読んでおきたい「 ガラスの鍵賞 」受賞作品|北欧ミステリーの権威
更新日:2017/12/23
全世界でブームとなっている『北欧ミステリー』。
作品によっては30ヶ国語以上もの言語に翻訳されており、1000万部を超えるベストセラー作品を何作も生み出しています。
いまや、北欧ミステリーは、ミステリーを語るうえでは避けて通れないジャンルと言えるでしょう。
今回のコラムでは、北欧ミステリーの魅力と、北欧ミステリーを代表する作品を紹介したいと思います。
どの作品も全世界で500万部~数千万部以上を売り上げる大ヒット作品ですので、一度手に取ってみてはいかがでしょうか。
北欧ミステリーの魅力、「 ガラスの鍵賞 」とは
なんといっても、北欧ミステリーの一番の魅力は、さまざまな社会問題に切り込む特性が特に強いところではないでしょうか。
そもそも、国家におけるミステリーの立ち位置が違うのです。日本ではミステリー=娯楽の一環と考える人が多いと思います。ですが、北欧諸国にとってのミステリーは、作家たちが社会批判をするための表現方法なのです。それは、ミステリーを好む読者が多いという、北欧諸国ならではの国民性も影響しています。
北欧諸国で最も権威のある文学賞は『ガラスの鍵賞』。北欧5ヶ国(アイスランド・スウェーデン・デンマーク・フィンランド・ノルウェー)のミステリーの中で最も優秀な1作品が選ばれます。
ガラスの鍵賞を受賞した作品は、次々と世界中で翻訳されてはヒットを飛ばしていることからも、その質の高さが伺えます。
ちなみに、今回ご紹介する作品はすべてガラスの鍵賞受賞作となります。
北欧ミステリーブームの火付け役!
『ミレニアム』
スティーグ・ラーソン(著)、早川書房
北欧ミステリーのブームを巻き起こした金字塔的作品。30ヶ国以上で翻訳され、累計8000万部以上という驚異的な売上部数を誇るベストセラー。この作品が大ヒットしたのをきっかけに、北欧ミステリーのブームが巻き起こりました。
現在日本で発売されているのは、シリーズ3部作+(ラーソン氏死後)ダヴィド・ラーゲルクランツ氏による1作の計4作品。
ページをめくる手が止まらないエキサイティングなストーリー展開(次々と事件が発生するのです)、知的好奇心をこれでもかとくすぐる衒学趣味。ハラハラドキドキをこれでもかというほど堪能したい!という方にオススメです。
クセになるミステリー作品
『特捜部Q』
ユッシ・エーズラ・オールスン(著)、早川書房
累計1000万部以上を売り上げたヒット作品。こちらも北欧諸国では絶大な人気を誇るシリーズであり、日本では現在6作品が発売されています。
変わり者揃いの特捜部Qの面々と、重く陰鬱な事件のギャップが、癖になる作品です。
常に何かがずれているキャラクターたち。優秀なのにコピーをどう取るか知らなかったり、変な味のお茶を淹れたり……警察小説といえばお堅いイメージが強いジャンルですが、本書はウィットに富んだ妙な会話シーンが多く、肩肘張らずに楽しむことができますよ。
勇気を持って、読んで欲しい作品
『緑衣の女』
アーナルデュル・インドリダソン(著)、東京創元社
累計1000万部を突破したヒット作品。作者・アーナルデュル・インドリダソン氏は、なんと本作で史上初・ガラスの鍵賞二連覇を達成しました。なんと2年連続の受賞です。
日本でいういわゆるイヤミス。DV(ドメスティック・バイオレンス)が本書のテーマとなっており、読むのがつらいシーンも多々ありました。しかし、訳者あとがきいわく、作者は「DVの真実を知ってほしい」という名目で本書を書いたのだそう。
なお、本書は警察の聞き込みで事実が明らかになっていく形を取っています。ぞっとする真実に向き合う勇気のある方はぜひ読んでみてくださいね。
死刑制度について、考えさせられる作品
『制裁』
アンデシュ・ルースルンド、ベリエ・ヘルストレム(著)
早川書房
累計500万部を超える人気シリーズ。グレーンス警部&スンドクヴィスト警部補シリーズとして、日本では現在5作品が発売されています。
テーマは死刑制度。本書で描かれる国・スウェーデンでは、死刑制度がありません。また模範囚であれば、数十年後には出所できます。たとえ改心していなくても……。
本書の犯人は、幼女暴行殺人を繰り返す凶悪犯。死刑制度で裁けないのなら、自らの手で犯人を殺してやりたいと思う被害者の気持ち。被害者の行動をめぐる世論、司法という立場から見た捉え方……日本にはない倫理観や価値観は大変勉強になりますし、本書を機に改めて死刑制度について考えてみるのもいいかもしれませんね。
社会問題を色濃く描いた北欧ミステリー
今回のコラムでは代表的な北欧ミステリー作品を紹介しました。エンターテイメントを超えた面白さを堪能してくださいね。
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