次世代の作家たちによるイヤミス小説に読む手が止まらない。
更新日:2017/10/10
読めばイヤな気分になる「イヤミス」。
不快なのに、ページをめくる手が止まらない……読後感は最悪なのに、それでも読んでしまう……そんな読者の方も多いのではないでしょうか?
イヤミス作家といえば、湊かなえさん、真梨幸子さん、沼田まほかるさんなどが有名ですが、今回は、個人的におすすめしたい『次世代の作家たちによるイヤミス』を紹介したいと思います。
どの作品もイヤ~な内容で、読む人を選ぶ作品ですので、自己責任で読んでいただければ嬉しく思います。
イヤミス好きで、新進気鋭の作家たちを新規開拓していきたいという方に。
なお、極力ネタバレは避けていますが、作品を紹介する上であらすじなどは記載しています。どうかご了承いただければ幸いです。
「完璧」になろうとするほど歪んでいく
『完璧な母親』
まさきとしか(著)、幻冬舎
『きわこのこと』がヒット作となった、まさきとしかさんによる作品。「母の愛こそ最大のミステリ」というキャッチコピー通り、子どもへの愛が狂気となったイヤミスです。
「自分の子は自分で守らなきゃいけない」と考え、完璧な母親になろうとする母親と、重い愛情の裏側で歪んでいく子ども。
自分は正しいと信じ込む母親の姿は狂気的ですが、もしかすると、人間ならば大なり小なりこのような要素はあるのかもしれません。「あなたのためにやっていること」だと思っていることは、単なる自己満足に過ぎないのかも。個人的には、教訓的な要素も含まれたイヤミスでした。
狭い世界で生きる人々の心の内とは……
『避雷針の夏』
櫛木理宇(著)、光文社
小説すばる新人賞、日本ホラー小説大賞読者賞を受賞した櫛木理宇さんによる作品。男尊女卑、村八分、いじめ、介護といった重いテーマが描かれたイヤミスです。
舞台となる田舎街は、実に排他的。出てくる登場人物たちはみな最悪、悪意たっぷりで、本書を読めば間違いなく人間不信になるといっても過言ではありません。
「よそものは、死ぬまでよそもの」。集団心理の怖さを感じさせられる一冊です。日本にもこのような街があるかも?と考えるだけで背筋が凍ります。知らないだけで、きっとあるのでしょうね……。
選択を迫られた女性たちに起こる悲劇
『許されようとは思いません』
芦沢央(著)、新潮社
「このミステリーがすごい!」2017年版第5位、第38回吉川英治文学新人賞候補作品。日常に潜む狂気をテーマにした短編集です。
本書は、なんといっても練られた構成がクセになります。「あなたは絶対にこの結末を予測できない!」というキャッチフレーズ通り、どんでん返しもあります。イヤミスなので描かれる世界は怖いのですが、それよりも作者のテクニックに「すごい!」と驚かされることが多い作品でした。
ぜひ、謎解きをしながら読み進めてみてください。技巧的なイヤミスを読みたい方には強くおすすめしたい作品です。
現代社会、いつも隣り合わせの闇
『転落』
永嶋恵美(著)、講談社
日本推理作家協会賞を受賞した永嶋恵美さんの長編。
テーマはタイトル通り「転落人生」が描かれています。ホームレスに転落してしまった”ボク”や、幸せな主婦から転落してしまった”私”……これ以上落ちていくことはないと思っていた矢先に起こる事件。負の連鎖は終わることがなく……。途中、読み進めるのが嫌になるほどイヤな作品でした。
とにかく不快になる作品という意味では、イヤミスとして成功と言えるかもしれません。それほどに救いがない作品です。
新進気鋭の作家たちによるイヤミスを読んでみて
湊かなえさん、真梨幸子さん、沼田まほかるさんなど、広く知られた作家のイヤミスとはまた違う世界観を楽しむことができます。
イヤミス好きな方にはぜひ読んでいただきたいと思います。
やっぱり定番も外せない!
映像化もした人気イヤミス作品もぜひ。