湊かなえのおすすめ小説10選|イヤミスの女王の傑作
更新日:2019/4/8
デビュー作『告白』が映画化し話題を集め、以降も多くの作品が映像化されるなど注目を集める作家・湊かなえさん。
「イヤミスの女王」とも呼ばれており、「読後にイヤな気持ちになる、だけど読む手が止まらない!」という作品を多く発表されています。
(もちろんイヤミス以外の作品も秀逸です!)
ここでは、そんな湊さんの『告白』以外にもある、おすすめのイヤミス小説をご紹介します。
湊かなえおすすめ小説1
『花の鎖』
『花の鎖』
文藝春秋
両親を亡くし、手術が必要な祖母を抱え経済的に困窮した梨花。
母宛てに毎年花束を贈ってくる謎の男「K」に援助を頼もうと、送り主を探し出す。すると、親子3代にわたって因縁の鎖が絡んでいることを知り……。
東京から新幹線で1時間、さらに在来線で30分ほどの地方にある「アカシア商店街」を舞台に展開するミステリーです。美雪、沙月、梨花の3人の女性に因縁の鎖が絡み合ってストーリーが進みます。
美雪、沙月、梨花の3人に影を落とす謎の「K」は何者か……? 多くの伏線が張り巡らされている作品です。
物語の時系列を読み取りながらストーリーを追う難しさもありますが、それを楽しみながら最後に感動を味わうことができる作品になっています。
湊かなえおすすめ小説2
『母性』
『母性』
新潮社
1人の女子高生が、自宅の庭で倒れているのが発見される。これは自殺なのか、事故なのか……?
騒ぎの中、女子高生の母親の「愛能う限り、大切に育ててきた娘がこんなことになるなんて」という言葉に違和感を覚える教師。母親は本当に娘を愛していたのだろうか……。
母と娘の関係に違和感を覚えた教師と、その母と娘を描いた、イヤミス女王の本領発揮といった作品です。2012年に第26回山本周五郎賞の候補作にもなりました。
母娘の関係は家庭によりさまざまですが、無償の愛があって当然と思われることが多いのではないでしょうか。
母親の立場にありながら、自分も母に愛されたいと望む母親が娘を育てていくと、どのような母娘関係になるのか……。「母性」とは何なのか考えさせられる作品です。
湊かなえおすすめ小説3
『望郷』
『望郷』
文藝春秋
「みかんの花」「海の星」「夢の国」「雲の糸」「石の十字架」「光の航路」の6篇から成る短編集です。その中の「海の星」は、2012年日本推理作家協会賞 短編部門を受賞しました。
本作は島という小さなコミュニティで閉塞感を抱きながら生きる人々の話です。
作者自身、因島で18歳まで育ち、トンガ島で2年、淡路島で13年過ごしたという経歴を持つためか、島への愛と憎悪がリアルに描かれています。
2016年、テレビ東京により、広末涼子さん、伊藤淳史さん、濱田岳さん主演のオムニバスドラマとして制作され、2017年には「夢の国」「光の航路」をベースに貫地谷しほりさん、大東駿介さん主演で映画化されました。
島特有の人間関係の閉塞感をベースに描いたミステリーですが、島の情景の美しさも表現され、湊かなえさんらしい視点の転換が味わえる作品です。
湊かなえおすすめ小説4
『ユートピア』
『ユートピア』
集英社
港町・鼻崎町に古くから続く仏具店の嫁・菜々子、夫の転勤で引っ越してきた課長の妻・光稀、新しく移住してきた陶芸家のすみれ。
立場の違う3人は価値観も違う。それぞれ「誰かの役に立ちたい」という思いを抱えていたはずだったが……。
この作品も『望郷』と同様、地方にある小さな港町の小さなコミュニティを背景に展開するミステリー。
車イスの小学生・久美香のために、母親たちはボランティア基金「クララの翼」を設立します。そこから噂や嫉妬が生まれ、3人の関係に不協和音が出始めるのです。
本作のテーマは「善意は、悪意より恐ろしい」。
善意で動いたはずなのに、隠れていた優越感や劣等感、嫉妬などが顕わになることから歪んでいくという、リアリティのある人間関係が描かれたイヤミス作品です。
湊かなえおすすめ小説5
『リバース』
『リバース』
講談社
サラリーマンの深瀬は、行きつけのコーヒー店を通じて美穂子と出会い、付き合うようになる。
そんなある日、美穂子の働くパン屋に「深瀬和久は人殺しだ」という手紙が届く。美穂子に問い詰められた深瀬は、苦い思いをにじませながら自身の過去を語り始めた……。
2017年に藤原竜也さん主演でテレビドラマ化もされた作品。誰でも持っている可能性がある、心に眠る後ろ暗い過去をめぐる推理小説です。
深瀬とその友人たちが大学時代に起こした事件を中心に話が展開していきます。
謎の手紙を送り付けた犯人は誰なのか? また、深瀬の友人・広沢は仲間の誰かに殺害されたのか?
