おすすめ青春ミステリー小説|思春期のほろ苦さ、甘酸っぱさを
更新日:2019/8/15
ミステリー小説のなかでも、思春期独特のほろ苦さや甘酸っぱさが詰まった青春ミステリー。
この時期独特のさまざまな思惑や感情が絡み合い、ドキドキの展開を楽しむことができます。
ここでは、おすすめしたい青春ミステリー小説をご紹介します。ミステリー初心者にもおすすめですよ。
青春ミステリー小説1
『ふたりの距離の概算』
『ふたりの距離の概算』
米澤穂信(著)、角川書店
高校2年生の折木が所属する古典部に、新入生の大日向友子が仮入部する。
持ち前の明るさですぐに古典部に馴染んだ大日向。古典部部員の誰もが彼女は入部すると考えていたが、大日向は謎の言葉を残し去ってしまう。
一体、大日向の身に何があったのか。なぜ入部を見送ったのか――。
「古典部シリーズ」史上最もほろ苦い
本作は、大日向友子が「なぜ(ホワイ)古典部を去っていったのか?」を読み解くホワイダニットミステリーです。
話の主軸は「大日向退部の謎」。ただ本作には他にも謎が用意されていて、それが連作短編集となっています。
真相が明らかになったときに迎えるほろ苦い結末。思春期の複雑な気持ちを精緻な筆致で描いた傑作です。
青春ミステリー小説2
『同級生』
『同級生』
東野圭吾(著)、講談社
ある日、宮前由希子が交通事故で亡くなってしまう。なんと彼女のお腹には、新しい命も宿っていた。
「俺」こと修文館高校3年の西原壮一は、自分がその子供の父親であることを認め、周囲にその事実を告白。それから懺悔のため、多くの謎が残る由希子の交通事故死について捜査することに――。
高校生や大人のさまざまな感情が渦巻く
「圧倒的な読みやすさ」「トリック」「謎が謎を呼ぶ構成」「意外な真相」など、エンターテイメントとしてあらゆる魅力が詰まった作品。
そしてそれら以上に際立っているのが、西原壮一の複雑な心情です。
由希子が子供を身ごもっていることを知った西原は、罪悪感にさいなまれ、心の中で葛藤しつづけます。罪滅ぼしをするかのように、一連の事件の謎を追う西原。その姿は胸に刺さるものがあります。
思春期の複雑すぎる感情とミステリーをかけ合わせた青春ミステリーです。
青春ミステリー小説3
『ボトルネック』
『ボトルネック』
米澤穂信(著)、新潮社
2年前、恋人の諏訪ノゾミを事故で亡くした嵯峨野リョウ。彼はノゾミを弔うため、事故現場である東尋坊を訪れた。
そしてそこから引き返そうとしたその時――、彼もまたノゾミ同様、東尋坊の崖から転落してしまう。
その後目を覚ましたリョウは、違和感を覚える。なんとそこは、「嵯峨野リョウが存在しないパラレルワールド」だった――。
息がつまる苦々しい結末
本作『ボトルネック』は、青春×ミステリーにさらにSFの要素を足した作品です。
自分がいた世界と自分のいない世界。それらを照らし合わせることで、次第に浮き彫りになってくる諏訪ノゾミの死の真相。
やがてとある事実を悟ったとき、リョウは元の世界に戻ってきます。
そして迎えるあまりに苦い結末。絶望的な気持ちにさせられるその結末は、読後に強い衝撃を残してくれます。
青春ミステリー小説4
『窓の外は向日葵の畑』
『窓の外は向日葵の畑』
樋口有介(著)、文藝春秋
刑事の父親と2人で暮らす高校2年生の樹(しげる)には、2年前に交通事故で亡くなった幼馴染の真夏が見える。
ある夏休みの日、所属する江戸文化研究会の部長である明日奈が突如失踪してしまう。彼女は品行方正で、とても家出など考えられない。果たして彼女はどこへ消えたのか――。
少女の失踪を、父とともに追う
物語の視点は、シゲルの視点と、元刑事でミステリー作家を志すシゲルの父で交互に行き来します。2人の視点が行き来することで、物語を外側からまるで探偵のように推理する楽しさが味わえますよ。
また、シゲルがある出会いによって、幼馴染の死から徐々に解放されていくさまも物語のスパイス。
当初は特段心配する必要もないだろうと思われた失踪事件の余波は思わぬ形で広がり、その後の事件の真相までの構成が秀逸です。
悲しくもあり、謎解き解決のスッキリ感もあり、読後も感傷に浸れる作品です。
青春ミステリー小説5
『コンビニなしでは生きられない』
『コンビニなしでは生きられない』
秋保水菓(著)、講談社
“ソンロー”と呼ばれ、コンビニで働くフリーターの白秋。
周囲になじめず大学を中退した白秋は、両親はもちろん、兄さえ何も言ってこないことに少しの不安といらだちを感じていた。
大学中退から3年たった頃、新人研修を任された白秋。
新人としてやってきたのは、白秋の母校に通っている、やけに礼儀正しい高校2年生の深咲だった――。
すべてのミステリーはつながっている!?
