安楽椅子探偵とは? おすすめの安楽椅子探偵ものミステリー小説
更新日:2019/4/20
みなさん、ミステリー小説はお好きですか?
「ミステリー」と言えども、そのなかにも「叙述ミステリー」や「イヤミス小説」など、さまざまなジャンルが存在します。
さて、そんななかで、ミステリー小説をあまり読んだことがないという方におすすめのジャンルがあります。それが、「安楽椅子探偵」と呼ばれる作品です。
このジャンルの作品は短編集やライトミステリーであることが多く、ミステリー初心者にもおすすめです!
ここではそんな「安楽椅子探偵」とはどんな作品を指すのか、そしておすすめの小説をご紹介していきます。
安楽椅子探偵について 目次
安楽椅子探偵ものおすすめ小説
└『黒後家蜘蛛の会』
└『安楽椅子探偵アーチー』
└『座間味くんの推理 心臓と左手』
└『ミミズクとオリーブ』
└『腕貫探偵』
└『麦酒の家の冒険』
└『赤ちゃんをさがせ』
└『空飛ぶ馬』
└『太鼓叩きはなぜ笑う』
└『隅の老人』
「安楽椅子探偵」とは?
「安楽椅子探偵」とは、事件現場に行くことなく、刑事や関係者に話を聞いただけで事件を解決してしまう探偵のこと。また、その形態が用いられたミステリー作品のことです。
安楽椅子探偵もので有名なのは、アガサ・クリスティの「ミス・マープルシリーズ」。
ロンドン近郊の中流家庭に生まれの老婦人ミス・マープルが、周囲の人々の噂話などをもとに事件を解決に導いていく人気シリーズです。
少ない情報の中から事件の真相を解明していく様子は「お見事」の一言! 探偵たちの博識ぶりにも思わずため息が出そうです。
さて、ここでは「ミス・マープルシリーズ」以外にもある安楽椅子探偵もののおすすめミステリー小説をご紹介していきます。
「安楽椅子探偵」おすすめ小説1
『黒後家蜘蛛の会』
『黒後家蜘蛛の会』
アイザック・アシモフ(著)、東京創元社
化学者、数学者、弁護士、画家、作家、暗号の専門家。この6人と、ゲスト1人を招いて行われる月1回の晩餐会。ゲストを尋問し、その話が謎めいてくると6人はそれぞれ探偵のように熱く語り出す。
しかし最後に謎を解くのは、いつも給仕のヘンリーだった。
12作の短編が収録された作品。食事をしながら謎解きを興じていく様子が楽しい安楽椅子探偵ものです。
個性的で一癖あるメンバーがそれぞれ謎解きを始めるも行き詰まり、結局最後はヘンリーが謎を解決するという形式美を楽しむことができますよ。
解決には至らないにせよ、それぞれが語る仮説の数々には逆に感心させられます……!
「安楽椅子探偵」おすすめ小説2
『安楽椅子探偵アーチー』
『安楽椅子探偵アーチー』
松尾由美(著)、東京創元社
ある日小学5年生の衛が、自分の誕生祝いを探しているときに出会った安楽椅子。なんとその椅子は話すことができ、さらに不思議な能力も持っていた。
アーチ―と名付けられた椅子は、シャーロック・ホームズのような推理力を発揮するその名の通り「安楽椅子」だった!
日常のささいな謎を解いていく、ファンタジーミステリー。なんと探偵役は、安楽椅子! その設定だけでも興味をそそられます。
安楽椅子のアーチーと、小学生の衛のコンビのやり取りは軽快でテンポが良く、とても爽やかな印象の作品です。児童書のような装丁ですが、大人が読んでも充分に楽しめます。
連作集ですので、息抜き的なつもりで読んでみてはいかがでしょうか?
「安楽椅子探偵」おすすめ小説3
『座間味くんの推理 心臓と左手』
『座間味くんの推理 心臓と左手』
石持浅海(著)、光文社
「座間味くんシリーズ」の2作目となる短編集。
警視庁の大迫警視と、前作『月の扉』のハイジャック事件で知り合った座間味くんの会話から、過去の事件の真相が浮き彫りになっていくというちょっと変わったミステリー作品です。
すでに警察では解決済みである事件に、座間味くんが別の角度から鋭い突っ込みを入れていきます! その鮮やかな推理には爽快感を感じられるでしょう。
安楽椅子探偵ものということで、本作から読んでも違和感なく読み進められます。
しかし物語の雰囲気をより楽しむには、ハイジャック犯の視点で進む前作『月の扉』を先に読むのがおすすめです。
「安楽椅子探偵」おすすめ小説4
『ミミズクとオリーブ』
『ミミズクとオリーブ』
芦原すなお(著)、東京創元社ほか
八王子に住んでいる作家である夫の「ぼく」の元に舞い込むさまざまな謎。
「ぼく」は謎の答えがさっぱり分からないのに、となりでお裁縫をしながら話を聞いていた奥さんが謎の真相を解き明かす!?