物語の最後で明かされる衝撃的な真実には、誰もが驚かされることでしょう。
湊かなえおすすめ小説6
『夜行観覧車』
『夜行観覧車』
双葉社
高級住宅街・ひばりヶ丘に越してきた遠藤家。しかし、近所づきあいが全てを支配するひばりヶ丘で、遠藤家は周囲からは嫌がらせを受けていた。
そんな遠藤家に、分け隔てなく接してくれたのが高橋家。ところが、高橋家の夫が何者かに頭を殴られて殺害されてしまう。
良好な関係だったはずの2つの家族になにがあったのか……?
高級住宅街がまとう、排他的でピリピリした空気が生々しいサスペンス小説。2013年に鈴木京香さん主演でテレビドラマ化されています。
タイトルの「夜行観覧車」とは、この街のシンボルである「日本一大きな観覧車」のこと。
どうして観覧車のことをタイトルにしたのか? この本を読み終わった後にもう一度考えてみると、その本当の意味が見えてくることでしょう。
家族のあり方を考えさせられる、問題作です。
湊かなえおすすめ小説7
『少女』
『少女』
早川書房
高校2年生の由紀と敦子は、ある日転校生の紫織と出会う。
彼女は、自分の親友が自殺した瞬間を目撃したことを自慢げに語る。それを聞いていた由紀と敦子は、紫織のことを羨ましく思った。
死がどんなものか分かれば、もっと親友のことを理解できるのではないか? と……。
「死」と「因果応報」がキーワードのヒューマンミステリー。物語のはじめに何者かの遺書が提示され、それを書いた人物を推理していくことがひとつの目的になります。
遺書を書いたのは誰なのか、そして誰が死ぬのか……?
思春期の危うい少女たちは、「死」というものにまっすぐ向き合います。「死」に魅入られた少女たちはどんな結末を迎えるのでしょうか。
湊かなえおすすめ小説8
『白ゆき姫殺人事件』
『白ゆき姫殺人事件』
集英社
ある山の中で、美人OLの三木典子が殺害された。事件に興味を持ったフリーライターの赤星は、その調査に乗り出し、典子の同僚だった城野美姫に疑いの目を向ける。
メディアやSNSなど、世間でも美姫の名前が注目されるが……。
『白ゆき姫殺人事件』では、赤星雄治によるインタビューや記事、SNS通して、読者は事件の内容を知ることになります。
美姫を犯人として煽る人がいれば、イメージだけで噂や憶測をする人……。メディアやSNSなどの曖昧さ、そして恐ろしさがこれでもかと描かれています。
世間の噂通り、美姫が犯人なのでしょうか?
湊かなえおすすめ小説9
『贖罪』
『贖罪』
東京創元社
静かな田舎町に、都会の雰囲気を纏ったお嬢様のエミリが転校してきた。そんな彼女が、ある日何者かに殺害されてしまう。
事件の直前までエミリと一緒にいた友人4人は、エミリを連れて行った男の姿を見ていたが、どうしても顔が思い出せない。
エミリの母親は4人に言う。犯人を捕まえるか、それに見合った償いをしなさい、と……。
重い十字架を背負って生きる、4人のその後の人生を描いた物語です。
あの日から15年、エミリの母親から言われた言葉を忘れられずに大人になった彼女たちの人生は大きく狂いはじめ、負の連鎖はどこまでも続いていきます。
いつ、どこでなにをしていても罪がこちらを見つめているのです。
彼女たちの独白を聞いて、あなたなら何を考えるでしょうか?
湊かなえおすすめ小説10
『往復書簡』
『往復書簡』
幻冬舎
「十年後の卒業文集」「二十年後の宿題」「十五年後の補習」という3つの短編と、「十五年後の補習」のその後にあたる「一年後の連絡網」から成る短編集です。
収録されている作品はすべて「手紙のやり取り」という形で語られています。
「十年後の卒業文集」は、かつて同じ放送部に所属していた同級生たちの手紙で、顔にケガを負い姿を見せなくなった千秋という人物について書かれています。
「二十年後の宿題」では、敦史がかつての恩師・竹沢真智子の依頼で、六人の教え子に宛てた封筒を預かり、渡しにいくというストーリー。実はこの6人は20年前の事故に関係しており、徐々に事故の真相が明らかに……。
「十五年後の補習」は、国際ボランティア隊に参加することになった純一と、その恋人・万里子の手紙。かつて2人に起きた事件とその真相が語られていきます。
解釈のしがいのあるラストで、いつもの湊かなえ作品とはすこし違う読後感を味わえることでしょう。
人間の中に潜む怖さを読む
湊かなえさんの小説は、多視点からストーリーを進める手法がよく使われています。
伏線を回収していき、バラバラだと思っていたものがすべてつながったとき、おもしろさが倍増しますよ。
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