアリティのある人物描写や心情描写が魅力の『バッテリー』。物語は、天才投手の巧を中心に展開していきます。
小学生離れした志の高さと立ち振る舞いを見せる巧に、影響されていく豪や周囲の人たち。真っ直ぐにひた走る巧や豪たちの姿はとても眩しく、羨ましいとさえ感じます。
中学生の青春小説3『カラフル』
『カラフル』
森絵都(著)、文藝春秋
生前に大きなあやまちを犯して死んだ「ぼく」。本来なら輪廻転生のサイクルから外されるところだが、抽選によりもう一度チャンスを与えられた。
「ぼく」は3日前に自殺をはかった中学生の小林真の体に入り、人間界で生活をすることに――。
本作は、児童文学では珍しい「自殺」を扱った作品です。中学生を取り巻く複雑すぎる環境が、平易な文体で綴られています。一方で、著者からの命に対するメッセージも感じられます。
中学生の「悩み」という名の「SOS」が描かれている本作は、大人にこそ読んでほしい作品です。
中学生の青春小説4『The MANZAI』
『The MANZAI』
あさのあつこ(著)、ポプラ社ほか
中学2年生の歩は、ある日同級生の貴史から呼び出され「お付き合い」を申し込まれる。
同性愛の申し出だと慌てる歩だったが、秋元の言う「お付き合い」とは、「漫才コンビを組んでほしい」ということだった。
なかば強引に漫才コンビを組まされた歩は、文化祭で漫才をすることとなり……。
やや内向的な性格の歩が、貴史と漫才コンビを結成したことで少しずつ心を開いていきます。
友情あり、恋愛ありの真っ直ぐな青春ストーリーとなっており、大人から子供まで楽しく読める作品です。前向きで素直なバカさが愛おしくなりますよ。
中学生の青春小説5『紙コップのオリオン』
『紙コップのオリオン』
市川朔久子(著)、講談社
母と妹、そして血の繋がらない父と暮らしている中学2年生の論理(ろんり)。ある日母が書置きを残し旅行に行ってしまったために、妹と父との生活が始まった。
そんななか、論理は創立20周年を迎えた中学の記念行事で実行委員をやることに――。
中学生を取り巻く環境は、基本的に家族と友達と学校がメイン。本作は、そういった限定的な部分を論理の視点から描いたハートフルストーリーとなっています。
中学生らしい中学生を描いた等身大の物語。
特別、劇的なことが起こるわけでもなければ、大事件が起きるわけでもありません。ただ、ありふれた中学生活の中にある些細な感動が詰まっています。
中学生の青春小説6『ぼくらの七日間戦争』
『ぼくらの七日間戦争』
宗田理(著)、角川書店ほか
夏休みの前日、とある中学校1年2組の男子生徒全員が姿を消した。父兄たちが必死に探すも一向に見つかる気配がない。
一方行方不明になった男子生徒たちは、河川敷の工場跡に立てこもっていた。
そこは解放区という名の秘密基地。校則でしばりつける教師や勉強を強要する大人や社会に対し、彼らは謀反を起こす。
シリーズ累計発行部数1,500万部を越える「ぼくらシリーズ」1作目。1985年に発行された本作ですが、中学生の普遍的な感情を描いており、30年以上経った今でも古臭さを感じさせません。
大人たちの事情なんて無視し、真っ向勝負しようとする男子生徒たちの姿は、読んでいてとても気持ちがいいです。
高校生が主人公のおすすめ青春小説
15~17歳の高校生たちは思春期の盛りで、この年齢の人間に焦点をあてた物語には当然のごとく複雑な心の描写があります。
そして、この時期に誰もが抱く「葛藤」と強く結びついているのです。同年代の読者ならば、“友達の悩みを聞くイメージ”で読むのもすばらしい体験になるでしょう。
あなたが大人と呼ばれる年齢であれば、過去の自分と向き合うきっかけに読んでみませんか?
高校生の青春小説1『ガールズ・ブルー』
『ガールズ・ブルー』
あさのあつこ(著)、文藝春秋ほか
それぞれに悩みや葛藤を抱える、落ちこぼれ高校生の理穂・美咲・如月。
理穂は誕生日目前で失恋、美咲は同情されるのが大嫌いだけど病弱、天才と称される双子の兄貴を持った如月は比べられてばかり。そんな彼女たちの夏が始まる――。
一見楽しく生きているように見える高校生だって、実はいろいろあって大変なんです!
