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まるで映画のよう! ライブ感溢れるクライムサスペンス小説3選


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クライムサスペンスというのは、犯罪を扱ったサスペンス小説のことです。ミステリーも犯罪を扱うことが多いですが、クライムサスペンスとは少し違います。

ミステリーが犯罪を扱う場合、「すでに起きた犯罪」――すなわち「過去の事件」を外から解決する話となりますが、クライムサスペンスは、「現在進行形で起きている犯罪」の中に登場人物が身を投じている話となります。そこに違いがあるのです。

登場人物が事件の渦中にいるというその性質上、ライブ感のある作品が多いところがクライムサスペンスの特徴であり、また大きな魅力でもあります。
そのため、上質なクライムサスペンス小説を読んでいると、時に映画を見ているかのような錯覚に陥ることがあります。

そこでここでは、映画を見たような気分になる傑作クライムサスペンスを三作紹介していきます。

 

『陽気なギャングが地球を回す』 / 伊坂幸太郎

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~あらすじ~

『二人組の強盗はあまり好ましくない。二人で顔を突き合わせていれば、いずれどちらかが癇癪を起こすに決まっている。縁起も悪い――

三人組はそれに比べれば悪くはない。三本の矢。文殊の知恵。悪くはないが、最適でもない。三角形は安定しているが、逆さにするとアンバランスだ。それに三人乗りの車はあまりみかけない――

というわけで銀行強盗は四人いる。(p6)』

嘘を見抜く男、スリの青年、口のたつ男、正確な体内時計を持つ女。彼ら四人は銀行強盗。成功率100パーセントを誇っていた彼らはその日もいつものように綿密な計画を立て、強盗を成功させます。

しかしその逃走中に思わぬ誤算が。なんと彼らの車が別の強盗に襲われてしまったのです。奪ったお金も横取りされてしまい、全てがパー。そこで四人は、奪還のために動きだします。

仲間の息子に忍び寄る魔の手。現れる一つの死体。仲間の裏切り。四人組の運命は果たして――。


ギャングシリーズ第一弾!

本作は、銀行強盗四人の視点から物語は展開していきます。別々の視点から次第に明かされていく謎。やがて収束する鮮やかな構成。巧みな伏線回収などなど、本作は伊坂幸太郎さんの持ち味がこれでもかというほど詰め込まれています。

銀行強盗四人のキャラクターは魅力的で、彼らの何気ない掛け合いすらも楽しく、読んでいて飽きません。それに加え、時折挟まれる警句的な言葉にはつい考えさせられてしまいます。

二転三転と小気味よく転がる話はまるで上質な二時間映画のよう。コミカルでありながらハラハラドキドキの本作は軽妙洒脱の痛快クライムサスペンスです。

読後は映画を見たかのような余韻を残してくれます。

■『陽気なギャングが地球を回す』 / 伊坂幸太郎(著)、祥伝社文庫
■「陽気なギャング」シリーズ

 

『ゲームの名は誘拐』 / 東野圭吾

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~あらすじ~
自分が有能であるという強い自負心を持った広告プランナー佐久間。しかし彼の立案したプロジェクトがクライアントの重役葛城勝俊に潰されてしまいます。

葛城にほとんど逆恨みに近い感情を抱く佐久間。そんな折、佐久間の前に家出をした葛城の娘である樹里という少女が現れます。話を聞くと樹里は、葛城家に強い不信感を抱いているとのこと。

そこで佐久間と樹里は葛城から三億円もの大金を得るため、狂言誘拐を企てます。佐久間対葛城勝俊。頭のキレる両者の知恵比べがこうしてはじまります。


知恵比べの果てに待っている驚愕の結末

東野圭吾が贈るクライムサスペンス。本作の魅力は説得力のあるキャラクターにあります。

物語における天才の描写というのは難しいものがあり、場合によっては「設定は天才だけれど描写が伴っていない」という事態が起こることがあります。例えば、周囲の登場人物を頭の悪いキャラクターとして描くことで、大して頭の良さそうではないキャラを天才と担ぎあげるような……。

ただ、本作では説得力のある天才がしっかりと描かれています。佐久間と葛城。二人の思考や行動には逐一説得力があり、それが展開される心理戦と知恵比べを上質なものに仕立て上げています。さらに話の構成も見事で、終盤に想像もつかないような驚愕の真実が明らかになります。

本作は、頭のキレる人間の企みや思考法を垣間見ることのできる一作となっています。テンポのいい展開は、上質なサスペンス映画のようです。

■『ゲームの名は誘拐』 / 東野圭吾(著)、光文社文庫

 

『カラスの親指』 / 道尾秀介

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~あらすじ~
詐欺で生計を立てているタケとテツ。人生の敗北者である彼らの前にスリの少女まひろが現れます。まひろもまたタケとテツ同様社会に溶け込むことのできない、過去の傷を抱えた人間でした。

タケとテツが、生活に困窮しているまひろの世話をすることとなり、三人で新たな生活をはじめます。そこに加わるまひろの姉とその彼氏。五人になった彼らは残酷の過去と決別するために、どでかい詐欺を企てます。


心温まるハートフルストーリーWITH詐欺

二転三転とするストーリー!スピーディーな展開!意外な結末!などなど本作の大筋は上質なサスペンス小説そのものです。ただ、本作には他の魅力もあります。それは作品の根底に流れている温かな雰囲気です。

クライムサスペンスとハートフルストーリー。一見相性が悪いようにも見える二つの要素が、しかし本作では見事に調和しています。

手に汗握るようなハラハラドキドキの高揚感。胸にじーんと染みるような感動。緊張と緩和のバランスがとれた本作は、エンターテイメント小説として一級品。500ページを越える長編ですが、癖のない文体とテンポのいい展開が、最後まで飽きさせません。

■『カラスの親指』 / 道尾秀介(著)、講談社文庫

 

まとめ

クライムサスペンスとして優れた三作。ただ、各作品ともそれとは別の魅力を持っています。ユーモアあふれる『陽気なギャングが地球を回す』。心理戦が巧みな『ゲームの名は誘拐』。心温まる『カラスの親指』。

お好みに合わせて、まずは一冊手にとってみてはいかがでしょうか。

 

ライター

ツナシ
青春小説とミステリー小説が好きな20代。ライトノベルから純文学まで読みますが、浅く広くといった感じです。小説は読むのも好きですが書くのも好きです。
先日某小説新人賞を賜り、現在出版に向けて作業中。