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江戸川乱歩賞 受賞作から厳選!おすすめのミステリー小説


更新日:2019/7/26

ミステリー小説を読むと「犯人は誰?」「どんなトリックで犯行に及んだの?」とか色々と続きが気になりますよね。
あまりの面白さに寝不足になってしまう人もいるのではないでしょうか。

 

ミステリー小説を奨励するため、1954年に江戸川乱歩氏の寄付金で日本推理作家協会により作られた「江戸川乱歩賞」。

ミステリー小説の中でも江戸川乱歩賞は、ミステリー作家の登竜門と呼ばれており、60年以上続く今もミステリー作家の登竜門として広く知られています。
同賞を受賞したことで、ミステリー作家としての地位を確立した方も少なくありません。

ここでは、そんな江戸川乱歩賞を受賞したなかで、一度は読んでほしいおすすめ作品を厳選してご紹介します。

ミステリーファンだけでなく、ミステリー初心者でも楽しめる傑作ぞろいですよ!

 

西村京太郎氏の社会派ミステリー

『天使の傷痕』表紙

天使の傷痕
西村京太郎(著)、講談社

第11回(1965年)に『事件の核心』という表題で受賞した作品で、後に『天使の傷痕(こんしょう)』に改題されました。
「トラベルミステリー」の第一人者として認知度が高い西村京太郎さんですが、本書は「社会派」に分類されるミステリー小説です。

1981年に第34回日本推理作家協会賞を受賞した『終着駅殺人事件』と並び、西村さんの代表作と言えます。

 

50年以上の前の作品ですが、古さや色あせた感じはなく、奇抜なトリックに新鮮さや意外性を感じられます。

社会の矛盾や不公平を摘出する巧みな手法は見事で、日本の封建主義的な村社会という問題に切り込んだ点が、単なるミステリーではなく社会派の域に達した要因でしょう。

十津川警部の生みの親として知られる西村さんへの期待を、いい意味で裏切ってくれる社会派ミステリーです。

 

ホテルを舞台にした密室殺人事件

『高層の死角』表紙

高層の死角
森村誠一(著)、祥伝社ほか

第15回(1969年度)受賞作で、ホテルを舞台にしたミステリーを得意とする森村誠一さんの原点とも言える作品。
ホテルで発生した「二重の密室」状態にあった殺人事件を捜査する刑事の苦悩が描かれています。

トリックや事件を推理することより、捜査線に上がる容疑者のアリバイ崩しに重点を置いた本格ミステリーです。

 

本書が刊行された1969年は、日本が飛躍的に経済発展を遂げた高度経済成長時代の真っ只中。東名高速道路全通や巨大ホテル開業などが続くきらびやかな舞台で繰り広げられる事件は、その時代を知らない読者まで魅了するでしょう。

一方、犯罪の国際化・広域化や熾烈な企業間競争などは、現代のグローバル経済にマッチして、違和感なく読み進められます。
刑事の執念や使命感などの人間ドラマとともに楽しんでみてはどうでしょう。

 

芸能界を舞台にした作品

『殺意の演奏』表紙

殺意の演奏
大谷羊太郎(著)、講談社

第16回(1970年)受賞作。大学時代にミュージシャンとしてプロデビューした後、芸能人のマネージャーを務めた異色の経歴を持つ大谷羊太郎さんが描いた芸能界を舞台にしたミステリーです。
受賞時の表題は『あざなえる縄』でしたが、改題されています。

 

大谷さんは本書で乱歩賞を受賞する前に、乱歩賞候補に3回選ばれています。その中の小説『死を運ぶギター』が劇中小説として登場するのが非常にユニークです。
また、心理的サスペンスに連想結合記憶術を絡めた世界設定も独創的です。

一般的なミステリーのように殺人事件が起きるのではなく、10年前の自殺に疑問を持った故人の弟が事件を再調査していくストーリー展開。
戦後の日本の音楽史に関する説明がやや長いのですが、興味がある方は楽しく読み進められるでしょう。

 

スリリングな歴史ミステリー

『猿丸幻視行』表紙

猿丸幻視行
井沢元彦(著)、講談社

第26回(1980年)受賞作で、怪死事件を究明する歴史ミステリーです。
舞台は1900年代初頭。実在する民俗学者の折口信夫さんが、猿丸額といろは歌に隠された秘密を解き明かしていきます。

歴史を根本からひっくり返すような謎や、膨大なうんちくが語られる点は、世界的にも有名な『ダ・ヴィンチ・コード』に通ずるものがあります。

 

事件の舞台は明治時代の終盤です。猿丸大夫の子孫という現代の若者が製薬会社の試薬モニターになり、その実験中に折口信夫氏とシンクロしてストーリーは展開していきます。
民俗学者の肩書きだけでなく国文学者、詩人・歌人でもあった個性あふれる折口さんを探偵役にする発想には感服しました。

『逆説の日本史』の著者でもある井沢元彦さんの世界が楽しめるおすすめの1冊です。

 

競馬ミステリーの傑作

『焦茶色のパステル』表紙

焦茶色のパステル
岡嶋二人(著)、講談社

第28回(1982年)受賞作。著者である「岡嶋二人」とは、ミステリー作家の井上泉さんと徳山諄一さんコンビのペンネーム。
初期の作品には競馬を扱う作品が多く、本書もサラブレッド育成が題材となった競馬ミステリーです。

