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読みごたえあり! 横溝正史の長編作品5選


横溝正史氏の作品は、何度もドラマ化、映画化されているので、見たことがあるという方も多いのではないでしょうか。

映像化が多い理由として、事件の情景などが非常に映像的であるという点が挙げられます。ですから長編でも、読み手をグイグイと引き込む魅力があるのです。

今回は特に読みごたえがあり、一度は読んでおきたい作品を5つ紹介します。どれも映像化されているので、それらと見比べるのもおすすめです。

 

その1.『悪魔が来りて笛を吹く』

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『悪魔が来りて笛を吹く』
角川グループパブリッシング

1951年から1953年にかけて、探偵小説雑誌「宝石」で連載されたもので、のちにテレビや映画など複数回にわたって映像化されました。

 

かつて世間を騒がせた「天銀堂事件」の犯人とされた元子爵・椿英輔の娘が、金田一耕助のもとを訪れるところから話が始まります。

怪しいフルートの音色にのせて起こる密室殺人事件。それを皮切りに起こる謎の連続殺人事件が、読み手を小説に引き込んでいきます。

人間関係などがとても複雑な設定ではありますが、過去の秘密や密室トリックに工夫があり、読み応え抜群です。

本作を読んでから映像作品を見ると、映像化した際の苦労も感じられるかもしれません。

 

その2.『悪魔の手毬唄』

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『悪魔の手毬唄』
角川グループパブリッシング

1957年から1959年にかけて『宝石』に連載されたもので、こちらもドラマ化、映画化が数度にわたって行われました。手毬唄の歌詞に合わせて、関係者が一人、また一人と殺されていくという発想が面白い小説です。

1955年、金田一耕助は静養のために鬼首村の温泉宿を訪れます。この温泉宿には仁礼家、由良家、別所家という家があり、それぞれに娘がいます。
あるとき、国民的人気歌手となった別所家の娘、別所千恵子が村に戻ってくることになり、歓迎会が開かれたとき、由良家の娘が奇怪な恰好で殺害されているのが見つかるのです。

狭い村の中での人間関係が事件を生み出す背景として一役買っているのがなんとも物悲しい作品です。

 

その3.『犬神家の一族』

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『犬神家の一族』
角川グループパブリッシング

横溝正史氏の作品を読んだことがないという方でも、『犬神家の一族』というタイトルは知っているという方は多いのではないでしょうか。

横溝作品の中でもドラマや映画になった回数が多く、特に石坂浩二さんが主演した1976年の映画版は、角川映画の第一作であり、「日本映画の金字塔」と呼ばれることもあります。
水面から突き出た二本の足の映像や真っ白なマスクの顔などを記憶している方も多いでしょう。

原作は1950年から1951年にかけて、雑誌『キング』に連載されました。

財界の大物である犬神佐兵衛が遺した遺言状にかかわって、犬神家の家宝である「斧」「琴」「菊」に見立てられて殺人が起こります。

相続にかかわる長男・佐清(スケキヨ)が、戦地での怪我のために白いマスクで顔面を覆っているというのも謎を深めています。

 

その4.『八つ墓村』

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『八つ墓村』
角川グループパブリッシング

横溝正史氏の作品の中でもっとも映像化の回数が多いのが『八つ墓村』です。特に1977年に映画化されたときの「八つ墓村の祟りじゃー!」というセリフは流行語にもなりました。

1949年から1950年に『新青年』で連載されましたが、途中で作者が休載している間に、雑誌が休刊となってしまいました。そこで1950年から1951年にかけて「八つ墓村 続編」として『宝石』に連載され、完結しています。

主人公・寺田辰弥は、自分の身寄りが自分を探していることを知ります。
会いに行こうとしたところ、「戻ってくると八つ墓村は血の海となる」という手紙を受け取り、母方の祖父が毒殺される事件に遭遇。八つ墓村に戻った辰弥は、連続殺人事件に巻き込まれてしまいます。

1938年に起きた住民30人が殺害された津山事件が、『八つ墓村』の連続殺人事件のモチーフに使われています。

 

その5.『病院坂の首縊りの家』

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『病院坂の首縊りの家』
角川グループパブリッシング

1975年から1977年にかけて、『野性時代』に連載されたもので、金田一耕助最後の事件とされています。

1953年、ある写真館の長男直吉が奇妙な写真撮影の依頼を受けます。
写真撮影は終わらせるも、数日後に再び撮影の依頼を受けて出かけた直吉は、廃墟で生首を発見。直吉と廃墟の所有者から依頼を受けた金田一が調査したものの、迷宮入りに……。そして20年後、直吉が殺害されるという事件が起こるのです。

解決までなんと20年もかかるという、難事件です。解決に時間がかかることでさらに複雑に人間関係が入り組み、事件の背後に大きな影響を与えるものとなっています。

 

横溝正史の映像美を小説で体感

タイトルだけは聞いたことがある、という作品もあったでしょうか。

どれも長編ですが、横溝氏の巧みな描写力で最後まで飽きることなく読むことができます。本当に現場で事件を体験しているような気分を、ぜひ味わってくださいね。

 

今回ご紹介した横溝正史の書籍
悪魔が来りて笛を吹く
悪魔の手毬唄
犬神家の一族
八つ墓村
病院坂の首縊りの家

日本三大名探偵と名高い、明智小五郎、金田一耕助、神津恭介。あなたは誰が好きですか?