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衝撃!?『日本から城が消える』


日本から城が消える――。
城郭ファンにとっては衝撃的なこの一文は2016年8月に発売された新書のタイトルです。そして、これは冗談でもなんでもなくて、実際に起こりうることなのです。その詳細がこの本には書かれています。

 

■今回取り上げた書籍

日本から城が消える「城郭再建」がかかえる大問題
加藤理文 著(洋泉社)

 

鉄骨造りの建物にも寿命がある

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日本全国には江戸時代までに実に3万~4万もの城が建てられたと言われています。城は元々軍事目的で建てられる施設ですから、物見のために山奥に建てられた城や、ある一時期だけ利用されて数年で破却された城もあります。そういったものでも存在がわかっているものをすべてあわせて3万~4万あったというわけです。

なかでも、江戸時代以前の建物が現存している城はそう多くありません。城といえば天守閣を思い浮かべる人も多いと思いますが、現存している天守にかぎっていうと全国に12城しかないのです。天守の中に入れば一目瞭然ですが、観光地として親しまれている名古屋城や大阪城などは昭和になってから鉄筋コンクリートで再建したものです。

現在、日本には再建も含めて天守がある城はたくさんありますが、実はその鉄筋コンクリート造り(RC造り)の再建天守の寿命がおおよそ50~60年程度だというのです。

 

迫られる決断

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城は昭和30年代に再建ブームがあり、この時期に集中的に再建されました。西暦で言うと1950年代です。現在2016年ですからすでに60年以上が経過してしまっているということになります。すなわち現在ある鉄筋コンクリート造りの天守はこのままでは存続できないのです。

この状況にあたって、本書では4つの対応方法が考えられるとしています。すなわち以下の4つです。

1、旧状に復する(伝統工法で、木造で復元する)。
2、当面、耐震補強やコンクリートの寿命を延ばす工事を実施しておく。
3、現代工法を駆使し、現在の法規制を順守し、建て直す。
4、耐用年数が過ぎたら取り壊し、天守のない城として保存する。
(p235~p236より引用)

このなかで、小田原城や大阪城はすでに延命工事を行い、存続できています。余談ですが、特に大阪城は昭和6年の再建であり、鉄筋コンクリートの現在の建物自体も昭和の文化財となりつつあるとも言われているようです。
城跡は国や自治体の指定史跡となっている場合は、むやみやたらと建物再建を進めるわけにもいかないといい、素人考えではやはり資金調達や資材確保が難しいのかと考えてしまいますが、それよりはむしろ建築基準法や文化財保護法などの「現代のルール」をクリアしていくのが難しいのです。

また、今の鉄筋コンクリート天守でも指定史跡に残されている文化財の保護が義務付けられています。もし寿命を迎えた場合、建築基準法では木造以外の方法では再建できないが、文化財保護法に照らせば今度は資料が少なくて木造でも復元はできないなんてことも起こりうるのだといいます。

そうなった場合は、とれる道が「4」の「耐用年数が過ぎたら取り壊し、天守のない城として保存する。」すなわち、石垣などの保全を優先して建築物再建は実施しない、という結論になってしまいます。いままで街のシンボルとして親しまれてきた城がなくなってしまうという事態がもはや遠い先のことではなくなっているのです。

 

貴重な文化財「城」

実際には「人が中に入らない前提で復元する(新発田城御三階櫓)」「敷地面積や建物の高さを法律以内に抑える工夫をする(彦根城表御殿奥院)」などで、部分的ではあれ再建したケースがあることもこの本には書かれています。

私も彦根城にいった際、表御殿が半分博物館で半分は建物の再現になっていて「どうして半分なんだろう」と疑問に思ったことがありますが、そこにはこういった理由があったんですね。

どうしてもお金の話が一番むずかしいところなのかなと思っていましたが、それ以上にクリアしなければならないハードルは様々あるようです。

なかなか一個人として何かするというのは難しい課題なのかもしれませんが、お城巡りを楽しみながら、貴重な文化財の特徴やこうした保存に関する取組みなどを紹介することは、より多くの人がお城を楽しめるようになるきっかけになるのもしれないですね。


以下の特集では、日本の城ファンの方にはたまらない、100名城、国宝の城、天空の城まで、日本の城・城郭に関する読み物、図解本を集めてご紹介しています。特集ページの背景を、姫路城か松江城か好きな方に切り替えできるという、謎のこだわりも面白いです!

■今回取り上げた書籍
日本から城が消える 「城郭再建」がかかえる大問題
加藤理文 著(洋泉社)