この作品を一言でいえば、「とってもお腹が空くミステリー」!! 奥さんの作る料理がどれも本当においしそうなんです~……。
ミステリー作品ながら、ゆったりとほのぼのした会話で物語は進んでいき、人の優しさや人情にも触れられます。
奥さんがホームズで、「ぼく」はワトソンの役割を果たしており、そのやり取りも魅力的。読めば癖になるライトミステリーです。
「安楽椅子探偵」おすすめ小説5
『腕貫探偵』
『腕貫探偵』
西澤保彦(著)、実業之日本社
「市民サーヴィス課臨時出張所」。
市民サービスを名乗る相談所の黒い腕章を身につけた職員の男が、殺人事件から個人的なお悩みまでアドバイスをくれるというが……?
ちょっと異色のミステリー小説。ツッコミどころはたくさんありますが、斬新な設定が魅力的です。職員の男が「お役所仕事」に徹底している様子も見どころですよ。
基本的に男は悩みに対するアドバイスやヒントをくれるだけで、そこから先は相談した人次第。
予想しなかったラストになることもあり、ミステリー作品としては新鮮な気持ちで読むことができます。
「安楽椅子探偵」おすすめ小説6
『麦酒の家の冒険』
『麦酒の家の冒険』
西澤保彦(著)、講談社
4人の学生がドライブ中に迷い込んだ山荘。そこにはベッドと、ビールしか入っていない冷蔵庫だけがある。
一体なぜここにはそれだけのものしかないのか? 4人はビールを飲みながら、推理合戦を始める。
「匠千暁シリーズ」の2作目。これぞまさに、「夏の暑い日にビールを飲みながら読みたい1冊!」
異様な空間のなか最初は憶測ばかりが飛び交いますが、徐々に矛盾がなくなっていき、1つの仮説に辿りつきます。最後に待ち受ける結末はもちろん、推理の過程を楽しんでくださいね。
しかしアレですね、誰が住んでいるかも分からない山荘で見つけたビールなんて、多分わたしは飲めないです(笑)
「安楽椅子探偵」おすすめ小説7
『赤ちゃんをさがせ』
『赤ちゃんをさがせ』
青井夏海(著)、東京創元社
「伝説のカリスマ助産婦」が探偵役の『赤ちゃんをさがせ』。出張助産婦の聡子と、見習い助手の陽奈がさまざまな事件に巻き込まれながらも真相を解明していきます。
3人の妊婦がいるお屋敷で本妻を探す、女子高生の出産の謎など、ちょっと変わった家族それぞれの謎を解き明かす3つの短編が収録されています。
コメディ調で描かれているのでユニークさが溢れています! 重々しい雰囲気のミステリーが苦手な方におすすめです。
「安楽椅子探偵」おすすめ小説8
『空飛ぶ馬』
『空飛ぶ馬』
北村薫(著)、東京創元社
日本文学を学ぶ大学生の「私」と、落語家の春桜亭円紫のコンビが何気ない日常の謎に迫る「円紫さんシリーズ」1作目。
「私」の提示する謎に対し、円紫がロジカルに解いていきます。
本作は北村薫さんのデビュー作であり、人の死なないミステリーの代表格。『模倣犯』や『ソロモンの偽証』などで知られる宮部みゆきさんも絶賛した作品です。
文章がとても丁寧で、登場人物も全員優しさに溢れています。特別なことやあっと驚く展開はありませんが、たくさんの不思議が読者の心を掴んで離しません。
「安楽椅子探偵」おすすめ小説9
『太鼓叩きはなぜ笑う』
『太鼓叩きはなぜ笑う』
鮎川哲也(著)、東京創元社
とある私立探偵が、事件に行き詰ったときに訪れるバー「三番館」。探偵が事件の話をしていると、それを聞いていたバーテンダーが話し始め……。
「三番館シリーズ」の1作目。
事件の捜査をして回る探偵ですが、その結果はいつもハズレです。
一方三番館のバーテンダーは、探偵の話を聞いて事件の謎をあっという間に解決。探偵に気付かれぬよう、こっそりヒントを与えていきます。
読みやすい文章で、ユーモアもたっぷり! 王道の安楽椅子探偵ものを読みたいときにはぴったりです。
「安楽椅子探偵」おすすめ小説10
『隅の老人』
『隅の老人』
バロネス・オルツィ(著)、早川書房ほか
「ABCショップ」の隅の席に座っている老人が、若い女性新聞記者であるポリー・バートンに迷宮入り事件の謎を解いてみせる。
「安楽椅子探偵の先駆者」とも言われ、シャーロック・ホームズのライバルの1人でもある隅の老人が探偵役の短編集です。表紙のイラストからも怪しい雰囲気を感じ取れますね。
警察でも知りえない情報をなぜか知っているこの隅の老人。安楽椅子探偵ものではありますが、事件現場に自ら赴いたり、容疑者の顔を確認しに行ったりなど、非常に活発的です。
1901年に発表されたお話であり、古臭さを感じる部分はありますが、今も色あせぬ名作です。
安楽椅子探偵、読んでみては?
安楽椅子探偵もののミステリー小説をご紹介しました。
日常の謎や人の死なない作品も多いので、ミステリーに難しいという印象をお持ちの方でも読みやすいです。
ぜひ気になった作品があれば読んでみてくださいね!
【おすすめ記事】スキマ時間に気軽に読める! 短編ミステリー小説
ミステリーに興味をもったら、ぜひ読んでほしい名作があります!