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「海に行きたい!」そんなあなたにおすすめの名著セレクション


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あなたが自宅に居ようとも、電車に乗っていようとも、本はあなたを別の世界へ誘(いざな)います。どんなに窮屈な場所であっても、あなたの想像力に自由の翼を与える、これが読書の醍醐味。それでは、想像の翼を思いっきり広げることのできる場所といったら、どこでしょうか。山、空、あるいは宇宙といった各人各様の答えが返ってくることでしょうが、ここでは「海」に焦点を当てていきたいと思います。

みなさんは浜辺から水平線を望んだ経験があるでしょうか。大海原を縁取る水平線、古来たくさんの作家がその先に広がるものへ、想像力を羽ばたかせてきました。また、実際に大海原へ漕ぎ出し、その冒険の記録を残した作家も数知れず。地球の三分の二を占めるこの茫漠たる「海」は、生命の母でもあり、名作の母でもあります。

ここに紹介する本たちは、日々の窮屈な暮らしに飽き飽きしたときも、海に行きたくなったときも、あなたを海に誘ってくれる名作ばかりです。いつだって、どこだってあなたを待っている、読書の大海に漕ぎ出でてみてはいかがでしょうか。

 

1.『老人と海 / ヘミングウェイ』

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もはや説明する必要もないでしょう、アメリカ文学の指折の名作です。のちのヘミングウェイのノーベル文学賞受賞の決め手になったとも言われる、およそ150ページにも満たないヘミングウェイ畢生の名作は、あなたを海の真ん中へ誘います。

長い長い不漁の末、一緒に漁に出ていた少年と別れ、ひとり海に漕ぎ出す老人の姿を、ヘミングウェイは力強い筆致で描き出しています。大海原にただひとり自然と対峙する老人の姿、敵対とも友情とも形容しがたい人間とカジキの不思議な関係、長い戦いの末に老人が残し、失ったものはなにか。安易な二項対立を受け付けない厳然とした自然の世界が広がっています。

『老人と海』ヘミングウェイ著 新潮文庫ほか

 

2.『白鯨 モービィ・ディック / メルヴィル』

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色々な意味でスケール感の大きな海洋小説が『白鯨』です。プロットは単純で、エイハブ船長率いるピークォッド号と、「モービィ・ディック」と呼ばれる一尾の白鯨White Whaleの一大叙事詩となっています。しかし、メルヴィルの大時代的なレトリック、捕鯨やクジラ学に関する百科事典的記事のまぶされた『白鯨』は、とんでもないスケールの作品に仕上がっています。

名作には違いありませんが、読むときにはひとつ注意があります。それは、気長に構えることです。本作の語り手イシュメールは、たいへんに筆まめな人物で、まず海のシーンに至るまでに随分と健筆をふるい、ようやく海に出たかと思うや、クジラの分類やクジラ漁のあれこれが書かれ、一向にラスボス「モービィ・ディック」は出てきません。

2時間ドラマのような気持ちでは肩すかしを食らうかもしれません。個人的な意見として『白鯨』を読むときは、イシュメールの脱線がちょっとでもつまらないと思ったら、ちゃっちゃと飛ばしてしまうことをおすすめします。また、『白鯨』にはシンボリズムが散りばめられている、と文学案内等に書かれていますが、全く気にせずとも楽しめます。コーヒーチェーン「スターバックス」ともゆかりのあるこの作品、スタバでのんびり読んでみてはいかがでしょうか。

『白鯨 モービィ・ディック』メルヴィル著 新潮文庫ほか

 

3.『ムーミンパパ 海へいく / トーベ・ヤンソン』

かわり映えのない毎日に嫌気がさして海に行きたくなるのは、人間に限った話ではありません。ムーミンもまた、何事もない毎日がいやになることもあるのです。そんな作品がムーミンシリーズ第8作『ムーミンパパ 海へいく』です。

『ムーミンパパの思い出』に描かれているような、波乱万丈の人生(ムーミン生?)を乗り越えてきたムーミンパパ、そんなパパにとって平凡な毎日は我慢がなりません。そこで、ある日ムーミンパパは一大決心をします。一家総出で海に漕ぎ出し、移住しようというのです。灯台のある島に上陸したムーミン一家。島での暮らしとともに、マイペースなミイをよそに、ママ、パパ、ムーミントロールそれぞれの心境に変化が訪れます。島でであった漁師のストーリーにも注目です。人間以上に人間らしいムーミンたちのストーリー、日常を離れて初めて気づくことってありますよね。

