池井戸潤おすすめ小説|映像化多数!スカッと爽快な社会派小説の数々
更新日:2019/7/8
ゴールデンタイムに放送され、いずれも高視聴率を獲得したテレビドラマ「半沢直樹」「下町ロケット」「陸王」。これらはすべて、池井戸潤さんの作品です。
社会派、経済小説と呼ばれることの多い池井戸さんの作品。
組織のなかでの葛藤や、立ちはだかる逆境を乗り越えながら、自らの正義や信念を貫く登場人物の姿が感動を呼びます。
また、主人公が毎度窮地に追い込まれながらも、最後には大逆転! ハッピーエンドで終わる読後の爽快感が最大の魅力です。
ここでは、テレビドラマや映画の原作となった作品、そして映像化されていない作品もあわせて、池井戸潤さんの小説10作品をご紹介します。
「半沢直樹シリーズ」
「半沢直樹シリーズ」
文藝春秋
大手の銀行に勤める半沢直樹が、銀行内の圧力や複雑な人間関係に挑んでいく「半沢直樹シリーズ」。
本シリーズを原作としたテレビドラマは、平成に放送されたテレビドラマのなかで最高視聴率を記録。主人公である半沢の決めゼリフ「倍返し」が流行語になるなど、社会現象を巻き起こしました。
半沢直樹を主人公とする小説は、2019年7月現在4作あります。
「大阪西支店編」「東京本店編」の2部構成だったテレビドラマは、それぞれ2004年に刊行された小説『オレたちバブル入行組』、2008年の『オレたち花のバブル組』が原作です。
シリーズ3作目『ロスジェネの逆襲』と4作目『銀翼のイカロス』をもとに、2020年にはドラマの続編放映も決定しています。
とにかく読み応え抜群! 読んでいると胃がキリキリとする場面もありますが、最後にはガッツポーズをしたくなるほどの爽快感に満ち溢れていますよ。
「下町ロケットシリーズ」
「下町ロケットシリーズ」
小学館
知名度も資金力もない下町の工場「佃製作所」が舞台。
資金難や特許紛争などにより何度も窮地に陥る佃製作所が、ものづくりにかける情熱とプライド、そして地道に磨き上げた技術力で困難を克服していきます。
2010年に単行本が発売されたシリーズ1作目『下町ロケット』は、ロケットエンジン部品の開発。
2作目の『下町ロケット ガウディ計画』は人工心臓のパーツ。
3作目の『下町ロケット ゴースト』、4作目の『下町ロケット ヤタガラス』では、自動運転トラクターと、日本のものづくりの現実が詳しく描かれます。
各巻で描かれる人間ドラマは、池井戸作品の真骨頂だと思います。
企業の論理と、ものづくりに対するロマン、そして熱い想い。佃製作所の社員たちが、純粋さや人情を原動力に困難を乗り越えていく……。そんな姿に目頭を熱くさせられました。
『不祥事』
『不祥事』
実業之日本社ほか
元銀行員である池井戸潤さんの経歴が活きる、銀行がテーマの短編小説。
杏さん主演のテレビドラマ「花咲舞が黙ってない」は、池井戸作品『不祥事』と、『銀行総務特命』の一部が原作となっています。
銀行というエリート組織のなかでの権力の横暴や自己保身、そしてお金に絡む生々しい人間の性(さが)。それらのせいで弱者が虐げられることに、花咲舞は黙っていません!
誰にも媚びることなく一生懸命に正義を貫こうとする花咲舞が、どんな悪事やトラブルも最後には解決してしまうのは池井戸作品のお約束。
ドラマのカラッと明るい爽快感よりも、銀行内部のリアルを見てみたい方には小説がおすすめです。
『ノーサイド・ゲーム』
『ノーサイド・ゲーム』
ダイヤモンド社
~あらすじ~
経営企画部の君嶋は、カザマ商事買収案件に異議を唱えたことで横浜工場総務部長によって左遷させられてしまう。そして赤字を垂れ流しながら運営される社会人ラグビーチーム、アストロズの運営を任されることに――。
ラグビーについて全く素人の君嶋は、ゼネラルマネージャーとしてチームを躍進に導くとともに、企業買収の裏で画策される社内政治の闇を暴き出していきます。
チームの存続を賭けたプレーオフの最終試合、アストロズは勝利を手にすることができるのでしょうか!?
本作は、2019年6月に発売されたばかりの池井戸さん最新作。
「ルーズヴェルト・ゲーム」「陸王」と同様に、企業スポーツが題材となっており、2019年7月からテレビドラマも放映されています。
組織の企業買収や社会人スポーツの構造的問題を、君嶋が経営視点で改革していく過程は非常に読み応えがあります。
また、チーム監督の去就や選手の起用を含め、ゲームの描写はラグビーに詳しくなくても手に汗握る臨場感を楽しめますよ。
『果つる底なき』
『果つる底なき』
講談社
~あらすじ~
不慮の死を遂げた同僚の坂本が話した「これは貸しだからな」の言葉が頭に残る伊木。そして伊木は、坂本の残した書類のなかに不審な点を見つけ出すのだった。
伊木は坂本の死の謎に迫ろうとするのだが、次々と起こる事件に追い込まれることに。伊木は銀行の内幕に蠢く悪を暴くことができるのか――。
1998年に江戸川乱歩賞を受賞した池井戸潤さんのデビュー作。2000年にテレビドラマ化されました。「半沢直樹シリーズ」や「下町ロケットシリーズ」と比べて、熱量はやや控えめなのが初期作品の特徴です。
大企業組織にはびこるパワーゲームやサラリーマンの悲哀を描きながら、金融界の巨悪に立ち向かう正義をサスペンスに仕立てた名作。一度読み始めたら、もうその手は止まりません!
