読書初心者にもおすすめ! 読みやすくて面白い直木賞受賞作品
更新日:2019/5/20
直木賞(直木三十五賞)は、芥川賞とともに毎年2回発表されている文学賞です。
芥川賞は「純文学」といった、芸術性や形式を重んじる賞。対して直木賞は「大衆小説」と呼ばれる娯楽性を重んじる賞のため、読書初心者の方にも比較的読みやすい作品が多いことが特徴です。
ここでは、過去の直木賞受賞作品の中でも読みやすい作品をジャンルごとに分けてご紹介します。
せっかく読むなら文学についてちょっと知っている風になれる小説にチャレンジしてみませんか?
青春小説
『4TEEN フォーティーン』
『4TEEN フォーティーン』
石田衣良(著)、新潮社
東京・月島を舞台に、男子中学生4人の刺激的な日常を綴った青春物語。固い友情で結ばれた4人に振りかかる、恋や病気、死などのさまざまな困難が描かれます。
本作は、『池袋ウェストゲートパーク』などで知られる石田衣良さんの作品。連作集となっており、同じ設定の短編で構成されています。長編に苦手意識がある方にピッタリではないでしょうか。
多感な時期を迎えた個性的な4人のやり取りは非常に軽快で、シビアな問題すら爽やかに感じられます。
自分は同じ頃何をしていただろうか……? なんて過去を振り返るきっかけにもなる、大人になった今こそ読んでほしい作品です。
恋愛小説
『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』
『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』
山田詠美(著)、角川書店ほか
本作は、漫画家としても知られる山田詠美さんの作品。ソウルミュージックの曲になぞり紡がれる、8つの短編からなる連作集です。
直木賞の選考では、田辺聖子さんに「やっとサガンを抜く女流作家が日本にも出た」と評されました。
それぞれがアメリカを舞台に、アメリカ人の恋愛模様を描いています。美しく、エロスを感じさせる表現が魅力的です。
やや言い回しは古いかもしれませんが、文章のリズム感が良く今も色あせぬ名作ではないでしょうか。
恋というものに、いつどのタイミングで落ちるか? そんなのいつだって突然なのです!
「大人の恋愛」に触れることでより理解が深まる作品ともいえます。10代で本作に触れている方も、ぜひもう一度手に取ってみてください。
社会派小説
『下町ロケット』
『下町ロケット』
池井戸潤(著)、小学館ほか
画期的なロケットエンジンを搭載したセイレーンが、打ち上げに失敗した。そのエンジンを開発した佃航平は、仕事を辞め父の会社である佃製作所の社長に就任するが……。
ドラマも大ヒットした池井戸潤さんの社会派小説。単なる企業小説ではなく、夢と希望が詰まったエンターテインメント性の高い作品です。ハラハラする展開も多いですが、そのあとに待ち受けるスカッとした爽快感がたまりません!
夢を現実にするためにはどうしたらいいか? 何が必要か?
どんな逆境のなかでも会社でイキイキと働いている佃製作所の面々。「働くこと」について考えさせられます。
現代小説
『昭和の犬』
『昭和の犬』
姫野カオルコ(著)、幻冬舎
昭和33年、滋賀県に生まれた柏木イク。奇異な性格の父母と暮らす理不尽な毎日には、いつも寄り添うように犬や猫が居てくれた。
短編小説やエッセイ作品が多い姫野カオルコさんですが、『昭和の犬』は長編小説。イクが生きた昭和30年代から平成19年までの日常を丁寧に描いており、その随所に犬や猫が現れます。
あまりにリアルに当時の生活が綴られているため、まるで自伝小説かのようです。
穏やかに紡がれる懐かしい昭和の生活に温かい思い出たち。昭和の香りに触れたい方や、愛犬家の方に特におすすめしたい作品です。
ファンタジー小説
『遠い海から来たCOO』
『遠い海から来たCOO』
景山民夫(著)、角川書店
12歳の洋助は、海洋生物学者の父と一緒にフィジー諸島のパゴパゴ島に移り住んでからもう3年になる。
