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長い歴史の中国が舞台!歴史小説・時代小説のおすすめ6選


長い歴史の中国が舞台!歴史小説・時代小説

中国を舞台にした歴史・時代小説の魅力は、スケールが大きく奥が深いところです。

「中国四千年」の歴史が生み出した偉人・英雄の数は数え切れません。

中国の世界にとりつかれた日本の作家も多く、読み応えのある歴史小説・時代小説を多く執筆しています。

今回は、中国が舞台となった歴史小説・時代小説を6作品、長編から短編まで、フィクション・ノンフィクションとりまぜてご紹介いたします。

 

対照的な二人の戦い方を描く歴史小説
司馬遼太郎『項羽と劉邦』

『項羽と劉邦』表紙

項羽と劉邦
司馬遼太郎(著)、新潮社

「項羽と劉邦」は、紀元前3世紀末、秦の始皇帝死後の戦乱期を戦い抜いた項羽と劉邦を描く歴史小説です。

項羽は楚(長江沿岸を中心とした地域)の将軍を代々務めた名家の出身。秦の始皇帝の死後、項羽は叔父とともに挙兵し、叔父の死後は楚軍の頭目となり、反乱軍を指揮して秦を倒します。

一方、もう一人の主人公である劉邦は、ごろつきの親分のような生活を送っていましたが、始皇帝死後の混乱期に、沛(現在の徐州市)のまとめ役・沛公として担がれます。

このように物語の最初の頃には兵力に月とスッポンほどの違いがあった項羽と劉邦。しかし、連戦連勝だった項羽は、奸計・奇計を使った劉邦に追い詰められます。

この7~8年間に起きた二人の対照的な戦い方をじっくりと描き出します。

 

三国志玄人向けの大胆解釈
陳舜臣『秘本三国志』

『秘本三国志』表紙

秘本三国志
陳舜臣(著)、中央公論新社

日本で人気の三国志。有名な吉川英治氏の「三国志」が伝統的な三国志像とすると、陳舜臣氏の「秘本三国志」は、陳氏の大胆な解釈のもとに書かれた三国志です。

本作品は、後漢末に漢中(現在の陝西省漢中市辺り)で勢力を持った宗教集団「五斗米道」の使者の視点から見た物語になっています。
なかでも、曹操が台頭し始めたきっかけは、青州黄巾軍30万を手中に収めたことであり、曹操と青州黄巾軍の仲介をしたのが五斗米道だったという陳氏の解釈には驚かされます。

そのほか、意外な英雄同士が密約を結んで八百長戦を演じるなど、従来の三国志像になじんだ読者には「目から鱗が落ちる」作品です。

そのため、三国志ビギナーではなく、従来の三国志像を書いた「三国志」を読んでから、本作品にトライすることをおすすめします。

 

古代中国の歴史小説を専門とする作者の三国志
宮城谷昌光『三国志』

『三国志』表紙

三国志
宮城谷昌光(著)、 文藝春秋

続いての三国志作品は、古代中国の歴史上の人物を描いた歴史小説を多く執筆している宮城谷昌光氏の「三国志」。

多くの作家がそれぞれの解釈にもとづいた「三国志」を執筆しているなか、宮城谷版「三国志」は正史「三国志」をもとに書かれています。

多くの三国志が黄巾の乱(184年)頃から書かれるのに対し、宮城谷版「三国志」は、後漢の中期、第6代安帝の時代から書き起こされています。
この頃から始まる外戚政治・宦官政治がわからないと、その後起こる外戚・宦官の専横や董卓の台頭という時代背景がわかりにくいのですね。

内部から腐っていく後漢皇室が書かれ、話が進むにつれて董卓、袁紹、曹操、劉備などの三国志の定番メンバーが登場してきます。

宮城谷版「三国志」は英雄たちの物語ではなく、時代を描いた作品なのです。

 

