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2016年8月映画化!黒猫の物語「ルドルフとイッパイアッテナ」


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今回ご紹介する「ルドルフとイッパイアッテナ」は、斉藤洋さんによる児童文学のシリーズです。1986年度、講談社児童文学新人賞を受賞した作品で、1987年に出版されて以来、長い間子どもたちに愛されている不朽の名作です。
この「ルドルフとイッパイアッテナ」シリーズが、2016年8月、3DCGのアニメーション作品として映画化され、全国公開されます。
今回は、この「ルドルフとイッパイアッテナ」シリーズがどんな作品なのか、その魅力をお伝えします。映画を観る前に、原作本をぜひ一度読んでみてはいかがでしょうか。

■ご紹介する本
ルドルフとイッパイアッテナ
斉藤洋/作、杉浦範茂/絵(講談社)

⇒シリーズ4作はこちらから『ルドルフとイッパイアッテナシリーズ

まずはシリーズの基本、1作目である「ルドルフとイッパイアッテナ」がどのようなお話なのか紹介してみます。

住み慣れた街から離れてしまった黒猫ルドルフの冒険

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このシリーズの主人公は黒猫の「ルドルフ」。リエちゃんという飼い主のもと、幸せに暮らしていた黒猫でした。しかしある日、魚屋のおじさんに追いかけられているうちに、うっかり遠くの街へ行くトラックに乗り込んでしまいます。半日ほど高速道路を走った後、トラックを降りると、そこは見たこともない街でした。ルドルフは、自分が住んでいた街から遠く離れた場所にやって来てしまったのです。

見知らぬ街で途方に暮れていたルドルフは、その土地のボスである1匹のトラ猫「イッパイアッテナ」に出会います。最初は乱暴者のように見えたトラ猫ですが、ルドルフの度胸に感心したのか、その後ルドルフに街を案内し、色々なことを教えてくれるようになりました。
「イッパイアッテナ」という風変わりな名前は、ルドルフの勘違いから生まれた呼び名です。

「ぼくはルドルフだ。あんたは?」
「おれか。おれの名まえは、いっぱいあってな。」
「えっ、『イッパイアッテナ』っていう名まえなのかい。」
(「ルドルフとイッパイアッテナ」p.29)

 

教養のあるトラ猫『イッパイアッテナ』

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『イッパイアッテナ』はとても喧嘩が強いノラ猫で、地域の猫たちには「ステトラ」と呼ばれて恐れられていました。人間にも顔が広く、色々な人間のところに通っては、食べ物を分けてもらいながら暮らしていました。人間たちは、イッパイアッテナのことを、「トラ」と呼んだり「ボス」と呼んだり、色々な名前で呼んでいました。本当にイッパイアッテナには名前が「いっぱいあった」のです。

ルドルフは、イッパイアッテナとともに神社のえんの下で暮らしながら、ノラ猫としての生き方を学んでいきます。
そして、イッパイアッテナといっしょに過ごすうちに、ルドルフは、この街でたくさんの人や猫に出会います。
魔女のような見た目のおばあさんや、小学校の給食室のおばさん、クマのような小学校教師の内田さん。そして、商店街の金物屋に飼われているブチねこのブッチー。ブッチーは、ちょっとお調子者ですが、明るくて友情にアツい、どこか憎めない性格のキャラクターです。

イッパイアッテナは強いだけではなく「教養」のある猫でした。なんと、昔の飼い主から字を教わって、本が読めるようになっていたのです。イッパイアッテナは口は悪いのですが、その振る舞いは紳士的です。「教養」のある猫として、品の悪い行いはしない、というポリシーを持っているのです。
そして、イッパイアッテナは、ルドルフにも文字を教え、教養のある猫としての振る舞い方も教えていくのです。

「それからな、ルド。おまえ、このあいだの夜、字が読めないブッチーをからかっていただろう。ああいうことをしてはいけない。おれは、ああいうことをさせるために、おまえに字を教えたんじゃないからな。ちょっとできるようになると、それをつかって、できないやつをばかにするなんて、最低のねこのすることだ。教養のあるねこのやるこっちゃねえ。」
(「ルドルフとイッパイアッテナ」p.147)

少しでもルドルフが下品な行いをすれば、イッパイアッテナはそう言ってルドルフに注意します。
まるで師弟関係のようでもあり、気のおけない仲間のような、不思議な友情がルドルフとイッパイアッテナを結びます。

 

冒険を通して成長していく物語

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「ルドルフとイッパイアッテナ」のシリーズは、最初のタイトル「ルドルフとイッパイアッテナ」を含めて4冊発行されています。

1作目は、ここまででご紹介してきたとおり、ルドルフとイッパイアッテナの2匹の関係を軸に話が進んでいきます。
たとえノラ猫であっても「教養」を大事にすること、勇気を持って冒険をすることの大切さを教えてくれます。初めは生意気で頼りなかったルドルフが、イッパイアッテナから文字を学び、様々な経験を積むことで成長していく姿、そして何より、ルドルフとイッパイアッテナ、ブッチーの3匹の友情には心を掴まれます。

この1作目に続く2作目は「ルドルフともだちひとりだち」。そして3作目の「ルドルフといくねこくるねこ」、4作目「ルドルフとスノーホワイト」と続きます。
2作目は、イッパイアッテナの昔の飼い主とのエピソードをはじめ、人間と飼い猫との関係に焦点が当てられます。高速道路でのルドルフの冒険にハラハラし、ちょっと切ないラストにうるっときます。
3作目となると、ルドルフも周りの仲間たちも少しずつ変わっていきます。仲間の葛藤、電車での旅、思わぬ再会。大人の猫に成長し、自分というものに向き合うルドルフの成長に感動します。
4作目では、姉御肌でちょっと気の強いメス猫の「スノーホワイト」という新しい仲間が加わります。猫たちの縄張り争いや、行方不明の子猫を探す冒険に、相変わらずワクワクさせられます。

「ルドルフとイッパイアッテナ」は、シリーズを通して、ルドルフとその仲間たちの手に汗握る冒険が描かれます。初めはうっかりミスでトラックに飛び乗ってしまったルドルフですが、巻数を重ねるごとに知識を増やし、いろいろなところへ自ら冒険に出かけて行きます。小さな黒猫が、知識と知恵と勇気を使って街を飛び出し、冒険を通して成長していく姿は、読む側にも元気を与えてくれることでしょう。

 

子どもも大人も楽しめる、質の高い児童書

子ども向けの児童文学ではありますが、ページ数は270ページもあるボリュームのある本です。巻が進むごとに猫たちの関係も複雑になり、テーマも重くなってくるので、大人でも楽しめる読みごたえのあるシリーズになっています。子どもに読み聞かせをすれば、大人も子どもも同時に楽しめるのでオススメですよ。

■ご紹介した本
ルドルフとイッパイアッテナ
斉藤洋/作、杉浦範茂/絵(講談社)

⇒シリーズ4作はこちらから『ルドルフとイッパイアッテナシリーズ

ライター

ラッテ
3度の飯より本が好き。興味のおもむくままに、いろいろな分野の本を読んでいます。特によく読むジャンルは、IT、美術、語学、旅行、インテリア、漫画など。本好きが高じて、書店員をしていたこともあります。