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海に行きたいあなたに! 海にまつわるおすすめ小説


更新日:2019/8/2

海にまつわるおすすめ小説

あなたは普段、どこで読書をしていますか? 自宅、図書館、それとも喫茶店などでしょうか。

たまには屋根のない、外の風に吹かれながら読書をするのも良いものです。
たとえば、海の近くで波を見て、潮の香りを楽しみながら本を読むのはいかがでしょうか。

ここでは、海辺での読書におすすめな、海を感じられる小説をご紹介します。

 

『海とジイ』

『海とジイ』表紙

海とジイ
藤岡陽子(著)、小学館

タイトルどおり、海とジイをテーマにしたオムニバス形式の作品。

いじめが原因で不登校となった優生と、瀬戸内の島で暮らすガンを患ったジイの物語。
看護師に告げずに瀬戸内海の島にある診療所に行ってしまった、70代の月島先生の物語。
突然のケガで大会出場と進路を絶たれた戸田澪二と、瀬戸内海で石の博物館を営む祖父の物語。

すべて瀬戸内で繰り広げられる物語は、いずれも独立した形を持ちながらも、どこかでつながっています。
私たちの日常も、こんな風につながっているのかなと、リンクする部分を見つけるたびに何だか嬉しくなる小説です。

作品の随所に、瀬戸内の海の風景や豊かさがあり、その情景を思い浮かべながら楽しめます。

 

『海底大陸』

『海底大陸』表紙

海底大陸
海野十三(著)、河出書房新社ほか

宇宙や未確認生命体、あるいは妖怪など、人は未知なる世界に好奇心を抱くものです。
SFと言うと現代的なものをイメージしてしまいがちですが、実は1930年代には立派なSF作品が日本で発表されていたのをご存じでしょうか。

本書は、明治生まれの作家、海野十三の海にまつわるSF作品です。

大西洋を航海していたクイーン・メリー号が、大漁の鮭の大群に見舞われて失踪する事件が発生。唯一脱出できた日本人の三千夫少年の証言で、未知の海底大陸の存在が明らかになっていきます。
果たしてクイーン・メリー号のクルーと船客は無事なのか、無事イギリスに帰還できるのでしょうか。

ストーリー展開だけでなく、当時の日本とイギリス、日本人やイギリス人に対する著者のイメージなども読み取れます。海底大陸という大きなテーマはもちろん、現代との違いも楽しめます。

 

『海のふた』

『海のふた』表紙

海のふた
よしもとばなな(著)、中央公論新社ほか

美術系の短大を卒業した後、地元の西伊豆で大好きなかき氷屋を営むまり。そして、母の親友の子で、祖母の死で心に傷を負ったはじめちゃんのひと夏の物語。

ガサツで子供っぽいまりと、わがままで繊細なはじめちゃん。2人が出会ったことでどんな世界が生まれ、交じり合い合うのか。

人は運命的な出会い、きっかけによって変わることができる。目の前の風景をもう一度愛おしく思うことができる。そんな気付きを与えてくれる作品です。

目の前に広がる海の壮大さ、表題にもなっている「海のふた」にも物語の中にメッセージが込められており、小説でありながら詩的な印象も受けます。
収録されている版画も鮮やかで美しく、手元に持っておきたい本です。

 

『海辺の博覧会』

『海辺の博覧会』表紙

海辺の博覧会
芦原すなお(著)、ポプラ社

第17回オリンピックの開催や、ケネディ大統領誕生、ベルリンの壁完成など、世の中が目まぐるしい変化を遂げていった昭和30年代が舞台。

本作は、「ぼく」と同級生のアキテル、トモイチ、マサコ、アキテルの弟フミノリの4人が体験した海辺の町での物語です。
1959年から1961年、小学校4年から6年にかけて起こった3年間のできごとが、まるで日記を読むかのようにつづられています。

海辺の町で開催された、たった10日間の海辺の博覧会にお祭り。そして子供競馬、町の選挙……。

松林のある海辺の景色が浮かんでくるとともに、古く懐かしい昭和の風とノスタルジーを感じられ、少し幻想的な雰囲気。ちょっぴり時代をさかのぼって、昭和の子供たちとともに美しい海を感じてみませんか。

 

『老人と海』

『老人と海』表紙

老人と海
アーネスト・ヘミングウェイ(著)、新潮社ほか

もはや説明する必要もないでしょう、アメリカ文学の指折の名作です。
のちのヘミングウェイのノーベル文学賞受賞の決め手になったとも言われる、およそ150ページにも満たないヘミングウェイ畢生の名作は、あなたを海の真ん中へ誘います。

