ミヒャエル・エンデ『モモ』あらすじと魅力|時間どろぼうの世界とは?
更新日:2019/9/19
世界中で愛される不朽の名作『モモ』。タイトルだけは知っているという方も多いのではないでしょうか。
ドイツの作家ミヒャエル・エンデが1973年に発表した本作。翌1974年には、ミヒャエル・エンデはこの作品でドイツ児童文学賞を受賞しました。
映画や舞台にもなった『モモ』。
ここではそんな『モモ』のあらすじと魅力に迫っていきます。
『モモ』あらすじ
『モモ』
ミヒャエル・エンデ(著)、岩波書店
廃墟となった円形劇場に住みついた、粗末な身なりをした少女モモ。街の人々は相談をし、モモの面倒を見ることになります。
モモに話を聞いてもらうと硬くなった心が柔らかくなり悩みが消えていく……。不思議な力を持つモモは、街の人にとってかけがえのない存在になっていくのでした。
ところがある日、街に「灰色の男たち」が現れます。
「時間を貯蓄銀行に貯めると命が倍になる」と言う彼らのせいで、町の人々から「時間」が奪われてしまい――。
「時間」がテーマのお話。
本書の副題は「時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語」。小さな女の子であるモモが、灰色の男たちに奪われた時間を取り戻そうと奮闘します。
『モモ』登場人物
モモ
とても聞き上手な少女。「モモに話を聞いてもらうと心が軽くなる」そんな不思議な能力を持っている。
ベッポ爺さん
無口でちょっと変わった、モモの親友であるおじいさん。ゆっくりと物事を考え、ゆっくり話す。
灰色の男たち
「時間貯蓄銀行」を称する集団。彼らの嘘のせいで時間を奪われた人々は、心の余裕を失ってしまう。
ジジ
モモのもう1人の親友で、観光ガイドをしている。本当かどうか分からない話をするのが得意。
マイスター・ホラ
モモを時間の国へといざなう老紳士。人間たちに時間を与える、時間を司る者。
ミヒャエル・エンデが描いた、モモと時間どろぼうの世界とは――
児童書ながら、子供はもちろん大人にも愛されている『モモ』。
いったいどんな魅力をもった作品なのでしょうか?
自分の「時間」を見直すきっかけになる
灰色の男たちに時間を奪われた人々は、その少なくなった時間をなんとか生きようと、余裕を失っていきます。これって、現実世界にも置き換えられますよね。
丁寧な仕事をする余裕、誰かとゆっくり話す余裕、日々を生きることの余裕。これらがなくなってしまったら、楽しくないですよね。
本作は、毎日を忙しく生きている現代の人々のための本と言える作品です。
ファンタジー作品としてワクワク楽しめる
現代の社会に通ずる物語なのはもちろんですが、それ以前に王道のSFファンタジーとして楽しめます。
人々の時間を取り戻すため、マイスター・ホラとともに冒険に出たモモ。果たして、時間泥棒からどのようにして時間を取り戻すのでしょうか?
物語のなかに名言多し!
作中には、さまざまな名言があります。
人間とは時間を感じとるために心というものがある。(『モモ』より)
という1節がありますが、時間に追われて人間らしさを忘れてしまったかのような現代の生き方に警鐘を鳴らしているようにも感じられます。
どんどんスピードを上げて働いても、残りの分の道路はちっとも減っていない。だからもっとすごいいきおいで働きまくる。だけどそれでは息が切れて、動けなくなってしまう。(『モモ』より)
時間は何をもたらすのか、本当の豊かさとは何か、そんなことを考えさせられますね。
子供はもちろん、大人にこそ読んでほしい名作
『モモ』は児童書なので、読むのに抵抗がある方もいるかもしれません。
しかし、時間に余裕がない、毎日があっという間に過ぎていく大人にこそ読んでほしい一冊です。
あなたも、灰色の男たちに時間を奪われていませんか? モモと一緒に、時間を取り戻しに行ってくださいね。
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今回ご紹介した書籍
『モモ』
ミヒャエル・エンデ(著)、岩波書店
『モモ』のように、大人も楽しめるファンタジー小説作品をご紹介します。大人だからこそ胸が熱くなるファンタジー……そんな1冊に出会ってみませんか?