持てる力の限り全力で、二度とは来ない青春の日々を駆ける彼女たちのへんてこりんでパワフルな日常は、いつか経験した時代を思い出させてくれること間違いなし。
高校生特有のわけのわからないことや会話のキャッチボールが、瑞々しく楽しい青春譚です。
高校生の青春小説2『百瀬、こっちを向いて。』
『百瀬、こっちを向いて。』
中田永一(著)、祥伝社
「人間レベル2」の僕が、美少女の百瀬とひょんなことから「お付き合い」をすることに。それをきっかけに、事態はちょっとおかしな方向へと進んでいく――。
初めて知った恋の味、初めて知った恋の苦み。
大人と子供の中間地点を生きる高校生の、淡く切なく、そして苦しい恋の物語は、やっぱり純粋で美しいものですね。
些細なことやあらゆる問題の積み重ねでいつしか絡まった心を、そっと解してくれるような味を思い出してみてはいかがでしょうか。
高校生の青春小説3『ぼくは勉強ができない』
『ぼくは勉強ができない』
山田詠美(著)、新潮社ほか
高校生の秀美くんは今日も元気いっぱい。「ぼくは勉強ができない」と、堂々と言えるその姿はもはや清々しかった。
秀美くんの目を通してみる世界は、同じ世界のはずなのになんだか美しく輝かしいのはなぜだろう――。
著者である山田詠美さん自身も、「大人に読んでほしい」と語るこの物語。
秀美くんとその家族や友人が紡ぐ言葉は、読者の昔の悩みに寄り添ってくれます。また、「いま」を顧みることのきっかけにも成り得るかも知れません。
テンポのいい文章で紡がれた短編集なので、忙しい方でもすっと読めるのではないでしょうか。
高校生の青春小説4『冷たい校舎の時は止まる』
『冷たい校舎の時は止まる』
辻村美月(著)、講談社
雪がたくさん降った日、いつもどおりに登校したのは仲良しの8人のクラスメイトだった。
しかし、いつまでたってもやってこない他のクラスメイトや担任教師。なんと気付かないうちに彼らは、校舎の中に閉じ込められていた。
閉じ込められた校舎の中で、彼らの頭をよぎるのは2ヶ月前の学園祭で自殺をしてしまった同級生のことで――。
「自殺したのは誰か」を考えていくミステリー小説。しかしながら、作中に登場する8人それぞれが抱えた悩みや葛藤には、読者も思い当たるものがあることでしょう。
もし今も自分を苦しめる棘があるのならば、あの時代に立ち返ってその傷と向き合うきっかけをくれる物語になるかもしれませんよ。
自分の心と向き合い、そして次のステージへと進もうとする彼らの姿は、きっとそんな心に何かをもたらしてくれるはずです。
高校生の青春小説5『SPEED』
『SPEED』
金城一紀(著)、角川書店
平凡な女子高校生だった佳奈子が日常は、家庭教師だった上原彩子の自殺をきっかけに変わってしまう。
彩子の死が自殺ではないと考える佳奈子は、真実を追い求め奔走するも、その行く手を何者かに阻まれる。
そんななか偶然出会ったオチコボレ高校生たち共に、彩子の死の真相に迫っていく――。
オチコボレ高校生の青春を描いた「ゾンビーズシリーズ」3作目。シリーズものではありますが、1冊で独立した話になっているためこの巻から読んでも問題ありません。
本作には不倫やお金の問題など生々しい問題が絡んでいますが、爽快感が溢れています。くすりと笑えるキャラクター同士の掛け合いの中には、深いメッセージ性が隠されていて、思わず考えさせられます。
コミカルな雰囲気の本作ですが、しめるところはきちっとしめる上質なエンターテインメント作品です。
金城一紀『GO』
『GO』
金城一紀(著)、角川書店ほか
在日韓国人の杉原は、父に教え込まれたボクシングで、何人もの高校生と喧嘩する毎日を送っていた。
ある日杉原は、ヤクザの息子である加藤が開いたパーティで、桜井という謎の少女に出会う。桜井は杉原のことを知っている様子だった。
そんな桜井と少しずつ距離を縮める杉原。しかし彼女との関係は、在日韓国人である自らを苦しめることに――。
本作は「半自伝的な小説である」と語る金城一紀さんのデビュー作であり、直木賞受賞作。
差別などの難しい問題を扱っていながら重苦しくなりすぎず、爽快感すらある青春小説です。
杉原は差別を受けつつも、力強く前を向いて生きています。ただ、そんな杉原でも「在日」であることを桜井にはなかなか言い出せません。そんな杉原の複雑な心理が巧みに描かれています。
大学生が主人公のおすすめ青春小説
大学生活というと「自由」「楽しい」「バラ色」など、ポジティブな言葉を連想する方も多いのではないでしょうか。
しかし、一口に大学生活といってもそれは人それぞれ。
