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『告白』『リバース』だけじゃない!湊かなえの伏線の回収が秀逸な小説


『告白』や『リバース』、『Nのために』『白ゆき姫殺人事件』『夜行観覧車』など、多くの作品がテレビドラマに映画にと映像化されて注目を集める作家・湊かなえさん。

湊さんの上記以外の作品で、”伏線の回収”を楽しめて、最後には予想外の展開へ導いてくれる作品があります。

なかには読む者の心を逆なでするようなストーリー、いわゆるイヤミス的な展開のある作品もありますが、それがクセになるおもしろさです。

湊かなえさんならではの、伏線とその回収が秀逸な作品をご紹介します。

 

「K」は一体何者なのか?
『花の鎖』

『花の鎖』
文藝春秋

東京から新幹線で1時間、さらに在来線で30分ほどの地方にある「アカシア商店街」を舞台に展開するミステリーです。美雪、沙月、梨花の3人の女性に因縁の鎖が絡み合ってストーリーが進みます。

両親を亡くし、手術が必要な祖母を抱え経済的に困窮した梨花は、母宛てに毎年花束を贈ってくる謎の男「K」に援助を頼もうと、送り主を探し出したことから親子三代にわたって因縁の鎖が絡んでいることを知ります。

美雪、沙月、梨花の3人に影を落とす謎の「K」は何者か……? 多くの伏線がちりばめられた作品です。
発売当初、伏線が回収され主人公3人のつながりが明らかになったときに、「最初からもう一度読み返したい!」との声が多く見られました。

物語の時系列を読み取りながらストーリーを追う難しさもありますが、それを楽しみながら最後に感動を味わうことができる作品になっています。

 

母親と娘の関係に生まれる不幸とは……
『母性』

『母性』
新潮社

母と娘の関係を描いた、イヤミス女王の本領発揮といった作品です。2012年に、第26回山本周五郎賞の候補作にもなりました。

ひとりの女子高生が自宅の庭で倒れているのが発見されます。これは、自殺なのか、事故なのか……。
騒ぎの中、女子高生の母親の「愛能う限り、大切に育ててきた娘がこんなことになるなんて」という言葉に違和感を覚える教師がいました。母親は本当に娘を愛していたのだろうか……と。

その違和感を覚えた教師と、娘を持つ母親の物語。

母娘の関係は家庭により様々ですが、無償の愛があって当然と思われることが多いのではないでしょうか。
母親の立場にありながら、自分も母に愛されたいと望む母親が娘を育てていくと、どのような母娘関係になるのか……。「母性」とは何なのか考えさせられる作品です。

 

相手を想う嘘
『望郷』

『望郷』
文藝春秋

「みかんの花」「海の星」「夢の国」「雲の糸」「石の十字架」「光の航路」の6篇から成る短編集です。その中の「海の星」は、2012年日本推理作家協会賞 短編部門を受賞しました。

本作は島という小さなコミュニティで閉塞感を抱きながら生きる人々の話です。作者自身、因島で18歳まで育ち、トンガ島で2年、淡路島で13年過ごしたという経歴を持つためか、島への愛と憎悪がリアルに描かれています。

2016年、テレビ東京により、広末涼子さん、伊藤淳史さん、濱田岳さん主演のオムニバスドラマとして制作され、2017年には「夢の国」「光の航路」をベースに貫地谷しほりさん、大東駿介さん主演で映画化されました。

島特有の人間関係の閉塞感をベースに描いたミステリーですが、島の情景の美しさも表現され、湊かなえさんらしい視点の転換が味わえる作品です。

 

善意から始まったはずが……
『ユートピア』

『ユートピア』
集英社

この作品も『望郷』と同様、地方にある小さな港町の小さなコミュニティを背景に展開するミステリーです。2016年に第29回山本周五郎賞を受賞しました。

港町・鼻崎町に古くから続く仏具店の嫁・菜々子、夫の転勤で引っ越してきた課長の妻・光稀、新しく移住してきた陶芸家のすみれ。立場の違う3人は価値観も違います。それぞれ「誰かの役に立ちたい」という思いを抱えていたはずでしたが……。

車イスの小学生・久美香のために、母親たちはボランティア基金「クララの翼」を設立します。そこから噂や嫉妬が生まれ、3人の関係に不協和音が出始めるのです。

本作のテーマは「善意は、悪意より恐ろしい」。
善意で動いたはずなのに、隠れていた優越感や劣等感、嫉妬などが顕わになることから歪んでいくという、リアリティのある人間関係が描かれたイヤミス作品です。

 

人間の中に潜む怖さを読む

湊かなえさんの小説は、多視点からストーリーを進める手法がよく使われています。

伏線を回収していき、バラバラだと思っていたものがすべてつながったとき、おもしろさが倍増しますよ。

 

今回ご紹介した湊かなえさんの作品

花の鎖文藝春秋
母性新潮社
望郷文藝春秋
ユートピア集英社

「イヤミスの女王」湊かなえの魅力に迫る!

 

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