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【海外】古典ミステリーのおすすめ小説|ミステリーの原点となる傑作とは


更新日:2019/4/22

【海外】古典ミステリーのおすすめ小説

ミステリーには長い歴史があり、今の時代にわたしたちが見る本や映像作品として作られるものも、もとをたどればその原型となる作品があります。

ミステリー作家は、過去の作品のトリックや謎解きのパターンを発展させながら、新しい作品を創り出しているといえるでしょう。

ここでは、一度は読んでおきたい海外の古典ミステリー小説を10作品ご紹介します。

古い作品が多いので読みにくいこともありますが、どれも言わずと知れた傑作ですよ。

 

すべての推理小説の原点!
『モルグ街の殺人事件』

『モルグ街の殺人事件・黄金虫』表紙

モルグ街の殺人事件
エドガー・アラン・ポー(著)、新潮社ほか

パリに滞在している「私」は、オーギュスト・デュパンと出会う。
二人が出会って間もなく、モルグ街で猟奇的な殺人事件が起こった。人の出入りができなくなっていた部屋、多数の証言の食い違いなど、謎に満ちた事件に興味を持った「私」とオーギュスト・デュパンは、独自に調査を始める。

 

密室殺人の元祖で、最初の推理小説といわれる作品です。
物語の結末まで明かされない犯人と、事件を解決する名探偵という、推理小説の原型がこの作品から始まりました。世界には、オーギュスト・デュパンに影響を受けて生まれた探偵がたくさん存在します。

ミステリーを語るならこの作品は読んでおかないと! と思い読みましたが、まさかの結末にあんぐりです……。

本作が発表されたのが1841年。その後1887年に日本語訳されたものが出版されました。以降多くの訳者による日本語版が出版されています。違う訳者のものを読み比べてみるというのも、海外古典ならではの楽しみ方です。

 

世界で最も有名な探偵が大活躍!
「シャーロック・ホームズシリーズ」

「シャーロック・ホームズの冒険」表紙

シャーロック・ホームズシリーズ
アーサー・コナン・ドイル(著)、新潮社ほか

誰もが知っているイングランド生まれの名探偵 シャーロック・ホームズ。

ホームジアン(イギリス)やシャーロキアン(米国、日本)と呼ばれる熱烈な愛好家が存在し、数多くメディア化された作品です。

長編・短編あわせて約60編あり、そのほとんどがホームズの相棒であるワトスンの事件記録という形で書かれているのが特徴です。犯行に至るまでがしっかり描かれているため、最後まで目を離せません!

風変わりな探偵と、常識ある者とのコンビは、先ほど紹介した『モルグ街の殺人事件』から影響を受けているのだそうです。

事件現場の手がかりから仮説を立てて真相を突き止めるというパターンは、以降のミステリーの原型となりました。

 

盛大に騙されて!
『アクロイド殺し』

『アクロイド殺し』表紙

アクロイド殺し
アガサ・クリスティ(著)、早川書房

未亡人のフェラーズ夫人、その夫人と再婚が噂された富豪のロジャー・アクロイドが何者かに殺された。事件は迷宮入りするかと思われたが、ロジャーの姪であるフローラが、引退した探偵 ポアロに助けを求め、事件は一変する。

 

アガサ・クリスティは、1926年に出されたこの作品でベストセラー作家となりました。
アガサ・クリスティの作品は世界で10億部以上出版されているといわれ、史上最高のベストセラー作家としてギネスブックにも載るミステリーの女王です。

この作品には、読者があっと驚く仕掛けがあります。わたしも犯人はだれか自分なりに推理していましたが、盛大に騙されてしまいました。
発表当時は、この仕掛けを巡り大論争が起こったこともあるそうです。

アガサ・クリスティの工夫が随所に光る作品です。

 

ハードボイルド作品の先駆け!
『マルタの鷹』

『マルタの鷹』表紙

マルタの鷹
ダシール・ハメット(著)、早川書房

妹を探してほしいというブリジット・オショーネシーからの依頼を受けたサンフランシスコの探偵 サム・スペード。
相棒のマイルズ・アーチャーに、フロイド・サースビーを尾行させるのだが、その夜二人は死体となって発見されるのだった……。

