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江戸情緒たっぷり! 宮部みゆきの時代小説短編集


ミステリーやホラー作品などで人気作を多数持つ、宮部みゆきさん。骨太な長編推理小説が特に人気ですが、江戸時代を舞台とした人情ものや捕物帖にも名作が多数あります。

今回は、宮部みゆきさんの時代小説の中でも、特に江戸情緒の感じられる短編集を5冊ご紹介します。

 

食べ物の描写も美味しそうな、江戸捕物帖
初ものがたり

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初ものがたり
新潮文庫

本所深川を仕切る岡っ引きの親分・回向院の茂七を主人公にした江戸捕物帖。江戸の「初もの」がからんだ事件を解決していく短編集です。

ある日、茂七のもとに彼の下っ引きの一人、糸吉がやってきて、奇妙な屋台の話を聞かせます。稲荷寿司の屋台で、なんでも丑三つどきまで店を開けているとか。その稲荷寿司屋の親父は、武家あがりのようでありながらも、その正体は謎に包まれています。

下っ引きの糸吉や権三たちとともに颯爽と事件を解決していく茂七。親父の店に足しげく通い、親父との会話に事件解決のヒントを見つけるところも良いのですが、なんといっても江戸の食べ物についての描写がとても美味しそう!

江戸時代好きにはぜひおすすめしたい捕物帖です。

 

しんみりとした人情、不思議な余韻が残ります
本所深川ふしぎ草紙

本所深川ふしぎ草紙
新潮文庫

本所深川に伝わる「深川七不思議」がテーマ。七不思議にまつわる奇怪な事件を、岡っ引きの「回向院の茂七親分」が解決へ導きます。

近江屋の主人・藤兵衛が殺され、娘のお美津が疑われていると知った彦次。お美津に恩のある彦次は、「お美津はそんな人ではない」と主張しますが……。2人の過去の真相が描かれる『片葉の芦』。奉公人のおりんが、お嬢さんに命じられて恋の願かけに向かう道中、こっそりと尾けてくる提灯。その正体を切なく描く『送り提灯』など、男女の心のすれ違いや、しんみりとした人情を、怪談になぞらえながら描いています。

少し切なく、もの悲しいような、ふしぎな余韻の残る短編集です。

 

江戸の日常の謎を描く短編集
堪忍箱

堪忍箱
新潮文庫

江戸時代を舞台に、庶民の日常に潜むの小さな秘密や事件を描く短編集です。

表題作の「堪忍箱」は、近江屋という菓子問屋に代々伝わる、開けてはいけない箱「堪忍箱」にまつわる物語。

その他に、畳屋の男が料亭の坊ちゃんに「かどわかしをでっちあげ、百両をとっちまおう」と誘われる『かどわかし』、板前の加助が、用心棒に雇った侍とともに人殺し事件に巻き込まれる『敵持ち』、ゆきと藤太郎兄妹のもとに、2人を捨てたはずの母が迎えにやってくる『お墓の下まで』など、8篇の物語が収録されています。

どの話もごく短い作品ながら、不気味さや恐怖、切なさや人情を感じることができる物語です。短編でもしっかりと読ませるストーリーテリングの巧さは、「さすが宮部みゆき」と感じさせてくれます。

 

江戸の季節も楽しめる一冊
幻色江戸ごよみ

幻色江戸ごよみ
新潮文庫

12ヶ月それぞれの季節をテーマにした12の物語を集めた短編集。江戸の庶民の人情を、怪談や怨霊などのホラー要素も交えながら描きます。

最初の短編は、師走の二十八日に起こった小火をめぐる『鬼子母火』。おとよが奉公する酒問屋の伊丹屋は、神棚から出火するという小火を起こします。番頭は、小火の原因は呪いのかかった注連縄から発した鬼火だといいます。

続く『紅の玉』は、病気の妻のため、とある侍から紅珊瑚のかんざしを作る仕事を請け負った、飾り職人の佐吉の話。実はその侍にはある目的があり……。つつましい生活を送る夫婦を襲う理不尽を描きます。

祟りや怨み、仇討ちなど、人情の中にひそむ闇を、怪談と絡めて仕立てたストーリー。やりきれなさの中にも温かみがあり、江戸の季節感を感じることのできる一冊です。

 

宮部みゆきの原点ともいえる時代小説短編集
かまいたち

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かまいたち
新潮文庫

宮部みゆきの初期の短編を集めた作品で、収録作はデビュー前のものなのだとか。

表題作の『かまいたち』は、江戸の市中を騒がせている残忍な辻斬り・「かまいたち」の正体を追うサスペンス。父の帰りが遅いことを心配した様子を見に出たおようは、「かまいたち」の犯行現場を目撃してしまいます。

後半の2つの作品『迷い鳩』と『騒ぐ刀』は、超能力を持った少女・お初が主人公。殺人事件や、妖刀の謎を、超能力を使って解決していく捕物帖で、「霊験お初捕物控」シリーズの原型ともいえる作品です。

江戸の町人たちを活き活きと描き、小気味良いテンポで進んでいくストーリーにドキドキしながら読み進めることができます。

 

いきいきと描かれる江戸の町

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宮部みゆきさんの時代ものは、どれもみんな個性あふれる登場人物や江戸の町人文化がいきいきと描かれ、まるで江戸時代にまぎれこんでしまったかのように感じさせてくれます。

江戸の人情話がお好きな方はもちろん、捕物帖、ホラー、ミステリーが好きな方にもおすすめ。ほんのりとした余韻の残る読後感は、現代社会に疲れた心を癒してくれることでしょう。

 

以下では、ミステリー小説をはじめ、時代小説やSF、ホラー、ジュブナイルまで幅広く執筆している宮部みゆきさんの作品をまとめています。まだ見たことのない宮部作品に出会えるかもしれません…!

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ライター

ラッテ
3度の飯より本が好き。興味のおもむくままに、いろいろな分野の本を読んでいます。特によく読むジャンルは、IT、美術、語学、旅行、インテリア、漫画など。本好きが高じて、書店員をしていたこともあります。