ちなみに、講談社文庫のムーミンシリーズは、きれいな限定カバーに新装されました。新装版『ムーミンパパ 海へいく』のブックカバーは、海を思わせる水色のデザインで、本棚に飾るだけでもワクワクします。講談社文庫から出ている全9作を収めた、美麗なボックスセットもおすすめです。

『ムーミンパパ 海へいく』トーベ・ヤンソン著 講談社文庫ほか

 

4.『海からの贈りもの / アン・モロウ・リンドバーグ』

アン・モロウ・リンドバーグ著 新潮文庫ほか

1927年、大西洋単独無着陸飛行に成功したチャールズ・リンドバーグの妻、アン・リンドバーグが、海沿いでの休暇のあいだに書き上げた作品が『海からの贈りもの』です。波打ち際で拾った貝殻をきっかけに、結婚や、孤独といった女性の生き方、人生の問題についての思索へと誘います。

「海」を題材にした作品は、雄大な自然へと向かっていく外向きの作品が多いですが、リンドバーグの視線は内側に向かう点、異色の作品といえるでしょうか。海に行って冒険やサーフィンをしたい、という方にはおすすめできませんが、海で物思いにふけりたい、という方におすすめの一冊です。

『海からの贈りもの』アン・モロウ・リンドバーグ著 新潮文庫ほか

 

5.『潮騒 / 三島由紀夫』

恋愛譚が読みたいあなたには、『潮騒』をおすすめします。ゆったりとした海の透明感をたたえた、読みやすく美しい作品です。三島氏の端正な日本語も魅力。なお、『潮騒』のベースとなった『ダフニスとクロエ』も岩波文庫等で読むことができます。

ちなみに、新潮文庫は夏になると、限定カバーをあしらった本を何冊か出版しますが、そのうちの一冊に『潮騒』が選ばれた年がありました。その時の限定カバーは、水色のカバーに赤文字のタイトル、といったデザインで、とても綺麗なものでした。再び同じカバーで出版されるかどうかはわかりませんので、書店、古本屋で見つけたら、是非とも確保しましょう。本棚の彩りとしても活躍しますよ。

※ブックオフオンラインでは限定カバーの指定はできません

『潮騒』三島由紀夫著 新潮文庫ほか

 

6.『ボートの三人男 / ジェローム・K・ジェローム』

「小さな帆は紫の空を背景にしてくっきりと浮かび、薄暮は世界を虹いろの影に包みながらぼくたちのまわりに横たわる。そして背後には夜がこっそり忍びよるのだ。」かくも格調高い文章に彩られた、三人の英国紳士による決死の航行録が『ボートの三人男』である…いや、ホントカナァ。

というわけで、最後に紹介するのは、笑いたいあなたにおすすめの『ボートの三人男』。場面はテムズ川、登場人物は三人の冴えない男たち、それから一匹の犬モンモランシー。ある日、気分転換にと、三人の男(それと犬)がテムズ河を舟で遡行することを思い立ちます。意気揚々テムズの流れに身を任せ、ロマンチックな感傷と歴史の回想のなかで、先のような格調高い思索に浸る男たちですが、現実はなかなかそう思い通りには行きません。かみあわない三人組のテムズ遡行は、いつしかユーモア満載のドタバタ劇へと変貌していきます。イギリスのユーモアが詰まった、本国でも人気の高い折紙付きの作品で、硬軟自在の丸谷才一の訳も秀逸。BGMにはヨハン・シュトラウス2世の名曲《美しく青きドナウ》をどうぞ。

『ボートの三人男』ジェローム・K・ジェローム著 中公文庫

 

おわりに

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海を感じる6冊の本を紹介しました。(うち1冊は河ですけど。)海を扱った作品はまだまだあります。『ロビンソン・クルーソー』、『ガリヴァー旅行記』、『海底二万里』などの冒険物はもちろん、レイチェル・カーソンの『われらをめぐる海』といった自然科学的著作もたくさんあります。汲めども尽きせぬ海の名作たちは、いつもあなたの心を大海原へ誘うことでしょう。