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思春期のほろ苦さが胸を刺す…。青春ミステリー小説3選


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人間の感情は謎で満ちていますが、思春期の複雑な感情はもっと謎で満ちています。

謎だらけの思春期感情。それを読み解くことは、それだけで一つのミステリー小説となりえます。
その性質上、ミステリーと青春小説の相性は、ばっちりです。
そこでここでは、複雑な思春期感情とミステリーが融合した傑作青春ミステリーを三作紹介していきます。

思春期という誰にでもある時期とそれに伴う感情。そんな人間の普遍的な部分を描いた作品ですので、ミステリーを普段読まない人も楽しめる作品となっています。

 

『ふたりの距離の概算』 / 米澤穂信

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~あらすじ~
春になり、高校二年生になった折木奉太郎。折木の所属する古典部に、新入生である大日向友子が仮入部します。持ち前の明るさですぐに古典部に馴染んだ大日向。古典部部員の誰もが彼女は入部するだろうと考えていたところ、大日向は謎の言葉を残し、古典部を去って行きました。

一体、大日向の身に何があったのか。なぜ大日向は、入部を見送ったのか。折木は、原因を探るため、過去の出来事を思い出します。「入部受付での出来事」、「折木の誕生会」、「喫茶店の名前当て」、「大日向が古典部を去った日の会話」――。それら出来事から折木は、大日向が入部を取りやめた一つの真実に辿りつきます。


古典部シリーズ史上もっともほろ苦い青春ミステリー!

本作は、大日向友子が「なぜ(ホワイ)古典部を去っていったのか?」という点を読み解く「ホワイダニット(動機当て)」ミステリーです。

話の主軸は「大日向退部の謎」。ただ本作には、そのほかにもいくつかの謎が用意されていて、連作短編集となっています。米澤穂信さんらしく、そのどれもが質の高い日常の謎から構成されています。そしてそれらを解き明かしていった時に、見えてくる大日向退部の謎。

詳しく書いてしまうとネタばれになってしまうので伏せますが、大日向が入部しなかった理由には、「複雑な思春期感情と複雑な人間関係」が強く関わってきます。

真相が明らかになった時、迎えるほろ苦い結末。思春期の複雑な気持ちを精緻な筆致で描いた傑作です。

■『ふたりの距離の概算』 / 米澤穂信(著)、角川文庫
■「古典部」シリーズ

 

『同級生』 / 東野圭吾

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~あらすじ~
物語の語り部である「俺」こと修文館高校三年の西原壮一。ある日、西原の同級生である宮前由希子が交通事故死します。そして同時に彼女が西原の子供を身ごもっていたことが発覚。西原は、自分がその子供の父親であることを認め、周囲にその事実を告白します。それから懺悔のため、謎の残る宮前由希子の交通事故死を捜査していきます。すると彼女の事故死に一人の女教師が関わっていることが見えてきます。ただ、その直後にその女教師が教室で絞殺死体として発見されます。

一体なぜ女教師は死ななければならなかったのか。

全ての事件が一つに繋がった時、はじめて見えてくるあらゆる感情。そして物語はほろ苦く、どこかやるせない結末を迎えることになります。


高校生や大人の様々な感情が渦巻くほろ苦い青春ミステリー

本作は、「圧倒的な読みやすさ」、「トリック」、「謎が謎を呼ぶ構成」、「意外な真相」などなどエンターテイメントとしてあらゆる魅力が詰まっています。ただそれら以上に際立っているのが、主人公西原壮一の複雑な心情です。

宮前由希子が子供を身ごもっていることを知った西原は、罪悪感にさいなまれ、心の中で葛藤しつづけます。それというのも、そもそも西原は宮前に気持ちがありませんでした。それでも宮前と関係を持ってしまったのは、その時西原があらゆる悩みを抱えていたからです。そして悩みから生じる不満やストレスをつい宮前由希子にぶつけてしまったのです。

西原は自分の最低な行為へ言い訳を並べ、周囲に対しては宮前があたかも恋人であったかのように告白します。

罪滅ぼしをするかのように、一連の事件の謎を追う西原。その姿は胸に刺さるものがあります。

本作は思春期の複雑すぎる感情とミステリーをかけ合わせたほろ苦い青春ミステリーとなっています。

■『同級生』 / 東野圭吾(著)、講談社文庫

 

『ボトルネック』 / 米澤穂信

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~あらすじ~
二年前、恋人の諏訪ノゾミを事故で亡くした嵯峨野リョウ。彼はノゾミを弔うため、事故現場である東尋坊を訪れます。そしてそこから引き返そうとしたその時――、彼もまたノゾミ同様、東尋坊の崖から転落してしまいます。

その後、リョウは、自分が住んでいる街で目を覚まします。腑に落ちないものを感じながら、自宅に戻ると、そこにいたのは産まれてこなかったはずの姉、嵯峨野サキ。そしてサキと話していく中で、この世界は「嵯峨野リョウが存在していないパラレルワールド」であることがわかります。

自分がいた世界と自分のいない世界。それら二つの間違い探しをしていくと、亡くなったはずの諏訪ノゾミがいることがわかり――。


息が止まってしまうような苦すぎる結末

本作は上述した「ふたりの距離の概算」と同じ作者米澤穂信が描く青春ミステリーです。「また米澤穂信?」と思う方もいるかもしれませんが、これは決して著者が米澤穂信しか知らないからということではありません。いや、本当に!

現在の青春ミステリーの旗手ともいえる米澤穂信。青春ミステリーの傑作を語るうえで、彼の作品を置いて語ることはできないのです。

ともあれ本作ボトルネック。

これは、青春×ミステリーにさらにSFの要素を足した作品となっています。自分がいた世界と自分のいない世界。それらを照らし合わせることで、次第に浮き彫りになってくる諏訪ノゾミの死の真相。

やがてとある事実を悟ったとき、リョウは元の世界に戻ってきます。そして迎えるあまりに苦い結末。絶望的な気持ちにさせられるその結末は、読後に強い衝撃を残してくれます。

■『ボトルネック』 / 米澤穂信(著)、新潮文庫

 

まとめ

ほろ苦い結末が用意されている三作。しかし、そのどれもがエンターテイメントとして素晴らしい出来となっています。

胸を締め付けるような感動がほしい方に特にお勧めです。

 

ライター

ツナシ
青春小説とミステリー小説が好きな20代。ライトノベルから純文学まで読みますが、浅く広くといった感じです。小説は読むのも好きですが書くのも好きです。
先日某小説新人賞を賜り、現在出版に向けて作業中。