中国の伝奇小説を解説つきでご紹介
陳舜臣『ものがたり唐代伝奇』

『ものがたり唐代伝奇』表紙

ものがたり唐代伝奇
陳舜臣(著)、中央公論新社

伝奇小説とは、唐代頃から書かれるようになった、神仙、幽霊などが出てくる不思議な話を扱った短編小説です。

この「ものがたり唐代伝奇」には17編の伝奇小説が、陳舜臣氏の解説つきで紹介されています。

有名なものでは芥川龍之介の短編小説「杜子春」のもととなった「杜子春伝」。
陳氏は芥川版「杜子春」と原作「杜子春伝」の違いを比較しながら話を進めます。また「邯鄲の枕」という言葉のもとになった「枕中記」(枕を借りて昼寝をしている間に人生の栄枯盛衰を見てしまい、人生は夢のようにはかないものと悟る話)なども登場。

そのほか、玄宗皇帝と楊貴妃の物語「長恨歌伝」や、不思議な縁で結ばれた人間界と異界の男女など、いろいろな人間(異界?)ドラマが出てきます。

中国の伝奇小説を紹介する作品がほとんどないなか、本作品は貴重です。

 

虎になってしまった男を描く伝奇小説
中島敦『山月記』

『山月記』表紙

山月記
中島敦(著)、 新潮社

夭折した中島敦氏のデビュー作。
「山月記」も中国の伝奇小説のひとつ「人虎伝」をもとに書かれた短編小説です。

唐の時代、李徴(りちょう)は、若くして科挙試験に合格するほどの秀才でした。大変な自信家で官吏に甘んずることができなかった李徴は、官吏を辞め詩人として名を成そうとしますが、生活に困窮して挫折。地方官吏の職につき、昔馬鹿にしていたかつての同輩の下命を受けて働くうちに発狂し、行方知れずとなりました。

その後、李徴の旧友・袁傪(えんさん)は、旅の途上で人喰い虎に襲われます。何とその虎こそ李徴の成れの果て。袁傪に気がついた虎は茂みに隠れ、袁傪に身の上を語ります。

中島版「山月記」は格調高い作品に昇華されていますが、もとの「人虎伝」の李徴は俗っぽい人物です。読み比べるとおもしろいかもしれません。

 

唐に渡った留学僧たちの運命とは……
井上靖『天平の甍』

『天平の甍』表紙

天平の甍
井上靖(著)、新潮社

717年(天平5年)、遣唐使として唐に渡った留学僧たちの運命を描く歴史小説です。

主人公の普照(ふしょう)は、栄叡(ようえい)とともに、高僧を日本に招くという使命を受け唐に渡ります。彼らはいろいろな留学僧に出会います。

「唐は大きい。唐土すべてを見て廻りたい」と留学僧の身分を捨て放浪の旅に出てしまう留学僧。ホームシックにかかって出奔し、唐の女性と世帯を持ち、唐の人となる留学僧。写経に専念する年月を送り、経典をできるだけ多く日本に持ち帰ることを己の使命と信じる留学僧。

「高僧を日本に招く」使命に邁進する栄叡に引きずられるようについていく普照でしたが、鑑真に出会い鑑真が渡日を承諾したことから、鑑真の渡日に全力を尽くすのですが……。

運命に翻弄される留学僧たちが丹念に描かれています。

 

長い中国の歴史には小説となるできごとがたくさん

万里の長城

ほかにも、中国を舞台にした歴史小説・時代小説は、たくさんあります。

秦が中国を統一するまでの春秋戦国時代を題材とした作品、有名な三国志時代を書いた作品、華やかな唐の時代を書いた作品などいろいろです。

まずは興味のある時代から読んでみましょう。

 

今回ご紹介した書籍

項羽と劉邦
司馬遼太郎(著)、新潮社
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秘本三国志
陳舜臣(著)、中央公論新社
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三国志
宮城谷昌光(著)、 文藝春秋

ものがたり唐代伝奇
陳舜臣(著)、中央公論新社
「ものがたりシリーズ(文庫版)」オトナ買い

山月記
中島敦(著)、 新潮社

天平の甍
井上靖(著)、新潮社

 

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