綿矢りさのおすすめ小説|『蹴りたい背中』だけじゃない!
更新日:2019/8/29
2004年、『蹴りたい背中』が芥川賞を受賞し、史上最年少の芥川賞受賞作家として‟時の人‟になった綿矢りささん。
数々のヒット作を世に出し続けている綿矢さんの、おすすめ小説をご紹介します。
綿矢りさおすすめ小説1
『生のみ生のままで』
『生のみ生のままで』
集英社
女性同士の恋愛を描いた作品です。
主人公の逢衣は、恋人の颯と行った旅行先で、颯の幼なじみの琢磨と、その彼女である彩夏と出会います。
逢衣にとって高圧的な彩夏の第一印象は最悪でしたが、なんとある日、彩夏に告白され……。
情熱的な純愛。魂と魂の共鳴。相手がたまたま女性だっただけで、強い絆で結ばれた2人の関係は、どこか羨ましくもあります。
「どれだけ真面目に、どれだけ世間の気に入るように生きたって“普通”に必要な条件は次から次へと出てきて、絶対に追いつけない。偉そうに生きるつもりもないけど、俯いて生きるつもりもない」(下・105p)
この文章には思わず同感。“普通”という言葉に苦しんでいる、この世のすべての人たちに読んでほしいと思える作品です。
綿矢りさおすすめ小説2
『夢を与える』
『夢を与える』
河出書房新社
小松菜奈さん主演でドラマ化された作品。
幼いころから芸能界で生きることは、「人々が望む虚像」を生きること。
傍目から見ると華やかな世界で生きることが、どれだけ大変なことなのか。主人公である夕子の心の機微が丁寧に描かれており、読み応えがあります。
芸能界における問題提起もなされているため、社会派小説の一面もあります。あまりにも丁寧に描かれているので、まるで綿矢さん自身の経験かと錯覚するほどでした。
栄光と失墜の振幅が大きく、波乱万丈な展開に目が離せません。
個人的には、綿矢作品の中でも特に傑作だと思っています。
綿矢りさおすすめ小説3
『かわいそうだね?』
『かわいそうだね?』
文藝春秋
週刊誌連載の表題作を含む2編が収録された作品。
「愛しているのはもちろん君だけ」と言いながらも、困っている元彼女を見捨てることができない、恋人の隆大。
そんな隆大に不信感を募らせつつも、好きだから別れたくない。彼女としての余裕を見せつけながらも、内心では不安、怒り、あきらめ、いらだちを感じている樹理恵。
心の機微が細やかに描かれているので、まるで自分のことのように、感情移入しながら読み切ってしまいました。そして、修羅場が訪れるのですが……想像もしなかった結末にはびっくりです!
併録「亜美ちゃんは美人」は、友人が美人なあまり、いつも“2番”になってしまう女の子が主人公です。女子あるあるな作品になっているので、こちらも大変面白いですよ。
綿矢りさおすすめ小説4
『勝手にふるえてろ』
『勝手にふるえてろ』
文藝春秋
松岡茉優さん主演で映画化された作品。
ひねくれていて、自分勝手で、夢見がちな主人公の良香。
10年間片思い中の同級生か、自分を好きと言ってくれる会社の同期か、どっちを選べばいいの?
どちらを選んでも後悔しそうな気がするし、妥協しちゃっていいのか、理想を追い求めた方がいいのか……悩む主人公の姿に、「わかる!」と共感する方は多いのではないでしょうか? コミカルな作風につい吹き出してしまいます。
ちなみに、解説は辛酸なめ子さん。こちらも共感しまくりでした。
綿矢りさおすすめ小説5
『憤死』
『憤死』
河出書房新社
他の綿矢作品とはひと味違った連作短編集。ホラー色が強く、綿矢さんのイメージが大きく変わる1冊に仕上がっています。
誰かにとっては大事な出来事だけれども、自分はすっかり忘れている記憶。忘れられない、子供の頃見た夢。夢か現実か定かでない思い出。
もしそれらの過去が、大人になった今の自分に影響を与えたらどうしますか?
作品全体に、どこか薄気味悪い雰囲気が漂い、読み終わった頃には心がざわついているでしょう。フジテレビの人気番組「世にも奇妙な物語」がお好きな方におすすめです。
『蹴りたい背中』以外も読んでみて!
綿矢りささんの作品を5作ご紹介しましたが、気になった作品はあったでしょうか?
『蹴りたい背中』しか読んだことがない……という方がいらっしゃったら、もったいありませんので、ぜひとも他の作品を読んでいただけたらと思います。
【おすすめ記事】芥川賞と直木賞の違いって?|それぞれの違いとおすすめ作品紹介
ライター:飯田 萌