ショートショートの名手! オー・ヘンリーのおすすめショートストーリー5選
更新日:2019/2/6
皆さんは「ショートショートの名手」といわれているアメリカの小説家オー・ヘンリーをご存知ですか?
なかには彼の作品でも有名な『最後の一葉』や『賢者の贈り物』を読んだことがある人もいるかもしれません。
数奇な人生をたどった人物ですが、庶民の哀歓を描いた作品を得意とし、ショートショートならではのインパクトある作品を多く生みだした人物です。
まずは、作家オー・ヘンリーについてご紹介します。
多くの作品を残し、波乱万丈な人生を送ったオー・ヘンリー
医者の息子として生まれたオー・ヘンリー(本名:ウィリアム・シドニー・ポーター)。
15歳以降、多様な職種に就きましたが、銀行に勤めていた頃の横領の罪で告訴され、逃亡の旅に出ることに。
のちに妻の危篤を知ったオー・ヘンリーは、家に戻ると同時に自首し、収監されてしまいます。
服役中、それまでの体験を書きとめた短編小説が「オー・ヘンリー」のペンネームで雑誌に掲載されたことをきっかけに、刑務所を出て作家活動を開始。一躍注目を集め、人気作家になりました。
最期は過度の飲酒により47歳で死亡。500編以上の作品を残しています。
波乱万丈の人生の中で多くの作品を残したオー・ヘンリー。彼のおすすめ作品をご紹介します。
『オー・ヘンリー傑作選』収録
「警官と賛美歌」
『オー・ヘンリー傑作選』
大津栄一郎(訳)、岩波書店
ある冬の寒い日に、ひとりのホームレスが自ら警官につかまろうとしていた。刑務所で待つのは暖かい寝床や3度の食事。それらを求めて無銭飲食やガラスを割るなど試みるが、なかなか捕まえてもらえない。
そして辿り着いた教会で讃美歌を聴くうち、仕事をしようと決めるが……。
楽をしようと刑務所行きを狙うホームレスが四苦八苦。しかし、その努力(?)は簡単には報われません。
心を入れ替える決意をした彼は、どんな最後を迎えるのでしょうか? オー・ヘンリーらしい、皮肉と哀愁を感じられますよ。
『O・ヘンリ短編集2』収録
「二十年後」
『O・ヘンリ短編集2』
大久保康雄(訳)、新潮社
ある小雨がぱらつく夜、警官はひとりの男に声をかけた。男は20年前に約束をした友達を待っているのだと言う。
警官がその場を離れると、ロングコートを身に纏った男が現れ……。
全く違う人生を歩んだ2人の男の皮肉なめぐり合わせの物語。
通りすがりの警官と男が初めて言葉を交わすところから伏線が敷かれ、その結末に納得させられます。
人生というものの面白さを感じられる作品ですよ。
『O・ヘンリ短編集1』収録
「よみがえった改心」
『O・ヘンリ短編集1』
大久保康雄(訳)、新潮社
天才的な金庫破りの男が、その腕を封印して銀行家の娘と婚約した。しかし、男をずっと追っていた警官の目の前で、婚約者の姪が最新式の金庫室に閉じ込められてしまう!
この金庫室を開けられるのは、この男しかいないのだが……。
「罪と覚悟」あるいは「とりもどされた改心」などのタイトルにもなっている作品。
かつて自身が収監された経験からか、オー・ヘンリーの作品には警官が出てくるストーリーが多いですね。
愛する人のために金庫破りから足を洗おうとしますが、自分の素性がばれてしまう事件が発生。
覚悟を決めることで、誰かの心が動くことがあるのだと感じさせられる作品です。
「オー・ヘンリーショートストーリーセレクションシリーズ 8」より
『赤い酋長の身代金』
『赤い酋長の身代金』
千葉茂樹(訳)、和田誠(絵)、理論社
悪党のビルとサムは、ある日大金持ちの息子を誘拐する。ところがこの息子、自分のことを「赤い酋長(しゅうちょう)」と名乗り、ビルとサムの頭の皮を剥ごうとするなど大暴れ。
2人は父親に身代金を要求するのだが……。
本書は、オー・ヘンリー作品を児童向けに出版したシリーズの1冊。イラストレーターである和田誠さんのイラストが、より想像を膨らませてくれます。
なかでも『赤い酋長の身代金』には、ユーモアと皮肉がたっぷり! ミステリー色も込められて、ショートショートとして完成された作品です。
まずはそのタイトルに惹きつけられ、駆け引きが通用しない子どもの行動に驚き、打算的な大人の考えに嘆く、とても楽しい作品になっています。
「オー・ヘンリーショートストーリーセレクションシリーズ 3」より
『魔女のパン』
『魔女のパン』
千葉茂樹(訳)、和田誠(絵)、理論社
パン屋を営む未婚のミス・マーサは、週に2、3度訪れるドイツ語訛りの客に興味がわいていた。いつも古いパンを2個買い、少し話をしていくだけ。指に付いた汚れから、きっと売れない画家だろうと推測するミス・マーサ。
ある日、パンにバターをたっぷり塗るサービスをするが……。
「おせっかいには要注意!」と教えてくれるのがこちら。憶測だけで突き進むと、本人も相手も傷つくことになるんですね……。
思いがけない結末に笑ったあと、少し苦い気持ちになるような作品です。
ユーモアと哀愁溢れるオー・ヘンリー作品を楽しもう!
オー・ヘンリーの描くショートショートは、ユーモアや哀愁を感じられるのが特徴となっています。
短編なのであっという間に読むことができ、ショートショートならではのメリハリある起承転結で、スラスラ読める作品ばかり。
日本語で翻訳された作品は200編あまり。ご紹介した作品のほかにも、オー・ヘンリーの作品を探してぜひ読んでみて下さいね。
今回紹介したオー・ヘンリーの作品
『オー・ヘンリー傑作選』
大津栄一郎(訳)、岩波書店
『O・ヘンリ短編集2』
大久保康雄(訳)、新潮社
『O・ヘンリ短編集1』
大久保康雄(訳)、新潮社
『赤い酋長の身代金』
千葉茂樹(訳)、和田誠(絵)、理論社
『魔女のパン』
千葉茂樹(訳)、和田誠(絵)、理論社
日本のショートショート作家といえば……