おすすめ パニック小説 |他人事ではない! 大惨事にあなたはどう立ち向かう?
更新日:2019/2/8
近年、異常気象という言葉を聞くことが多いですよね。災害や大惨事などの異常事態に遭遇したとき、人々はどう考え、どう解決するのでしょうか。
そんな異常事態を打破しようと立ち向かっていく人々を描いた小説をご紹介します。
他人事ではない、いつか自分の周辺にも起こるかもしれない、そう感じさせられる作品ばかりです。
「私刑」は「正義」か?
『赤い雨』
『赤い雨』
戸梶圭太(著)、幻冬舎
赤い雨が降った日から、日本全国で残虐な事件が急増。それは弱い者いじめをされてきた人達が「私刑」、つまり反撃をするようになったのだ。
ついにテレビの前で未成年者が「私刑」され、それを見て日本中が狂喜する異常事態に。ただ一人、主婦の志穂だけは変わることなく、凶行に走った夫から逃げ出すが……。
赤い雨が降ると、ほんのちょっとした不満やいじめなど、理不尽な思いに耐えてきた人達が残虐な行為を重ねていくようになります。
周りがおかしくなっていくなかで自分だけが正気でいたら、そんな世界を生きていけるでしょうか。
生々しく暴力的なシーンは多いですが、「正義」とは一体なんなのか? 考えさせられます。
日本が沈没するとしたらどうしますか?
『日本沈没』
『日本沈没』
小松左京(著)、小学館
地球物理学者の田所は、日本列島に異変が起きていることを直感する。
海底調査を行うと小笠原諸島海底に大きな亀裂を発見。日本が2年以内に沈没する可能性が浮上し、政府も日本脱出計画を立てるが……。
初版が1973年刊行ということで、日本のパニック小説の先駆け的な作品といえるでしょう。
しかし現在、日本だけでなく世界中で大震災や異常気象などが続発し、小説で起きたことが架空の出来事ではなくなってきています。
日本が沈没するとわかったとき、政府はどのような対策を講じるのでしょう。
人々は残りの日々をどのように過ごすのだろうと、自分と照らし合わせて考えてしまうのは必至です。
大自然の猛威へ恐怖を感じ、人間の底力の強さに感動する、スケールの大きな作品ですよ。
カギは歴史の中にあった……
『黒い春』
『黒い春』
山田宗樹(著)、幻冬舎
監察医務院に体内が真っ黒の遺体が運ばれ、そこから巨大な黒色胞子が発見される。春になると「黒手病」と呼ばれる新種の病気が全国各地で発生し、口から黒い粉をまき散らしながら死んでいく病気だった。監察医・飯守の妻もその病気に感染してしまい……。
新種のウイルスや真菌などによるパンデミックがいつでも起こり得る現代。本作は、そう遠くない未来に本当に起こるかもしれない物語です。
病気の正体は? 治療法は見つかるのか?
歴史研究家と飯守が協力して解明に挑む姿や、家族愛など、ヒューマンドラマとしても楽しめる作品になっています。
なんと、真相を探るのは生ける屍!?
『生ける屍の死』
『生ける屍の死』
山口雅也(著)、東京創元社ほか
ニューイングランドの片田舎で、死者が甦るという事件が続発していた。
そんななか、巨大霊園の経営者一族の中で殺人事件が発生。なんと関係者であるグリンは、毒殺された挙句この世に甦ってしまった!
一体なぜグリンは殺されたのか……?
走っても呼吸が苦しくないし、交通事故に遭ってもダメージが少ない死者の身体。だけれどタイムリミットは、己の身体が腐ってしまうまで。探偵役のグリンが真相に迫ります。
死者の主人公が事件を解き明かすというゾンビ系の小説ですが、ミステリー色が強くサクサク読める作品です。
ミサイル誤射をされた飛行機の命運は?
『超音速漂流』
『超音速漂流』
ネルソン・デミル(著)、トマスブロック(著)、村上博基(訳)
文藝春秋
海軍が極秘に行った訓練中のミサイル誤射により、ジャンボ旅客機が撃たれてしまう。機長は死亡。小型機の操縦経験しかない主人公と生存者の数名は、協力して生還を目指していた。ところが事故を隠蔽するため、飛行機ごと墜とそうとする計画が進行していて……!?
事故を隠蔽するために画策するのは海軍。また、莫大な賠償が発生するのを回避しようと保険会社の支社長まで妨害してきます。
事故に遭った飛行機がなんとか帰還しようとする作品は他にもありますが、事故隠蔽や賠償回避のため、飛行機や生存者を亡き者にしようとする設定はパニック小説として出色です。
最後までスピーディでスリリングな展開を楽しめますよ。
手に汗握るスピーディな展開!
