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話題のエッセイ『九十歳。何がめでたい』がとにかく面白いんです


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黒柳徹子さん、瀬戸内寂聴さん、冨士眞奈美さん、安藤優子さん、辻村深月さんも、みなさん笑って泣いて大絶賛。

御年九十二歳、もはや満身創痍。愛子センセイが放つ「いちいちうるせえ」ほか怒りの書

これは、今回ご紹介する佐藤愛子さんの『九十歳。何がめでたい』(小学館)に付いている帯の文章です。

私はこの帯に惹かれ本書を手に取ったのですが、冒頭を読むだけで声を出して大笑いしてしまい、このままここで読んでいると危ないぞ…とそそくさと購入して帰宅したほど、面白い作品でした。

 

卒寿?ナニがめでてえ!

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「佐藤さん、お幾つになられました?」と訊かれて答えようとすると、

「えーと…90歳と5ヶ月…?いや6ヶ月かしら…つまり11月生まれだから、11、12、1、2、3…ところで今は何月?」

とボケかけている脳ミソを絞らなければならない。これからお嫁に行くとか、子供を産む人には年は大切かもしれないが、今となっては91でも2でも3でもどうだっていいよ!と妙なところでヤケクソ気味になるのである。(p13)

「90といえば卒寿というんですか。まあ!(感きわまった感嘆詞)おめでとうございます。白寿を目ざしてどうか頑張って下さいませ」

満面の笑みと共にそんな挨拶をされると、「はあ…有難うございます….」

これも浮世の義理。と思ってそう答えはするけれど内心は、「卒寿?ナニがめでてえ!」と思っている。(p13)

……。
この部分を読んで、笑いと同時に絶句してしまった読者は少なくないのでは?

というのも、日本では、長生きはめでたいことだという風潮があります。
私自身、長生き万歳!年老いた家族の誕生祝いは欠かさない……そんなタイプなので、「ナニがめでてえ!」の一言は衝撃的でした。

九十を過ぎた佐藤さんのこの言葉遣いにも驚きましたが(笑)案外、私も年老いたらこういう気持ちになるのかもしれないな…と勉強になる部分も。

無意識のうちに「長生きを讃えるとお年寄りは喜んでくれる」と思っていた自分に、反省するのでした。

 

ばっさり斬る姿にスッキリ&共感!

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作者の佐藤愛子さんが「ヤケクソがこもっている作品」とコメントを残しているように、とにかく痛快なこの作品。緩急織り交ぜた書き口が癖になり、サラサラと読めてしまうんですよね。

なんといっても、本書の最大の魅力は、佐藤さんの毒舌ぶり!
例えば、橋下徹前大阪市長と羽鳥慎一アナウンサーがタッグを組んだテレビ番組のコーナー「日本の未来を真剣に考えるトーク」についても、愛子節が冴え渡ります!

司会の羽鳥アナウンサーの指示に従って手もとのボタンを押せば、頭の上に「おかしい」「おかしくない」のパネルが上る。呆気にとられている私の目の前で、論客の問題提起が進んで行く。

「バスタオルというものはお風呂に入って綺麗な身体を拭くのだから、洗濯を毎日する必要はないのではないか」

 

これが「日本の未来を真剣に考えるトーク」だというのか!町内会の寄り合いの茶飲み話じゃないんだよ!

しかしこの発言はおそらくテレビの構成者によって考え出され、出演者は否も応もなくいわされたものであろう。発言する人たちの胸中はいかばかりか、と思いつつ、それにしてもよくもまあ、こんなに愚劣なことを考えるものだと、呆れるのを通り越して感心してしまったくらいである。

(p198-199)

そうそう!とつい膝を叩きたくなるほど、本書で取り上げられている内容は、上記を含めどれもこれも共感できるものばかり。
なかなか言い出しづらい”心にあるモヤモヤ”を代弁してくれています。

年の功で、物事の見方が鋭い佐藤さんの言葉にはドキッとさせられることもしばしば。

また、今の日本には、歳をとるのは嫌なこと、どこか若さが称えられる風潮があります。

でも、人間は必ず歳をとります。
それならば、どのように歳を重ねていくのがいいのか?

本書を読むと、その答えが自ずと見えてくることでしょう。

「年寄りの毒舌なんて興味ないよ…」そう考える若い(何歳までを若いと指すのか微妙ではありますが)読者にぜひ読んでほしいものです。

 

抱腹絶倒!佐藤愛子さんのエッセイ本はとにかく面白い

今回紹介した『九十歳。何がめでたい』以外にも、佐藤さんのエッセイ本は面白いものばかり。

何度読んでも、佐藤さんの明るさ、元気さ、知性には感嘆しっぱなしです!


◆『ああ面白かったと言って死にたい―佐藤愛子の箴言集』

<老いは人生の総仕上げである><ああ面白かったと言って死にたい><思い通りの人生は退屈である><めげずに生きようとする力>など、佐藤節の真髄がここに綴られています。


◆『佐藤愛子の役に立たない人生相談』

「濡れたタオルを放置する彼氏にイラッ!」「定年退職した夫がうっとうしい」など、若者から中高年までの相談が愉快にブッタ斬られています。タイトルに反して大変役に立つ一冊ですよ。


◆『私の遺言』

北海道に別荘を建てたことをキッカケに、異常な心霊現象に30年以上悩まされた佐藤さん。30年以上も死闘を繰り広げた実体験を綴った作品であり、読むと間違いなく人生観が変わります。


◆『わが孫育て』

特に笑いたい時にはこの一冊。佐藤さんならではの孫との接し方や、孫との攻防戦には声をあげて笑ってしまうことでしょう。

 

私は、パワーをもらいたい時には佐藤さんのエッセイを読むようにしています。佐藤さんのエッセイ本を読むと、何か辛いことがあっても、人生まだまだ長いんだからと前向きな気持ちになれるんですよね。

私もいつかお年寄りと呼ばれる年齢になったら、人生経験が豊富で知性がある佐藤さんのようになりたいものです。
佐藤さんの著書を読んだことがない方はぜひ一度手に取ってみてくださいね。
今回ご紹介した本のように、サクッと読める本は通勤・通学のお供にもピッタリですね!もっと本を探したいという方は、こちらの特集からも探してみてください。

今回ご紹介した佐藤愛子さんの本は、こちらから中古でご購入できます。

◆『九十歳。何がめでたい』(小学館)

◆『ああ面白かったと言って死にたい―佐藤愛子の箴言集』(海竜社)
◆『佐藤愛子の役に立たない人生相談』(ポプラ社)
◆『私の遺言』(新潮社)
◆『わが孫育て』(文藝春秋)

ライター

飯田 萌
フリーランスのライター。一児のママ。出産前まではリクルートで結婚情報誌を担当。現在はWeb媒体にて書籍、音楽、育児など幅広く執筆中。影響を受けた作家は白石一文。趣味はスイーツを愉しむこととドラマ鑑賞。