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『地下の国のアリス』は『不思議の国のアリス』とどんな関係?ルイス・キャロルと『アリス』の物語に迫る!


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1865年に発表されて以来、世界中で愛される物語『不思議の国のアリス』。かわいいアリスの冒険の物語は、「不思議の国」と「鏡の国」だけじゃなかった!?作者・ルイス・キャロルに迫るとともに、実は知られていないアリスの物語をご紹介します。

 

ルイス・キャロルという人物

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本名は、チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン。11人兄弟の4番目として、イギリスにて1832年に生を受けました。彼の職業は、作家・詩人であったのとはべつに、数学者であり、論理学者であり、写真家でもありました。

■ルイス・キャロルはペンネーム

ルイス・キャロルという名は、作家として活動する際に用いたペンネームです。このペンネームは、チャールズ・ラトウィッジ(Charles Lutwidge)を対応するラテン語に変換する。それを再び英語に戻してアルファベットを入れ替えたものだそうです。

■吃音障害を抱えていた……?

キャロルは、重度の吃音障害を抱えており終生それに随分と悩まされたようです。吃音障害を抱えていたのは彼だけではなく、彼を含めた11人の兄弟全員が(重度はそれぞれであったが)吃音障害を抱えていました。そのため、幼いころは家族間の会話を筆談で行っていたそうです。

また、彼は子供好きとも知られています。その理由は子供と会話するときにはスムーズに話すことができたから、などともいわれていますが、どうやらこの説には根拠はなく、純粋に子供と関わるということが好きな人だったようです。

■聴覚優位の人だった

局所優位というものはご存知でしょうか。主に、視覚優位・聴覚優位・体感各優位の3タイプに分けられ、それぞれが自分の優位なものを中心に物事を捉えていると考えられています。

キャロルがそうであったといわれる聴覚優位について整理してみましょう。

聴覚優位の人は、その名が示すように物事を「聴く」ということに重点を置いて捉えるようです。耳で聴いたことをそのまま覚える、復唱することなどが得意です。全体よりも細部にこだわる傾向があり、論理的に話してもらわないと嫌がる……などなど。
また、話すときに言葉に詰まったりしてしまうと過度に焦ってしまうという傾向もあるようです。キャロルのペンネームを作る際に用いていたという「言葉遊び」もこの聴覚優位のためといわれています。視覚優位の人とはことなり、映像ではなく音としてとらえているのでアルファベットの入れ替えなどといったことは得意だったと考えられています。「アリス」の物語でも、たしかに「音」を意識した言葉遊び、あるいは話のずれが私たち読者を楽しませてくれているように思います。

 

「不思議の国のアリス」成立まで

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アリスのためのアリス

もともとの『不思議の国のアリス』は、キャロルが親しくしていたリデル家の3姉妹、とくにお気に入りだった次女のアリスのために即興で作った物語なのです。(このときの様子が知りたいな、という方は『不思議の国のアリス』を手に取って見てください。巻頭の「黄金の昼下がり」という詩に様子が描かれています。)
キャロルは『不思議の国のアリス』のもとになった、アリスが冒険をする物語のほかにも即興物語を姉妹たちに多く聞かせていたそうです。その中でも、アリスがとくにその「冒険物語」を気に入り自分のために活字に起こしてほしいとお願いしたことから「不思議の国のアリス」は走り始めます。キャロルは、アリスの願いのために本文・挿絵・装丁まですべて自分の手で仕上げた「アリス」を完成させてアリスにプレゼントしたといわれています。

『不思議の国のアリス』へ

キャロルは「アリスのためのアリス」の原稿を知人の児童文学作家であったジョージ・マクドナルド一家に見せます。そして、それを読んだマクドナルド夫妻に正式に出版することを勧められ、夫妻の息子にも背中を押されたことにより、キャロルは出版を決意。
身内にしか通じない要素を省き、新たな挿話を追加し「アリスのためのアリス」をさらなるものへと昇華させ『不思議の国のアリス』を作り上げました。こうして私たちを楽しませてくれる『不思議の国のアリス』は誕生したのです。

■続編『鏡の国のアリス』

『不思議の国のアリス』は発表後、わずか数年でたくさんの人に愛される物語となりました。世間の評判を受け、キャロルは続編を生み出すことを決意します。そして、続編は『鏡の国のアリス』と題して、1871年のクリスマスに発売されました。
これらの2つの物語は、発表からキャロルが亡くなる1898年までの間に『不思議の国のアリス』は15万部以上、『鏡の国のアリス』は10万部以上出版されています。

 

『地下の国のアリス』と『子供部屋のアリス』

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不思議の国でも鏡の国でもない「アリス」の物語が存在しているのはご存知でしょうか。「アリス」の物語はこれら二つだけではないのです。

♦『地下の国のアリス』 1886

発表後まもなく大人気となった「アリス」物語。2作品の評判を見て、キャロルは「読者は元になった物語が読みたいのでは?」と考えました。そして、先ほど紹介した手書きの「アリスのためのアリス」を出版することを決意。結婚しハーグリーヴス夫人となっていたかつての少女・アリスの協力を得て原本「アリス」は『地下の国のアリス』として発売されました。

地下の国のアリス』/ 新書館

♦『子供部屋のアリス』 1890

こちらは、0歳~5歳のちいさな子供のための『不思議の国のアリス』です。「アリス物語」の最大の魅力である言葉遊びなどは控えられ、優しく子供に語り掛けるような文体に編みなおされているのがこの作品の特徴です。純粋なストーリーを楽しむ、またキャロルの優しい文体に出会うことができるので、大人の方にもお勧めできるものではないでしょうか。

子供の部屋のアリス』/ 新書館

 

まとめ

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いかがでしたでしょうか。発表から何年たっても色褪せない魅力がたっぷり詰まったキャロルの物語。時間を得てからもう一度読むと、心に刺さるような言葉もちらほらころがっていることに気が付きます。いままでは見えなかったおもしろさやそのほか諸々いろんなものがみえてくるかもしれません。
児童文学、侮るなかれ!不思議の国へ今一度、遊びに行ってみませんか?

■ご紹介作品

不思議の国のアリス』(新潮文庫)

鏡の国のアリス』(新潮文庫)

地下の国のアリス』(新書館)

子供の部屋のアリス』(新書館)

 

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ライター

BENCHAMIN
好きな作家さんは、江國香織さん、よしもとばななさん、梨木果歩さん。ジャンルは問わず雑食です。古書店街付近に生きる文学少女の端くれです。どうぞよろしくお願いします。