そんなある日、6,000万年以上前に絶滅しているはずのプレシオザウルスの子を発見して……。
景山民夫さんの冒険ファンタジー小説。
物語前半は「COO」という鳴き声から「クー」と名付けられた恐竜との日常を。そして物語の後半では、特殊工作員との戦いが描かれる活劇になるなど、様相が異なります。
長編ではあるものの、子供でも親しみやすい内容なので親子一緒に読む本として選んでみるのもいいかもしれません。本作を原作としたアニメーション映画もおすすめですよ。
短編小説
『鉄道員』
『鉄道員』
浅田次郎(著)、集英社ほか
北海道ローカル線の駅長・佐藤乙松(おとまつ)。娘にも妻にも先立たれ、孤独な生活を送っていた彼のもとに1人の少女が現れる。
少女は人形を忘れて帰ってしまい……。
本作は8つの短編からなる作品。高倉健さん主演映画のイメージも強い表題作である「鉄道員」も、実は短編作品です。
浅田次郎さんの心にしみる名作が集められており、読めば思わず涙が出る作品ばかりが収録されています。
どの作品にも温かさがあり、なかにはきっと共感できるような人物もいるでしょう。幅広い年齢層の読者を魅了し続ける名作です。
ミステリー小説
『容疑者Xの献身』
『容疑者Xの献身』
東野圭吾(著)、文藝春秋
数学者の石神が住んでいるアパートの隣で殺人事件が起きた。隣人の靖子とその娘が事件に関わっていることを知った石神は、彼女たちを守ろうと警察の目をそむけるために策を講じるが……。
東野圭吾さんの大人気「ガリレオシリーズ」の第3弾。ガリレオこと物理学者の湯川と、大学時代の同級生・石神が対峙します。
巧みな謎解きと優れた心情描写は秀逸そのもの。ミステリーを日頃読まない方にも読みやすい作品です。
今までシリーズ作品を読んでいなくても、もちろん楽しむことができます。予想もしない結末が待ち受けていますよ。
ミステリー小説
『理由』
『理由』
宮部みゆき(著)、朝日新聞社
荒川区の高層マンションで凄惨な殺人事件が起きた。室内には中年男女と老女、計3つの惨殺体があり、若い男はベランダから転落死したのだ。しかし実はこの4人、その部屋の住人ではなくて……。
殺人事件をドキュメンタリーのように追う、宮部みゆきさんの社会派ミステリー。現代社会の闇が丁寧に描かれており、登場人物も非常に多く読みごたえがあります。
いったなぜ事件は起こったのか、犯人は誰なのか、そして殺されたのは誰だったのか……? 最後まで目が離せません。
時代小説
『梟の城』
『梟の城』
司馬遼太郎(著)、新潮社
織田信長による伊賀侵攻で滅ぼされた伊賀忍者の生き残り、葛籠重蔵(つづらじゅうぞう)。
伊賀忍者は、風間五平と重蔵を残して滅んでしまった。その後五平は武士になるが、重蔵はかつての師匠から豊臣秀吉暗殺の依頼を受け……。
『梟の城』は、復讐に燃える重蔵と伊賀を裏切って士官をした五平、2人の忍者が「梟の城」を舞台に対峙する姿を描いた迫力満点の時代小説です。
スピード感があり、最後までワクワクしながら読むことができるはず。歴史を踏まえたあっと驚く結末で時代小説に馴染みのない方でもスッと物語に入りやすいでしょう。
時代小説
『後巷説百物語』
『後巷説百物語』
京極夏彦(著)、角川書店ほか
明治10年。一等巡査である矢作はとある伝説の真偽を確かめるために友人たちと、隠居老人である一白翁(山岡百介)を訪ねた。今は亡き江戸時代の者どもの話を、翁は静かに語り始めた。
怪異の世界を堪能できる妖怪時代小説『後巷説百物語』。少し変わった相談を持ち込む4人の若者に、翁が自身の不思議な体験を語っていきます。
本作は「巷説シリーズ」第3弾ですが、本作だけでも十分に京極さんの描く奇妙で怪奇的な魅惑あふれる世界を楽しむことができますよ。
名作だらけの直木賞受賞作品を読んでみよう!
直木賞受賞作品の中から、読書初心者でも読みやすいおすすめの本をジャンル別にご紹介しました。
長編は苦手、読んだことがない、という方であればぜひ短編から読んでみてください。
直木賞はまだまだ名作がたくさんあります。興味を持った方は、ほかの作品にも挑戦してみてくださいね!