長い長い不漁の末、一緒に漁に出ていた少年と別れ、ひとり海に漕ぎ出す老人の姿を、ヘミングウェイは力強い筆致で描き出しています。

大海原にただひとり自然と対峙する老人の姿、敵対とも友情とも形容しがたい人間とカジキの不思議な関係、長い戦いの末に老人が残し、失ったものはなにか。
安易な二項対立を受け付けない厳然とした自然の世界が広がっています。

 

『白鯨』

『白鯨』表紙

白鯨
ハーマン・メルヴィル(著)、岩波書店ほか

プロットは単純ながら、スケールの大きさが計り知れない『白鯨』。
エイハブ船長率いるピークォッド号と、「モービィ・ディック」と呼ばれる一尾の白鯨(White Whale)の一大叙事詩となっています。

名作には違いありませんが、読むときにはひとつ注意があります。それは、気長に構えることです。

本作の語り手イシュメールは、たいへんに筆まめな人物。海のシーンに至るまでにも時間を要します。
ようやく海に出たかと思うや、クジラの分類やクジラ漁のあれこれが書かれ、一向にモービィ・ディックは出てきません。

これはあくまで個人的な意見ですが、『白鯨』を読むときは、イシュメールの脱線がちょっとでもつまらないと思ったら、ちゃっちゃと飛ばしてしまうことをおすすめします。

コーヒーチェーン「スターバックス」ともゆかりのあるこの作品、スタバでのんびり読んでみてはいかがでしょうか。

 

『ムーミンパパ 海へいく』

『ムーミンパパ 海へいく』表紙

ムーミンパパ 海へいく
トーベ・ヤンソン(著)、講談社ほか

かわり映えのない毎日に嫌気がさして海に行きたくなるのは、人間に限った話ではありません。
ムーミンのパパもまた、何事もない毎日がいやになることもあるのです。

波乱万丈の人生(ムーミン生?)を乗り越えてきたムーミンパパ。そんなパパにとって、平凡な毎日は我慢がなりません。

そこで、ある日ムーミンパパは一大決心をします。一家総出で海に漕ぎ出し、移住しようというのです。
灯台のある島に上陸したムーミン一家。島での暮らしとともに、マイペースなミイをよそに、ママ、パパ、ムーミントロールそれぞれの心境に変化が訪れます。

島でであった漁師のストーリーにも注目です。人間以上に人間らしいムーミンたちのストーリー、日常を離れて初めて気づくことってありますよね。

 

『海からの贈りもの』

『海からの贈りもの』表紙

海からの贈りもの
アン・モロウ・リンドバーグ(著)、立風書房ほか

1927年、大西洋単独無着陸飛行に成功したチャールズ・リンドバーグの妻アン・リンドバーグが、海沿いでの休暇のあいだに書き上げた作品が『海からの贈りもの』です。

波打ち際で拾った貝殻をきっかけに、結婚や、孤独といった女性の生き方、人生の問題についての思索へと誘います。

「海」を題材にした作品は、雄大な自然へと向かっていく外向きの作品が多いですが、リンドバーグの視線は内側に向かう点、異色の作品といえるでしょうか。

海で物思いにふけりたい、という方におすすめの1冊です。

 

『潮騒 』

『潮騒』表紙

潮騒
三島由紀夫(著)、新潮社ほか

恋愛譚が読みたいあなたには、『潮騒』をおすすめします。ゆったりとした海の透明感をたたえた、読みやすく美しい作品です。

伊勢湾に浮かぶ歌島が舞台。互いに惹かれあう新米漁師の青年と少女の恋物語が描かれます。
三島由紀夫作品ということでどんな悲恋かと思いきや、さまざまな試練が訪れる者の、これがなんと王道の純愛ストーリーなのです。
しかし決して物足りないものではありませんよ。

本作は、古代ギリシアの恋愛小説『ダフニスとクロエ』に着想を得た作品としても知られています。

 

『波に乗る』

『波に乗る』表紙

波に乗る
はらだみずき(著)、小学館

生きること、人生の楽しさは何だと思いますか?

主人公の文哉は、入社1ヶ月で自主退職。それからすぐ、高校時代の些細なことで疎遠になっていた父が亡くなったと知らされます。
父が移住した先、千葉県館山市は文哉もはじめて訪れる場所。姉とともに火葬を済ませ、遺産整理のために訪れた父の家は、こぢんまりとした海がすぐ近くにある場所でした。

父を亡くしてから知った父のこと、そして父の周りの人、そして父の足跡。文哉は父の本当の移住の目的、父の生きがいにしていたことを少しずつ見つけていきます。

父はどうやって生きたのか、父が見つめたこの海に何があったのか。少しずつ開けていく希望とともに、自分自身の生き方も見つめなおせる、海を感じる小説です。

 

大海原へ旅に出よう!

海を感じる本をご紹介しました。

海を扱った作品は、『ガリヴァー旅行記』『海底二万里』などまだまだあります。海にまつわる名作たちは、いつもあなたの心を大海原へ誘うことでしょう。

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