おいしいコーヒーが紡ぐやさしい世界。カフェが舞台の小説7選
個性的なインテリアが並ぶカフェ、動物と触れ合えるカフェ、こだわりのコーヒーを出すカフェ、深夜遅くまで開いているカフェ。
近年、素敵なカフェが急増していますが、皆さんはどんなカフェが好きですか?
特に用事はなくとも、何気なく目にするとふらっと立ち寄ってしまいますよね。お気に入りのカフェで自分だけの特等席を決めている人も多いかもしれません。
今回は、読んでいるうちについカフェに行きたくなってしまうような、カフェが舞台の小説をご紹介。
読めばきっと、優しくほっこりした気分になりますよ。
『コーヒーカップ4杯分の小さな物語』
佐藤嗣麻子,川口葉子,青目海,柚木恵
『コーヒーカップ4杯分の小さな物語』
佐藤嗣麻子、川口葉子、青目海、柚木恵(著)
書肆侃侃房
4人の女性が綴る4つの物語は、1つの物語がちょうどコーヒー1杯を飲み終わる長さのショートストーリーです。
報われない愛、老姉妹の営む古い喫茶店、モカマタリの香り、コーヒーとブログ。
著者は、脚本家や詩人であり、コーヒーに愛を持っていらっしゃいます。同じコーヒーでも物語に登場するコーヒーの見せ方はどれも個性的で違う味がしそうです。
どの物語もコーヒーのように少しほろ苦く、優しい気持ちにさせてくれる温かさが感じられます。
読んでいるうちにコーヒーを飲まずにはいられなくなるのでご注意を。
忙しい日常にホッと一息つきたい、カフェでのくつろぎタイムのお供にぴったりな作品です。
『虹の岬の喫茶店』
森沢明夫
『虹の岬の喫茶店』
森沢明夫(著)、幻冬社
心に傷を抱えた人たちが、吸い込まれるようにその喫茶店を訪れる。
小さな岬の先、富士山も一望できるその喫茶店には店主・悦子さんがいた。
悦子さんは、店を訪れたその人にぴったりな音楽を選んでくれます。
おいしいコーヒーと、素敵な音楽。そして、優しく、ときに厳しく背中をそっと押す言葉を与えてくれるのです。
誰にでも起こりうることだけれども、誰だってそんなちょっとしたつまずきに悩み傷つき、それを受け止めてくれる場所……。
じんわり涙を誘い、ささくれた心を癒してくれる、そんな物語が詰まった短編集です。
人生に迷ったとき、悲しいことがあったとき、そっと寄り添ってくれる悦子さんの言葉を読んでみてください。
モデルとなった喫茶店は実在しています。この本を片手に探してみるのもいいかもしれません。
『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』
古内一絵
『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』
古内一絵(著)、中央公論新社
夜23時に開く夜食カフェ「マカン・マラン」を営むのは、元エリートサラリーマンでドラァグクイーンのシャール。
野菜たっぷりの健康的な夜食を出しつつ、来店する人々の心を癒してくれます。
なぜ、エリートサラリーマンという肩書きを捨ててドラァグクイーンに? なぜ健康志向な夜食カフェを?
一風変わった設定ですが、シャールの言葉は後ろ向きな気持ちをハッと気づかせてくれる魅力を持っています。
それはシャール自身の過去があるからこそ出てくる言葉なのかもしれません。
何か満たされない、生き辛い、そんなときはマカン・マランの扉を開いてみてください。
続編も出ており、気になるシャールのその後や引き続き出てくる登場人物にも注目ですよ。
⇒シリーズ作品はこちら!
