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ミステリー初心者におすすめ! 珠玉の短編・中編小説3選


上質な謎に意外な真相。そこに膝を打つようなトリックを加え、隙のない論理的な帰結があれば、傑作ミステリー小説と言っても過言ではありません。

ただミステリー小説はそういった性質上、矛盾を作らないための手続き的な捜査があったり、伏線をはるためだけの退屈なエピソードが描かれることも少なくありません。

そういったエピソードも推理をしながら読む人であれば「これは、真相のための伏線だな。覚えておこう」と楽しむことができると思います。「そこがミステリー小説の醍醐味だ!」と思う方も多いでしょう。

 

しかしながら、純粋に物語を楽しみたい人やミステリー小説をあまり読まない人にとっては、そういった部分が退屈に映ってしまうかもしれません。

短編・中編ミステリーは、分量が少ないため次々に話が展開していき、テンポのいい作品が多いというのが特徴です。
ですからまずは長編よりも短編・中編ミステリー!

ということでここでは、ミステリー初心者も楽しめる短編・中編が収録されている珠玉の作品集を三作紹介していきます。

 

悪趣味で残酷な高校生を描いた暗黒青春ミステリー

GOTH
乙一(著)、角川書店

「人を殺す人間が、確かに存在している。どんな理由もなく、殺したくなるのだ。(僕の章132ページ)」

「あるときふと、殺さずにはいられなくなる。社会的な生活から離れて、狩りへ赴く。僕もそのうちの一人だ。(僕の章132ページ)」

「猟奇殺人鬼の手記」、「人の手首を求める教諭」、「死ぬ前の少女の声を記録する僕」など現実にある暗い部分を描いた六つの物語。
自分が殺す側の人間だと自覚する主人公の「僕」。一方、殺される側の森野夜。彼らはどこに向かっているのか。彼らが行きつくところは果たして――。

 

本作は、本格ミステリ大賞受賞作です。文庫本では「僕の章」と「夜の章」に分冊されていて、二冊合わせて六話が収録されています。

どの収録作にも必ず意外な結末やどんでん返しが用意されていて、話の構成はまるで本格ミステリーのお手本のようです。さらにグロテスクな話と著者の高い筆力が相まって、どこか幻想的な雰囲気が漂っています。

次々と展開する話。魅力的なキャラクター。意外な結末。これらを備えた本作は、ミステリー初心者に自信を持っておすすめできる作品です。

 

人が死なないミステリー!

『遠まわりする雛』

遠まわりする雛
米澤穂信(著)、角川書店

神山高校の古典部に所属する折木奉太郎。

「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければならないことなら手短に(9ページ)」という信条を掲げる折木は、体を動かすより先に頭で考える「省エネ」少年。
そんな彼の前に持ち込まれる七つの謎。「幽霊の正体」、「消えるチョコレート」、「放送の何気ない一言から導かれる意外な真実」、彼は極力動かずその謎を解決していきます。

 

本作は古典部シリーズ第四弾でシリーズ初の短編集となります。シリーズ作品である本作ですが、この巻から読んでも楽しめる造りです。

収録作は七編の短編。それらはどれも魅力的ですが、一つだけあげろと言われて思いつくのは四つ目に収録された「心あたりあるものは」です。放課後に何気なく流れてくる「生徒呼び出し」の放送。その何気ない放送の裏にどんな事実が隠されているのか。この話はミステリー小説の名作「9マイルは遠すぎる」のオマージュであり、非常に完成度の高い作品となっています。

瑞々しい筆致で描かれる青春ミステリーである本作は、謎だけでなく思春期感情という誰にでもある普遍的な心情を描いているため、ミステリー初心者でも物語に入っていきやすいのが特徴です。

「古典部」シリーズ

 

本格ミステリーを知りたい人にお勧め!

『名探偵の掟』

名探偵の掟
東野圭吾(著)、講談社

主人公の自称名探偵・天下一大五郎と天下一の補佐でへっぽこ警部の大河原番三の前に現れる13の事件。
二人はそれを解決していき――とここまで見るとオーソドックスなミステリー小説。しかし、本作には普通とは違う点があります。
それはこの二人が「自分たちが物語の登場人物であることを自覚している」という点。ミステリー小説のお約束を皮肉りながら事件を解決していく、コミカルな短編集です。

 

本作は天下一大五郎シリーズ第一弾。
天下一と大河原の漫才のような掛け合いは思わずくすりと笑わされます。ただ、本作の面白いところはミステリーとしてもよくできているという所です。

「密室のトリック」、「死体をバラバラにする動機」、「犯人当て」など、よくある本格ミステリーの話をしっかりと上質な短編に仕上げているのです。
さらに随所に見られる皮肉が、本格ミステリーの解説にもなっているため、ミステリー初心者に特におすすめの作品となっています。

「本格ミステリーとは一体どういうものなのか?」ということがわかる作品です。

「天下一大五郎」シリーズ

 

ミステリー初心者さんは短編・中編から読んでみよう!

上述した三作品にミステリー以外のジャンルを与えるとすれば、『GOTH』はサスペンス、『遠まわりする雛』は青春、『名探偵の掟』はユーモアといったところです。

普段ミステリーを読まない方も自分の好みに合わせて、まずは一作だけでも手にとってみてはいかがでしょうか。

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