ほのぼのとしたコンビニの物語を想像したのなら大間違い。
新人の深咲がやってきたその日から、コンビニにやってくるおかしな客、収束しない店内での盗難など、白秋はさまざまな事件に遭遇します。
そして、数ヶ月前に自殺した元コンビニクルーの鈴木大の謎。鈴木が残したプリントによって、衝撃の真相が明らかになります。
全てのピースが揃ったとき、すべてのことに意味があったのだと感じる渾身の青春ミステリーです。
青春ミステリー小説6
『分かれ道ノストラダムス』
『分かれ道ノストラダムス』
深緑野分(著)、双葉社
1999年6月、ちょうど2年前に中学生だった基は、急性心不全で突然この世を旅立った。
今日は基の3回忌。帰り際、基と仲良くしていたあさぎは、基の祖母から4冊の日記を受け取る。しかしその日記には、死んだはずの彼の両親のことが書かれており、あさぎは不思議に思う。
クラスメイトの八女とともに、基の死の真相に迫っていくが――。
選択肢と分岐点がカギとなる物語
本書は、ノストラダムスの大予言で世界が終わりを迎えると騒がれた1999年が舞台です。
新興宗教なども社会問題になった時代。そんな混沌とした雰囲気を取り入れたながらも、古くささを感じさせません。
基が死なずに死んだかもしれない。その可能性を探るあさぎと八女の住む町では、謎の新興宗教団体が怪しい動きをしていました。
そして思いがけず彼らがまじわったとき、大きな事件の存在が浮き彫りになります。
目を離せない展開としっかり読み応えのある作品です。
青春ミステリー小説7
『夏休みの拡大図』
『夏休みの拡大図』
小島達矢(編)、双葉社
大学生の百合香は、親友であるちとせの引越し作業を手伝っていた。
作業をしながら、学校で起こったさまざまな謎のことを思い出していた百合香。その謎をちとせが鮮やかに解き明かし――。
あの青春の1ページは明らかになるのか
日常で起こった謎を回想しながら、思い出とともに解いていく青春ミステリー。若さ、恋、友情など、なんとも甘酸っぱくちょっぴり切ない雰囲気を楽しめます。
百合香が疑問に思ってきたたくさんの謎を、華麗に解いていくちとせ。その洞察力と観察力には感服しました。些細な謎のなかには、複雑な想いや事情、すれ違い、秘密があるのです。
さまざまな経験をした大人になった今こそ、読んでおきたい1冊です。
青春ミステリー小説8
『ダンデライオン』
『ダンデライオン』
中田永一(著)、小学館
病院で目覚めた下野蓮司は、大人になっていた。本来であれば11歳。20年もの月日が経っていたのだ。
そこに現れた恋人だと言う西園小春は、大人の蓮司と子供の蓮司が1日だけ入れ替わったと話すのだった――。
入れ替わった11歳と31歳のぼく
たった1日、11歳と31歳の蓮司の意識が入れ替わるストーリー。
一見タイムリープもののSF作品のような印象を受けますが、読み進めると11歳になった大人の蓮司は、人を助けるため、ある真実を探るために奔走していることが分かります。
果たして過去の自分と入れ替わった蓮司は、その1日をどう過ごし、未来を変えるのでしょうか?
ほろ苦くも甘酸っぱい青春ミステリー
どの作品もエンターテイメントとして素晴らしい出来となっています。
青春ミステリーを読んで、当時のことを思い出してみてはいかがでしょうか。
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