牧場で起こる猟銃乱射に巻き込まれ、2頭のサラブレッドとともに死んだ競馬評論家の妻が主人公。夫の死に疑問を抱いた妻が事件を調べ始めたものの、怪事件の渦の中に巻き込まれていきます。

本書の主人公は、夫の仕事に興味がない競馬の素人という設定。
ですので、競走馬の血統や育成、あるいは取引などの知識がなくても、主人公へのレクチャーが読者への説明になっているので安心して読み進められます。

表題が真相を大胆に暗示しているので、それを知ったうえで物語に探りを入れながら読むと面白いですよ。

 

「死刑制度」の在り方を考えさせられる作品

『13階段』表紙

13階段
高野和明(著)

 第47回(2001年)受賞作で当時の選考委員会が満場一致で受賞を決めたことから話題になりました。

人気ミステリー作家の宮部みゆきさんが「江戸川乱歩賞の入選者選びがこのときほど簡単なことはなかった」と絶賛するほどの傑作です。
約40万部も売り上げたベストセラーでもあり、2003年に反町隆史さん主演で映画化もされています。

 

死刑制度と冤罪といった重たいテーマにもかかわらず、緻密な人物描写と緊迫したストーリー展開で一気に本の世界に引き込まれます。臨場感あふれる描写で思わず背筋がぞっとすることも。

面白いだけではなく、死刑制度の在り方について改めて考えさせられるでしょう。読み応えのある本格ミステリーを読みたい人におすすめの1冊です。

 

名門の女子高で起こる事件に迫る!

『放課後』表紙

放課後
東野圭吾(著)

 人気ミステリー作家・東野圭吾氏さんのデビュー作。

2015年の「好きな江戸川乱歩賞作品」というアンケートを行った結果、本作は1位を獲得しています。1985年に受賞して30年以上たった今でも根強い人気を誇る作品です。

 

女子高で起きた密室殺人を題材とした推理小説ですが、「この人が犯人かも?」と思う人がたくさんいるので読めば読むほど謎が深まる一方……。

最後まで犯人とトリックがわからないため、最後までドキドキしながら読めますよ。意外な結末のミステリー小説を読みたい人におすすめです。

『秘密』や『容疑者Xの献身』といった人気作しか読んだことのない人は東野圭吾さんの原点ともいえる本作を試してみてください。今の作風とは一味違って面白いですよ。

 

銀行の内部事情をリアルに描いた作品

『果つる底なき』表紙

果つる底なき
池井戸潤(著)

 『半沢直樹シリーズ』や『下町ロケット』で人気が高いベストセラー作家・池井戸潤さんのデビュー作。作者お得意の、都市銀行を舞台にしたミステリー小説です。

 

殺人事件の謎解きだけでなく、銀行の内部事情も詳しく描かれていて読み応えがあります。都市銀行での勤務経験のある筆者にしか書けない世界観といっても過言ではありません。

勧善懲悪のスカッとした読み応えの「半沢直樹シリーズ」や『下町ロケット』とは作風は異なりますが、池井戸潤さんの原点となった作品です。

池井戸潤さんのファンはもちろんのこと、ミステリー好きの人はぜひ読んでみてくださいね。

 

少年の凶悪犯罪がテーマの作品

『天使のナイフ』表紙

天使のナイフ
薬丸岳(著)

少年法と少年犯罪を題材に入念な下調べのもとに作られた読み応えたっぷりの本格ミステリー小説。

本作は、作者・薬丸岳さんが高野和明さんの『13階段』に影響を受けて「読者の心に響く作品を書きたい」という思いで手がけた力作です。

第51回(2005年)江戸川乱歩賞の予備選考の時点で審査員からの評判が高く、本選では満場一致で受賞が決まった当時の話題作でした。

 

エンターティメントとして面白いだけでなく、少年に家族を殺された主人公の悲しみや加害者家族の苦しみが丁寧に描かれています。思わず感情移入して涙ぐんでしまう人も続出したという作品です。

各所に張り巡らされた伏線が気になって読む手が止まりません。少年犯罪とテーマが重たいミステリー小説ですが、純粋に面白いといえる1冊です。

 

爆発に巻き込まれるところからすべては始まる……

『テロリストのパラソル』表紙

テロリストのパラソル
藤原伊織(著)

 『テロリストのパラソル』は史上初の江戸川乱歩賞と直木賞を受賞した作品です。

 

新宿中央公園で起きた爆発事件の真相に、たまたま現場に居合わせたアル中のバーテンダーが迫っていきます。

一般的な考えだとアル中はダメ男の代名詞ですが、藤原伊織さんの手にかかるとダメ男でもかっこよく感じてしまうことでしょう。
主人公だけでなく、脇役1人ひとりが生き生きと描かれているところが本作の魅力ではないでしょうか。

また、スピード感あふれるストーリー展開で最後まで飽きることなく一気に読み上げてしまうはず。江戸川乱歩賞と直木賞のW受賞したこの作品をぜひ一度お試しあれ。

 

本格ミステリー小説を楽しんでみて

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今回は江戸川乱歩賞の受賞作の中でも人気の高い作品を紹介しました。

どれも本格ミステリー小説の名にふさわしい読み応えのある1冊です。
ミステリーファンはもちろんのこと、ミステリー小説になじみのない人も一度読んでみてはいかがでしょうか。

読みだしたら一気に本の世界に引き込まれるかもしれませんよ。

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