 

レイモンド・チャンドラーとともに、ミステリーにハードボイルドというジャンルを確立した作家として知られるダシール・ハメット。
本作は1930年に単行本化された、私立探偵サム・スペードを主人公とする長編ミステリーです。

1941年に映画化され、サム・スペード役を務めたハンフリー・ボガートの出世作となった作品でもあります。

ハードボイルドとは、登場人物の内面的な描写を排した、客観的で簡潔な文体が特徴のミステリーのサブジャンルのこと。本格的な推理や謎解きなどはありませんが、息もつかせないスピード感のある展開は読者を惹きつけます!

 

ベッドで寝ていながら推理!?
『時の娘』

『時の娘』表紙

時の娘
ジョセフィン・テイ(著)、早川書房

犯人追跡中に足を骨折し、ベッドで退屈していたアラン・グラント警部。そんなグラント警部が、悪評高き王・リチャード三世の肖像画や歴史書から、彼の素顔を読み解こうとする。

 

1951年に発表され、ミステリーのサブジャンルのなかでは歴史ミステリー、アームチェアディテクティブの先駆けとなった名作です。
アームチェアディティクティブは、主人公である探偵が真相の解明にあたり、現場に出向くことはせずベッドやアームチェアに居ながら推理を展開していくというもの。

本作を読むにあたり、イギリスの歴史についての知識がないと読み進めるのが少し難しいかもしれません。しかし、グラント警部のひらめきと思考力には、目を見張るものがありました。

グラント警部により導かれた結論から、教科書で淡々と習ってきた歴史って何なんだろう……と考えさせられます。

 

見立て殺人の名作
『僧正殺人事件』

『僧正殺人事件』表紙

僧正殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン(著者)、東京創元社ほか

4月のニューヨークで、世界的に有名な童謡マザー・グースの「コック・ロビンの死と葬い」に酷似した殺人事件が発生する。

現場には「僧正」と署名された殺人を示唆するような内容の手紙が。さらに次々と「僧正」の魔手により、不気味な殺人事件が続いていく。はたして「僧正」の正体とは……?

 

不気味な「見立て殺人」の先がけとして知られる本書は、ミステリーの楽しみ方を再認識できる1冊です。

素人探偵ファイロ・ヴァンスが登場する12編の4作目で、『グリーン家殺人事件』と並ぶS・S・ヴァン・ダイン氏の代表作。大仕掛けのトリックはなく、古典ならではの事件を緻密に暴いていく醍醐味が味わえますよ。

江戸川乱歩をはじめ著名な推理作家が絶賛し、横溝正史氏の『獄門島』や『悪魔の手毬唄』などの名作誕生に影響を与えた不朽の名作を楽しんでみてください。

 

江戸川乱歩が高評価を与えた
『幻の女』

『幻の女』表紙

幻の女
ウイリアム・アイリッシュ(著)、早川書房

離婚を拒否する妻のマーセラと口喧嘩をして家を飛び出したスコットは、バーで奇妙な帽子をかぶった女に出会う。
気晴らしにマーセラと観るはずだったショーに女を誘ったスコットは深夜に帰宅。しかしその後、スコットは妻殺しで逮捕されてしまう。

スコットのアリバイを証明できるのは、見ず知らずの「幻の女」しかいない。はたして「幻の女」は見つかるのか……?