『BT’63』
『BT’63』
講談社ほか
~あらすじ~
心を病み、記憶障害で仕事と妻を失った琢磨。亡き父、史郎の遺品である自動車のキーを手に取ると、琢磨には史郎の見ていた景色が広がる。
その景色は、トラックBT21の運転手が次々と殺されるトラブルに遭い、経営難に陥った運送会社を必死に立て直そうとする史郎の姿だった。
琢磨の目の前に現れた史郎の過去は、人生のどん底にある琢磨に何を訴えかけるのでしょうか。
この作品も、池井戸さんにとっては初期の作品にあたります。
タイムトリップなどのSF要素や、闇の世界が絡むサスペンス、家族の世代を超えた愛のドラマが描かれるなど、近年の池井戸作品のような痛快な逆転劇とは少し毛色が違います。
池井戸さんの、いつもとは違った世界をぜひ味わってみてください。
『株価暴落』
『株価暴落』
文藝春秋
~あらすじ~
債務超過から経営再建に乗り出す矢先に起きた、巨大スーパー「一風堂」の爆破テロ事件。この事件によって、一風堂の株価は暴落してしまう。
一風堂の支援を行なう白水銀行の内部では、巨額の追加融資をめぐり審査部と企画部が対立していた。そんななか、審査部の坂東がテロ事件の謎に迫っていく。
2014年にテレビドラマ化された作品。
銀行の内幕が詳しく描かれているのは池井戸作品ならではですが、それにテロ事件が加わり、銀行や株価などの経済に関わるテーマと謎解きが見事に融合した傑作だと思います。
大手企業と銀行の癒着に警察も絡み、それに真っ向から立ち向かう坂東の正義。そんな悪にも、最終的に勝利となるのが池井戸作品らしいところです。
『シャイロックの子供たち』
『シャイロックの子供たち』
文藝春秋
~あらすじ~
大手銀行の支店で起きた現金紛失事件。女子行員に疑いがかけられ、それをかばった上司は失踪、精神を病み入院するものが出るなど支店内は混迷していく。
この事件の背後には、行員たちの事情や思惑が複雑に絡み合っていた――。
池井戸さん本人が「小説の書き方を決定づけた記念碑的な一冊」と語る作品です。
銀行組織に焦点を当て、群像劇の形がとられた本作。
それぞれの人生を持つ行員が、組織の論理によって歪められていく様子は、働くすべての人に共感するところがあるはずです。
痛快な勧善懲悪物語ではなく、どちらかというと重い読後感が残ります。
ですが、「半沢直樹シリーズ」につながる要素がたくさん詰まっているので、読んで損はありません!
『鉄の骨』
『鉄の骨』
講談社
~あらすじ~
とある中堅ゼネコン。突然業務課に異動になった平太は、上司らが日常的に談合する様子に戸惑っていた。
違法行為に関わらなくてはいけない状況に平太の苦悩が続くなか、地下鉄建設の大型公共事業の入札日を迎える。果たして入札の結果は――。
談合とは、競争入札の際に、参加者が前もって落札者と価額を決める不公正な話合いのこと。
この違法行為である談合を、必要悪とするのか、悪と断罪するのか?
それぞれの関係者視点から描いたこの作品は、談合が以前からしきたりのごとく行なわれていることに疑問を投げかけます。
一企業と業界の成り立ちのなかで、それぞれの立場にある思惑。
そして、物語に彩りを添える平太の恋人である萌の人間味、登場人物たちの成長など、深みのある人間模様に自然と感情移入してしまいました。
『ようこそ、わが家へ』
『ようこそ、わが家へ』
小学館
~あらすじ~
通勤電車で割り込んできた男を注意した倉田は、逆恨みからのストーカー行為に悩まされるようになってしまう。
また出向先の会社では、営業部長の架空取引による不正を疑ったことでトラブルに巻き込まれることに――。
2015年にテレビドラマが放送された『ようこそ、わが家へ』。ドラマでは倉田家長男の健太が主人公でしたが、原作では父の太一が主人公となっています。
平凡な男の日常に、次々と降りかかるトラブル。それらに対し、家族や部下が共に闘い解決にこぎつけていく様子が描かれます。
池井戸作品には珍しい家族の物語。ストーカーの問題を扱ったサスペンスタッチで描かれる社会派小説です。
日々の暮らしのなかで誰でも経験するちょっとした迷惑やいざこざ。それが原因でトラブルに発展してしまう……。誰でも思い当たることがあるのではないでしょうか。
最後には正義が貫かれる、他の作品同様スカッとさせてくれますよ。
爽快感を味わって!
普段、私達が働くなかで感じる不条理や諦め。それらに対し、物語の主人公が真正面から挑み、道を切り開いてくれる池井戸作品は、スカッとした気持ちや爽快感を味わえます。
さらにその舞台設定が時流に乗っているところも、映像化され広く受け入れられる理由の1つではないでしょうか。
正義が勝利する安定感を持ちながら、そこまでたどり着くバリエーション豊かなテーマとストーリーで展開される池井戸作品に、はずれはありません。
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