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次世代の作家たちによるイヤミス小説に読む手が止まらない。


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読めばイヤな気分になる「イヤミス」。

不快なのに、ページをめくる手が止まらない……読後感は最悪なのに、それでも読んでしまう……そんな読者の方も多いのではないでしょうか?

 

イヤミス作家といえば、湊かなえさん、真梨幸子さん、沼田まほかるさんなどが有名ですが、今回は、個人的におすすめしたい『次世代の作家たちによるイヤミス』を紹介したいと思います。

どの作品もイヤ~な内容で、読む人を選ぶ作品ですので、自己責任で読んでいただければ嬉しく思います。

 

イヤミス好きで、新進気鋭の作家たちを新規開拓していきたいという方に。

なお、極力ネタバレは避けていますが、作品を紹介する上であらすじなどは記載しています。どうかご了承いただければ幸いです。

 

「完璧」になろうとするほど歪んでいく

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『完璧な母親』
まさきとしか(著)、幻冬舎

流産を重ね授かった最愛の息子が池で溺死。絶望の淵で母親の知可子は、息子を産み直すことを思いつく。同じ誕生日に産んだ妹に兄の名を付け、毎年ケーキに兄の歳の数の蝋燭を立て祝う妻の狂気に夫は怯えるが、知可子は歪な“完璧な母親”を目指し続ける。そんな中「あなたの子供は幸せでしょうか」と書かれた手紙が―。母の愛こそ最大のミステリ。(表紙裏)

 

『きわこのこと』がヒット作となった、まさきとしかさんによる作品。

「母の愛こそ最大のミステリ」というキャッチコピー通り、子どもへの愛が狂気となったイヤミスです。

「自分の子は自分で守らなきゃいけない」と考え、完璧な母親になろうとする母親と、重い愛情の裏側で歪んでいく子ども。

自分は正しいと信じ込む母親の姿は狂気的ですが、もしかすると、人間ならば大なり小なりこのような要素はあるのかもしれません。「あなたのためにやっていること」だと思っていることは、単なる自己満足に過ぎないのかも。個人的には、教訓的な要素も含まれたイヤミスでした。

 

狭い世界で生きる人々の心の内とは……

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『避雷針の夏』
櫛木理宇(著)、光文社

家庭も仕事も行きづまっていた梅宮正樹は、妻子と要介護の母を連れ、田舎町・睦間に移り住む。そこは、元殺人犯が我が物顔にのさばる一方、よそものは徹底的に虐げられる最悪の町だった。小料理屋の女将・倉本郁枝と二人の子供たちも、それ故、凄惨な仕打ちを受けていた。猛暑で死者が相次ぐ夏、積もり積もった人々の鬱憤がついに爆発する―。衝撃の暗黒小説!(表紙裏)

 

小説すばる新人賞、日本ホラー小説大賞読者賞を受賞した櫛木理宇さんによる作品。

男尊女卑、村八分、いじめ、介護といった重いテーマが描かれたイヤミスです。

舞台となる田舎街は、実に排他的。出てくる登場人物たちはみな最悪、悪意たっぷりで、本書を読めば間違いなく人間不信になるといっても過言ではありません。

「よそものは、死ぬまでよそもの」。集団心理の怖さを感じさせられる一冊です。日本にもこのような街があるかも?と考えるだけで背筋が凍ります。知らないだけで、きっとあるのでしょうね……。

 

選択を迫られた女性たちに起こる悲劇

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『許されようとは思いません』
芦沢央(著)、新潮社

かつて祖母が暮らしていた村を訪ねた「私」。祖母は、同居していた曾祖父を惨殺して村から追放されたのだ。彼女は何故、余命わずかだったはずの曾祖父を殺さねばならなかったのか…究極の選択を迫られた女たちの悲劇を、端正な筆致と鮮やかなレトリックで描き出す、ミステリ短篇集の新たなるマスターピース!

新時代到来を告げる驚愕の暗黒ミステリ。(帯)

 

「このミステリーがすごい!」2017年版第5位、第38回吉川英治文学新人賞候補作品。

日常に潜む狂気をテーマにした短編集です。

本書は、なんといっても練られた構成がクセになります。「あなたは絶対にこの結末を予測できない!」というキャッチフレーズ通り、どんでん返しもあります。イヤミスなので描かれる世界は怖いのですが、それよりも作者のテクニックに「すごい!」と驚かされることが多い作品でした。

ぜひ、謎解きをしながら読み進めてみてください。技巧的なイヤミスを読みたい方には強くおすすめしたい作品です。

 

現代社会、いつも隣り合わせの闇

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『転落』
永嶋恵美(著)、講談社

ホームレスになってしまった「ボク」は、食料を探していた神社で、小学生の麻由から弁当を手渡される。巧妙な「餌付け」の結果生まれた共犯関係は、運命を加速度的に転落へと向かわせる。見せ掛けの善意に隠された嫉妬・嘲笑・打算が醜くこぼれ落ちるとき、人は自分を守れるのか!?驚愕の心理サスペンス。(表紙裏)

 

日本推理作家協会賞を受賞した永嶋恵美さんの長編。

テーマはタイトル通り「転落人生」が描かれています。ホームレスに転落してしまった”ボク”や、幸せな主婦から転落してしまった”私”……これ以上落ちていくことはないと思っていた矢先に起こる事件。負の連鎖は終わることがなく……。途中、読み進めるのが嫌になるほどイヤな作品でした。

とにかく不快になる作品という意味では、イヤミスとして成功と言えるかもしれません。それほどに救いがない作品です。

 

新進気鋭の作家たちによるイヤミスを読んでみて

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湊かなえさん、真梨幸子さん、沼田まほかるさんなど、広く知られた作家のイヤミスとはまた違う世界観を楽しむことができます。

イヤミス好きな方にはぜひ読んでいただきたいと思います。

 


今回ご紹介した書籍

■『完璧な母親』まさきとしか(著)、幻冬舎
■『避雷針の夏』櫛木理宇(著)、光文社
■『許されようとは思いません』芦沢央(著)、新潮社
■『転落』永嶋恵美(著)、講談社


 

やっぱり定番も外せない!
映像化もした人気イヤミス作品もぜひ。

 

ライター

飯田 萌
フリーランスのライター。一児のママ。出産前まではリクルートで結婚情報誌を担当。現在はWeb媒体にて書籍、音楽、育児など幅広く執筆中。影響を受けた作家は白石一文。趣味はスイーツを愉しむこととドラマ鑑賞。