フーダニットとは? フーダニットにこだわったミステリー小説の傑作
更新日:2019/7/30
「フーダニット」という言葉をご存知でしょうか?
「フーダニット」とは、ミステリー小説用語で「Who done it = 誰が犯行を行ったか」という意味。
推理小説のなかでも、「誰が犯人か?」を当てることに目的を置いた作品がそう呼ばれます。
推理小説の醍醐味のひとつと言えば、何と言っても犯人当てですよね。ちょっとした探偵気分を味わえ、頭の体操にもなります。
ここでは、犯人当てが面白いミステリー小説の傑作をご紹介します。
※ネタバレにはご注意ください。
フーダニット小説1
『そして誰もいなくなった』
『そして誰もいなくなった』
アガサ・クリスティ(著)、早川書房ほか
ある孤島のホテルに集められた男女が、謎の殺人事件に巻き込まれる。船が来ないため、彼らは島から逃げることができずにいた。
全員で事件の犯人を突きとめようとするが、1人また1人と殺されて――。
世代を超えて愛されるミステリー小説家と言えば、アガサ・クリスティ。
『そして誰もいなくなった』は、数多くの映像化作品を生み出した不朽の名作であり、アガサの数ある小説の中でも最も有名な作品のひとつです。
犠牲者が次々に増えるなか、犯人が誰なのか、みなさんはどの時点でわかるでしょうか?
アガサ・クリスティの『オリエント急行の殺人事件』もフーダニットの傑作です。こちらもぜひ読んでみてください。
フーダニット小説2
『不連続殺人事件』
『不連続殺人事件』
坂口安吾(著)、角川書店ほか
昭和22年、山奥にある歌川家の屋敷が舞台。
歌川家の跡継ぎからの招待で屋敷に集まる知人・関係者。招待客同士、複雑な人間関係が絡み合っている模様だった。
そんな中で発生した殺人事件。動機に一貫性がない連続殺人事件は、複数の殺人犯による「不連続殺人事件」なのか――。
総勢30名近くと登場人物が多く、人間関係も複雑なので把握するだけでもなかなか大変です。読み飛ばすのではなく、じっくりと腰を据えて向かい合わないとなかなか真相にたどりつけないでしょう。
犯人、そしてトリックには気づけるでしょうか?
フーダニット小説3
『仮面山荘殺人事件』
『仮面山荘殺人事件』
東野圭吾(著)、講談社
とある山荘で、逃走している銀行強盗と8人の男女が鉢合わせになる。8人は強盗から逃れるため、山荘から脱出しようするも失敗。ついにその中の1人が殺されてしまう。
ところが、状況的に強盗には犯行が不可能。では一体誰が――?
東野氏らしくとても読みやすい文章なので、スイスイ読めるはず。
しかしその軽い読み心地こそが曲者。犯人につながる重要なヒントを見逃してしまう人が多いようです。
よ~~く読めばヒントもありますが、最後までしっかり推理しないといけません。これ以上の知識を何も入れずに読んでみてください。
フーダニット小説4
『十角館の殺人』
『十角館の殺人』
綾辻行人(著)、講談社
本格派ミステリー小説家として有名な綾辻行人氏が1987年に発表した作品。
先ほどご紹介したアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』のオマージュ作品のため、アガサの小説を先に読んでから本作を読むのがおすすめです。
登場人物が次々殺されていく恐怖感が見事に表現されています。そして、その結末には誰もが裏切られること間違いなし!
本作は、綾辻行人氏の「館シリーズ」の最初の作品でもあります。あわせて読んでみてくださいね。
フーダニット小説5
『インシテミル』
『インシテミル』
米澤穂信(著)、文藝春秋
時給11万円。破格の仕事に応募した男女は、ある施設に閉じ込められる。
肝心の仕事内容は、11万円より多い報酬をめぐって12人の参加者同士が殺し合う犯人当てのゲームだった――。
いわゆる「デスゲーム系」のジャンルに属するミステリー小説。生き残りをかけて、登場人物たちがゲームで戦います。
最初の殺人事件をめぐり、参加者たちは推理バトルを行います。誰が犯人か多数決で決定するのですが、その推理が外れた場合、多数決で真犯人とされた人物が殺されてしまいます。
次々に消えていく参加者たちはどうなるのでしょうか……?
集団で推理し、犯人を多数決で決めることの恐ろしさを存分に味わえますよ。
フーダニット小説6
『星降り山荘の殺人』
『星降り山荘の殺人』
倉知淳(著)、講談社
とある山荘に、UFO研究家、スターウォッチャーなどのさまざまな面々が集められた。
そして、電気も電話もつながらない山荘の中で殺人事件が起きて――。
舞台は雪山の山荘。クローズドサークルと呼ばれる「閉じ込められた」状態で物語は展開します。
「読者への挑戦状」がついた本作、各章の初めに作家からのメッセージが入る構成です。
このメッセージのおかげで、どこが推理に重要なポイントか、ということが分かりやすくなっているのですが、そこにも驚きのトリックが待っています。
推理しながら読むことで、裏切られた! という爽快感を一層味わえるのではないでしょうか。推理小説好きに一度は読んでいただきたい傑作です。
フーダニット小説7
『鳴風荘事件 殺人方程式II』
『鳴風荘事件 殺人方程式II』
綾辻行人(著)、講談社
奇妙な洋館に集められた人々は驚愕する。6年前に殺された女流作家と同様に、その妹が殺されたのだ――。
「館シリーズ」や、『Another』で知られる綾辻行人さん。こちらは『殺人方程式』の続編として発表されました。
姉妹が6年越しに同じ手口で殺され、その犯人を捜す内容です。殺人のトリックに対してもですが、犯人のとったある行動への説明などが論理的に説明されます。
論理的な推理が好きな方には特におすすめできる作品です。
フーダニット小説8
『占星術殺人事件』
『占星術殺人事件』
島田荘司(著)、講談社
二・二六事件が起きたその日に、難解な猟奇殺人が起こる。画家の梅沢平吉が殺されたのだが、彼の遺書には謎のメッセージが記されていた――。
デビュー以来多くの推理小説を発表している島田荘司さんのデビュー作がこの『占星術殺人事件』。「御手洗潔シリーズ」の1作です。
物語は、過去に起きたバラバラ殺人事件を解決するもので、犯人はすでに死んでいるという一風変わった筋書き。各章の冒頭に作家からのメッセージが入る構成となっています。
それでも騙されるトリックの巧妙さに、思わず興奮してしまう名作です。
フーダニット小説9
『月光ゲーム Yの悲劇’88』
『月光ゲーム Yの悲劇’88』
有栖川有栖(著)、東京創元社
夏合宿でキャンプにやってきた英都大学推理小説研究会のメンバー。
彼らを待っていたのは、山の噴火によって下界から隔離されたキャンプ場と、そこで起きる連続殺人事件だった。
2016年に『臨床犯罪学者 有栖川有栖』がドラマ化されて注目を集めた有栖川有栖さんの出版デビュー作。
主人公の大学生たちが山のキャンプ場に閉じ込められ、そこで起こる殺人事件に挑む王道の展開となっています。
たくさんの登場人物が出てくるので、しっかりと整理しながら読み進めていくことが推理のコツです。大学1年生の初々しい「アリス」にも出会えます。
探偵になった気分で犯人当てを楽しもう!
犯人当てを楽しめる、フーダニット小説をご紹介しました。気になる小説をぜひ手にとってみてください。
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