『大空港』
『大空港』
アーサー・ヘイリー(著)、武田公子(訳)、早川書房
記録的な積雪で欠航が相次ぎ、混乱するリンカーン国際空港。空港ロビーでは欠航に文句を言う客や、トラブル対応に慌てふためくスタッフなどで大混乱。
そのうえ、ローマへ出発した飛行機に爆弾を持った客が乗り込み、機体に穴が開いてしまいます。着陸させるはずの滑走路には、着陸に失敗した別の飛行機の姿が……。
1968年に発表され、1970年代に「エアポートシリーズ」と呼ばれる映画4作品の原作となった小説。
これでもかと次々にトラブルが発生しますが、大胆にテンポよく解決していきます。
飛行機、空港ロビーという密室の中で発生する異常事態は人間の本性をむき出しにするのです!
爆弾テロも起こり得る現代。それを考えると背筋が寒くなってきますね……。
大都会に起こる災害パニック小説
『東京大洪水』
『東京大洪水』
高嶋哲夫(著)、集英社ほか
「大型の台風がやって来る!」
気象庁は、この台風の東京への上陸はないと発表。しかし日本防災研究センターの玉城は、それが次に来ると予測される台風と合体し、東京へ上陸すると予知するのだった!
大型台風の日本への上陸が増えている昨今、他人事では済まされない災害パニック小説です。
首都圏を背景にしたことから、高層ビル倒壊の危機や地下交通網の洪水問題などがリアル。
究極の危機的状況で描かれる家族愛、立ち塞がる個人のエゴなど、人間模様も緊迫感を持って読むことができる作品です。
巨大な甲殻類が人を襲う!?
『海の底』
『海の底』
有川浩(著)、角川書店
桜祭りで一般開放された横須賀基地。多くの民間人で賑わうなか、巨大な赤い甲殻類・レガリスが大量に基地内を闊歩し、人を襲った!
基地に停泊中だった海上自衛隊潜水艦の隊員が、救助した子供たちとともに艦内に籠城するが……。
本作は「自衛隊 空・海・塩」3部作のうちのひとつ。
凶暴な甲殻類と闘う警察、機動隊、自衛隊などが様々な規制の中で死力を尽くします。
出だしから衝撃的な生物が現れ度肝を抜かれることでしょう。
さらに、子供達や警察幹部の駆け引きなど巧みに心理描写が描かれており、人間模様も面白く読むことができますよ。
パンデミックが蔓延した世界の希望は?
『パンドラの少女』
『パンドラの少女』
M・R・ケアリー(著)、茂木健(訳)、東京創元社
感染すると人を食らう「飢えた奴ら」になってしまう奇病が蔓延する世界。
臨時首都では、奇病にかかった子供達が教育されていた。その中には正常な知性を持つメラニーが。メラニーの中に奇病を治すヒントがあるのではないかと、研究者たちが解剖を試みます。メラニーは解剖寸前で逃げ出し、女性教師らとともに逃避行をすることに……。
2016年の映画「ディストピア パンドラの少女」の原作となった小説。
パンデミックが蔓延した世界の中でも、子供達には教育によって治癒できるかもしれないというかすかな希望が見えます。
子供を解剖して治療のヒントを得ようとする研究者がいる一方、血の通った人間として子供に接する教師。
荒廃の中に見える希望や、世界の終末期にあっても生きようとする人間の強さを感じさせられる作品です。
東京駅を舞台にしたパニックコメディ
恩田陸『ドミノ』
『ドミノ』
恩田陸(著)、角川書店
1億円の生命保険の契約書を持ち帰らなければならない会社員。下剤が盛られたカルピスを飲んで苦しむオーデションを受ける少女。恋人との別れを画策する青年実業家。様々な状況下にある人々が集まる昼下がりの東京駅。そこには、爆発物を持ったテロリストも……。
彼らが 1つの紙袋をきっかけに、とんでもないトラブルへ巻き込まれていく。
東京駅を舞台に繰り広げられるパニックコメディ。
ちょっとしたトラブルが大きなトラブルへと膨らみ、1つの紙袋からドミノ倒しのように緊急事態が転がっていきます。
27人+1匹と登場人物は多いのですが、それぞれが絡み合い次々と物語が転がっていくスピーディな展開にあっという間に読めてしまうエンターテインメントな1冊です。
パニック小説 の醍醐味は緊迫感!
異常気象とパンデミック、異常事態の様子を書いたパニック小説の数々。
新種のウイスルなどによる感染病や、台風・豪雨などの異常気象が珍しくなくなった今、他人事とは思えず作中の人物と同じような緊迫感を覚えます。
異常事態をどのように解決していくのか、最後まで息をつかせぬ展開を楽しんでくださいね。
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