大人が読むべきおすすめ海外児童文学
児童文学は子供が読む物語だよ、なんて思ってはいませんか?
もしそうだとしたら、それはもったいないことかもしれません。
たしかに、子供のために紡がれた物語の数々ですが、大人のみなさんが読んでも充分に楽しめる物語は意外とたくさんあります。
それに、子供の時には持っていた「大事なもの」を取り戻すきっかけにもなるかもしれません。
そこで、ここでは愉快な児童文学をご紹介していこうと思います。
そもそも児童文学ってなに?
児童文学とは、その名の通り子供のために書かれた文学です。
その歴史は18世紀のイギリスで幕を開けます。日本では、大正時代に外国の児童文学作品がどんどん輸入されるのにあわせ、日本産の児童文学が誕生しました。
児童文学は子供の成長においてかなり重要な役割を担うと考えられ、時代と共にどんどん発展してきました。
児童文学は、文学性を備えつつも子供が十分に楽しく読める作品であるということが最も大事な条件となります。
その一方で、人生を通して得るであろう教訓や経験といった意味も備えていなければなりません。
一概に、子供向けと片づけることができない深みのあるジャンルなのです。
「大人」におすすめの海外児童文学
◆「幸せ」の意味を考えさせてくれる物語◆
忙しさに追われて、「幸せ」を見落としてはいませんか?今一度、無邪気な子供時代に戻って、当たり前の中に溢れる「幸せ」の意味を考えてみませんか?
『秘密の花園』バーネット
『秘密の花園』
フランシス・ボジソン・バーネット(著)
光文社ほか
イギリス植民地時代のインドに暮らすメアリーは、両親に放置された我儘で気難しい孤独な少女。
ある日、流行した悪性のコレラにより屋敷に暮らしていた両親・使用人全員が亡くなってしまう。一人遺されたメアリーは、ニューヨークに暮らす血の繋がりのない叔父・クレイブンに引き取られる。
メアリーは世話役のマーサ、彼女の弟・ディコンと触れ合うなかで徐々に明るく元気な少女に変わっていく。そして、偶然見つけた「秘密の花園」との出会いが次々に素敵な出会いを呼び起こしていく……。
孤独だった少女の成長は、当然だと思っていたことのありがたみを教えてくれます。何気なく過ごしていると気付けないことに、ふと気づくきっかけを与えてくれるかも?
表現の美しさと共に繊細な心の動きを捉えた物語をお楽しみください。
◆「冒険」の旅へ一緒に連れて行ってくれる物語◆
「冒険」は子供の特権ではありません!大人でも本を開けば、どこへだって行くことができる。そんな風に思わせてくれる冒険小説です。ほっと一息、冒険の世界へ行ってみるのはいかがでしょうか。
『トム・ソーヤの冒険』トウェイン
『トム・ソーヤの冒険』
マーク・トウェイン(著)、新潮社ほか
遊びと悪戯の天才トム・ソーヤは今日も元気いっぱい!
相棒のハックと共に平凡になりがちの毎日を、たくさんの遊びやいたずらによって、愉快でキラキラしたものに変えていく。
海賊になってみたり、教会の説教を笑いで包んでみたり、とにかく愉快すぎる毎日。だけどあるとき、殺人事件を目撃してしまい――?
舞
台はミシシッピ川沿いの小さな田舎町ですが、そこで繰り広げられる冒険活劇はとっても壮大。
日々の生活に窮屈さを感じている人にこそお勧め! トムとハックと一緒に、ちょっと悪戯でも仕掛けてみませんか?
『不思議の国のアリス』ルイス・キャロル
『不思議の国のアリス』
ルイス・キャロル(著)、新潮社
アリスが土手で暇を持て余していると、人の言葉を話す服を着た白いウサギが目の前を横切った。
驚いたアリスが、白ウサギを追いかけていったら大きな穴にまっさかさま! 長い時間をかけて落っこちた世界は不思議の国だった――。
物語のあちらこちらに散りばめられた言葉遊びの数々は、大人が読んでも楽しさいっぱい! むしろ、大人だからこそ気付ける秘密もまだまだ眠っているかもしれません。
もう一度アリスと一緒に不思議の国へ行ってみませんか?
◆「戦争」を意識して読みたい物語◆
戦争という悲劇の中でも傑作といわれる物語は誕生してきました。とても楽しくてかわいらしい物語の数々。でもこの作品の背景には……ということを意識して読んでみるとまたちがったものが見えてくるかもしれません。
『ちいさな王子』サン=テグジュペリ
『ちいさな王子』
サン=テグジュペリ(著)、光文社
※『星の王子さま』というタイトルが有名ですが、フランス語のタイトルを直訳すると『ちいさな王子』といいます。
飛行機で不時着した「僕」が出会った不思議な男の子。彼は宇宙のいくつかの星を旅して、そして7番目の星・地球にやってきた王子さまだった。
彼が語るあらゆる星の話は、私たちが生きる現代社会のあり方を考えさせられるようなお話で……。
この作品をサン=テグジュペリが描いたのは、第二次世界大戦中に彼がアメリカに亡命していたときのことでした。また、彼は作家としての顔の他に空軍の偵察機のパイロットとしての顔も持っていました。
幾度も死地を乗り越えて描かれたこの優しい物語に込められた思いを考えながら読んでみてください。
『飛ぶ教室』ケストナー
『飛ぶ教室』
エーリッヒ・ケストナー(著)、新潮社ほか
同じ寄宿舎で暮らす、孤独なジョニー、読書家ゼバスティアン、正義感が強めのマルティン、弱虫のウーリ、いつもお腹が空いているマティアスの5人の少年たち。
クリスマス気分の数日間で起こる様々な出来事を通して、少年たちが友情を深め、成長していく涙も笑いもある物語。
ケストナーがこの作品を出版した当時のドイツは、ナチス占領下にありました。そのため、自由主義の作家の活動は制限されてしまい、とても自由に作品を発表できる状態ではありませんでした。
しかし、ケストナーはその作品の人気ゆえに児童文学のみという条件で発表を許可されていました。
こうした背景を踏まえて読んでみると、昔読んだ時とはまた違う物語が見えてくるかもしれません。
◆「自分」の経験と照らし合わせて読みたい物語◆
次にご紹介する本は、作者自身の半生を元に作られた自伝的小説になります。
物語という媒体を使ってあのときの自分に会いに行ってみるのはいかがでしょうか。引っかかっている何かがある人、必見です。
『車輪の下』ヘッセ
『車輪の下』
ヘルマン・ヘッセ(著)、光文社ほか
自然の中で遊ぶのが大好きな少年ハンスは、シュヴァルツヴァルトの町一番の秀才だった。
父親や教師、あらゆる大人や子供たちに期待を寄せられ、ハンスは神学校を目指すことに。大好きな魚釣りもウサギ小屋に通うことも我慢して頑張った甲斐あって、念願の神学校に合格するも、待ち受けていたのはとても過酷な環境で……。
ヘッセの自伝的要素も盛り込まれたこの物語は、児童文学でありながら、ちょっと子供には難易度高め。幼いころに挑戦して挫折した人も、未読の人もぜひぜひ読んでみてほしい物語です。
子供のころは理由も名前も付けられなかった複雑な感情に、答えを出してあげることがきっとできます。
ハンス少年を通して、自分が取ってきた道を再度見つめてみませんか?
まとめ
いかがでしたでしょうか。いつも手に取っている小説とはまた違った経験ができること間違いなしの作品たちです。
今までに読んだことのある作品も、まだ読んだことのない作品もぜひぜひ読んでみてください。懐かしい体験も新発見も、きっとできるはずです。
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