仲間と一緒に共通の目的をもって何かをする人もいれば、いろいろな事件に巻き込まれる人もきっといて、極力外に出ないようなそんな人も中にはいるでしょう。
ここでは、読み味がそれぞれ違う大学生の青春を描いた小説をご紹介していきます。
大学生の青春小説1『鴨川ホルモー』
『鴨川ホルモー』
万城目学(著)、角川書店
京都大学に入学した「俺」こと安倍は、「京大青竜会」と呼ばれるサークルの新観コンパに誘われる。
その後サークルに入会したはいいが、ホルモーとはなんなのか? そもそもこのサークルは一体何をやるサークルなのか? まったく分からずに1年が経つ。
ようやくホルモーの全貌が明かされ、それが団体競技だと知った安倍。先輩達からサークルを引き継ぎ、リーグ制覇を目指していくが――。
ホルモーとは、オニを使って勝敗を決める競技のこと。とてもユーモアのある競技として描かれます。
しかし本作には青春、恋愛、コメディの要素はあれど、熱血やスポ根の要素はほとんどありません。はじめから終りまで、終始コミカルに話が展開していきます。
等身大の大学生に、ホルモーというファンタジー要素を付け加えた青春エンターテイメント。肩の力を抜いて読めますよ。
大学生の青春小説2『砂漠』
『砂漠』
伊坂幸太郎(著)、新潮社
大学に入学した「ぼく」こと北村は、名前に「北」が入っていることが理由で麻雀に誘われ、そこにいた4人の男女と知り合う。
「数百万のかかった賭けボーリング」「頻発する空き巣事件」「通り魔プレジデントマン」「友人の身に起きる悲劇」など、さまざまな事件を通し、かれらは友情を深めていく。
伊坂幸太郎さんの持ち味ともいえる洒脱な掛け合いは本作でも健在です。
個人的に特に魅力的だと思うキャラクターは、少し冴えない容姿の西嶋。
一見どこにもいないと思える変人のようですが、彼の生い立ちと彼が持つ独自の哲学が彼の人間味を演出していて、感情移入のできる変人として描かれています。
こうした魅力的なキャラクターが繰り広げる大学生活を描いた青春小説。終盤にはあっと驚く仕掛けがほどこされています。
大学生の青春小説3『太陽の塔』
『太陽の塔』
森見登美彦(著)、新潮社
京都大学に所属する5回生の「私」は、現在自主休学中。その有り余る時間の中で、元恋人の水尾さんを研究観察(ストーキング)し、240枚分ものレポートを書き上げた。
なぜ「私」は彼女にここまで惚れ込んでしまったのだろうか? ただひたすら「私」は考察する。
そんな暗い日常を送っていたある日。「私」は水尾さんをストーキングしている遠藤という男と遭遇する。
森見さんといえば、『夜は短し歩けよ乙女』や『四畳半神話体系』などの人気作を手掛けており、大学生の日常を面白おかしく描くことに定評のある作家です。
ストーカー行為をおこなう主人公と、冴えない友人たち。普通に書けば、じめじめと陰気な雰囲気が漂いそうなところ、本作はそれをコミカルに描き切っています。
冴えない大学生の飾らない日常。ほろ苦くも笑える青春小説となっています。
大学生の青春小説4『NHKにようこそ!』
『NHKにようこそ!』
滝本竜彦(著)、角川文庫
大学を中退し、現在無職の佐藤達広は重度の引きこもり。1日の大半を寝て過ごし、おかしな薬にも手をだし、欝々とした日々を送っていた。
そんな彼の部屋にある日、宗教勧誘の中年女性とその娘と思しき中原岬が訊ねてくる。
あなたは私のプロジェクトに大抜擢されました。(p69より抜粋)
岬に目を付けられた佐藤は、謎の「脱引きこもりプロジェクト」をおこなうことに――。
本作は、大学を中退した青年が主人公。どこまでもネガティブな、いわゆるダメ人間。自分が引きこもっているのは、架空の団体「NHK(日本引きこもり協会)」の仕業だと言ってしまう青年です。
ただ、そんな佐藤の弱さが本作の魅力でもあります。
社会と合わない佐藤の切実な気持ちが、ユーモアたっぷりの筆致で面白おかしく描かれています。
終始軽い調子で進んでいきますが、そのなかに秘められたメッセージや文学性には非凡なものがあり、青春文学の傑作です。
大人になったからこそ読みたい青春小説
思春期や反抗期の難しい時期に過ごしたあの時間は、たとえ厳しく苦しいものだったとしても、かけがえのない思い出です。今も変わらず、芯のようなものとして支えてくれているような気がしませんか?
思い出は時間が経つにつれて色褪せてしまうもの。しかし、物語をとおして褪せた色を瑞々しい色に変えていってほしいと思います。
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