 

アメリカの推理作家コーネル・ウールリッチがウイリアム・アイリッシュ名義で執筆した最初の作品。江戸川乱歩が評判を知り原書を入手し高評価を与えた名作で、古さは多少あるものの、クオリティの高さは抜群です。

最後の最後までハラハラドキドキが続き、緻密なトリックはもちろん、叙情的な文章や個性的な登場人物も楽しめます。

まだ読んでいない方は、時代を越えて愛される永遠の名作を楽しんでみてはどうでしょう。

 

世紀をまたいで愛される
『予告殺人』

『予告殺人』表紙

予告殺人
アガサ・クリスティ(著)、早川書房

地元紙「ギャゼット」の広告欄に、殺人予告が掲載される。
人々は驚くが、悪ふざけだと思いながらも予告時間に予告場所へ集まる。すると、まさに予告時間に銃声が響き、予告通りに殺人が行われた。

誰が何の目的で殺人し、なぜそれを予告したのか? 大胆不敵な殺人事件の行方は……。

 

本書はアガサ・クリスティの人気シリーズの1つ、老嬢ミス・マープルが活躍する「マープルシリーズ」の4作目で、シリーズの中で最高傑作と評される作品です。

隠された秘密を明らかにしながら徐々に真相へ近づく展開は、まさにミステリーの王道! きっちり論理の筋が通り、それぞれ伏線に対する一貫性のある解決が楽しめます。

読んだことがない方はもちろん、すでに読破された方も再びアガサ・クリスティの世界を楽しんでみてくださいね。

 

密室ミステリーの最高傑作
『黄色い部屋の秘密』

『黄色い部屋の秘密』表紙

黄色い部屋の秘密
ガストン・ルルー(著)、早川書房ほか

スタンガーソン博士宅にある「黄色い部屋」から、令嬢マチルダの悲鳴と銃声が響き渡った。
居合わせた博士らは、1つしかないドアを壊し部屋へ入ると、そこには頭部から血を流すマチルダの姿があった。

部屋は荒らされ、黄色の壁紙には血で染められた手形が。部屋は完全な密室となっており、犯人がどこへ消えたのか分からない。そんな事件に、若き少年記者ルールタビーユが挑む!

 

『オペラ座の怪人』の著者である、ガストン・ルルー氏により描かれた密室殺人を扱うフランスの古典ミステリー。
「密室の巨匠」ディクスン・カー氏に「最高傑作」と評されたトリックは、人間心理の盲点を突いています。

100年以上も前に新聞小説として書かれたミステリーなので、科学捜査などがないのも古典らしさの1つかもしれません。

新訳版が読みやすいのでおすすめです。密室トリックの謎をルールタビーユとともに解いてみませんか?

 

クイーン氏自身が最高傑作と評す
『災厄の町』

『災厄の町』表紙

災厄の町
エラリー・クイーン(著)、早川書房

結婚式直前に失踪した花婿のジムが、3年後に突然ライツヴィルの町に戻ってきた。その後、ジムの帰りを待ち続けた婚約者のノーラと結婚し、幸せな日々を送っているかに見えた。
だが、ある日ノーラはジムの持ち物から奇妙な手紙を発見する。そこに書かれていたのは、妻である自分の死を知らせる文面だった。

一方、推理作家のエラリー・クイーンは、新作執筆のためにたまたま町を訪れていた。

 

巨匠エラリー・クイーン氏が、自身の最高傑作と評す本書。日本でも高い評価を受け、1979年に映画化されています。

架空の町ライツヴィルを舞台にした「ライツヴィルシリーズ」の最初の作品で、本書の最大の特徴は著者であるエラリイ・クイーン氏と同名の登場人物がいることです。

古き良き時代を彷彿とさせるアメリカの小さな町で暮らす人々が、殺人と醜聞により猜疑的になっていく人間模様の描き方は見事としか言いようがありません。

 

一度味わうべき古典ミステリー!

これらの他にも、初のスパイ小説であるジョン・ル・カレの『寒い国から帰ってきたスパイ』、ダイイング・メッセージという言葉をはじめて世に送り出したエラリー・クイーンの『Xの悲劇』など、今は一般的になったジャンルやトリックの原型となった作品が数多く存在します。

そこから発展した後の数々の作品のなかにあって、今も消えずに読み継がれる古典的名作は惹きつけられる素晴らしい何かを持っていると思います。

一度読んでみてはいかがでしょうか?

 

海外も名作ぞろいですが、では、日本国内の古典ミステリーは?