『海岸通りポストカードカフェ』
吉野万理子
『海岸通りポストカードカフェ』
吉野万理子(著)、双葉社
横浜みなとみらいにある、壁一面にポストカードが貼られた不思議なカフェ。
誰かに伝えたい思いをポストカードに綴り、カフェ宛に送ると、大切に保管しておいてくれるのです。
そんな一見風変りなカフェの常連さんたちのショートストーリーが少しずつ繋がっていきます。
年賀状もパソコンやスマートフォンで作り、送れるようになった現在。誰かに手書きで手紙やはがきを送ることは少なくなりました。
だからこそ、ポストカードの変化していく風合いや手書きの持つ味が心打つものがあるはず。
相手に言葉で伝えることの大切さを思い出させてくれる作品です。
カフェのまったりとした空気感が漂ってくるような描写は、カフェ好きさんには必見ですよ。
『カフェかもめ亭』
村山早紀
『カフェかもめ亭』
村山早紀(著)、ポプラ社
風早の街にある、クラシカルな趣の「カフェかもめ亭」。
カフェのマスターである広海は、船乗りだった曽祖父からこの店を引き継ぎました。
来店するお客さんたちはみな、ちょっと現実世界ではあり得ないような不思議な話を繰り出し……。
登場するのは人魚や吸血鬼、猫の王子などファンタジーな世界設定が広がっています。まさに魔法にかかってしまったかのよう。
8話からなる短編集で、童話のような温かい内容が殺伐とした社会に疲弊したわたしたちを癒してくれるでしょう。
大人な苦いコーヒーというよりは、ほんのり甘くて優しいミルクティーが飲みたくなるかもしれません。
心が疲れて人に優しくできないときに読みたい、大人向けの童話のような1冊です。
⇒シリーズ作品はこちら!
『院内カフェ』
中島たい子
『院内カフェ』
中島たい子(著)、朝日新聞出版
小説家志望の間りん子は、総合病院にあるカフェでアルバイトをしています。そこは、ちょっとした事情を抱えた人たちが集うカフェでした。
介護を続けた妻と病気に悩む夫や、医者らしからぬ医者など、病院に併設されたカフェらしい客層でさまざまな人間模様が垣間見えます。
現実的な問題が取り上げられているので少々重い部分もありますが、だからこそカフェが人々に与える安らぎは計り知れないものがあるでしょう。
生と死が行き交う病院で、それぞれの悩みをも一身に受け止めるカフェという存在はなくてはならないもの。
小さな空間であっても、病院に関わる人たちにとっては大切な場所なのです。
家族や人生を考えたとき、ちょっと立ち止まって考えさせられる作品です。
『砂漠の青がとける夜』
中村理聖
『砂漠の青がとける夜』
中村理聖(著)、集英社
東京で働いていた瀬野美月は、亡き父親の残したカフェを継いだ姉を手伝うために京都へ引っ越します。
周りとなかなか馴染めないまま何となく過ごす美月。そんなおり、カフェに中学生の少年が訪れるようになり……。
小説の表紙のように、ふんわりと優しい水色の空間に包まれるような、不思議な感覚の世界です。
食べ物の表現も繊細で、穏やかな時間の流れるカフェの情景が浮かんでくることもあれば、鋭い描写でドキリとさせられることも。
夢の中なのか現実なのか、京都という場所がそんな雰囲気にさせているのか、美しい言葉で物語は綴られています。
静かな気持ちになりたいときにおすすめな作品です。
カフェという小さな空間が教えてくれる安らぎ
カフェは、友人とおしゃべりを楽しんだり、一人でゆっくりとくつろいだり、読書を楽しんだりと、目的はさまざまです。
きっと誰しもが安らぎを求めてカフェに訪れているのかもしれません。
どんなカフェでも、自宅とは違う居心地の良さがあり、知らず知らずのうちに長居してしまいます。
また、かぐわしいコーヒーの香りや程よい賑やかさは、それだけでどこかホッとさせてくれます。
心が疲れたら、嫌なことがあったら、ゆっくり本を開いて一息いれてみませんか?
今回紹介した書籍
『コーヒーカップ4杯分の小さな物語』
佐藤嗣麻子、川口葉子、青目海、柚木恵(著)
書肆侃侃房
『虹の岬の喫茶店』
森沢明夫(著)、幻冬社
『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』
古内一絵(著)、中央公論新社
『海岸通りポストカードカフェ』
吉野万理子(著)、双葉社
『カフェかもめ亭』
村山早紀(著)、ポプラ社
『院内カフェ』
中島たい子(著)、朝日新聞出版
『砂漠の青がとける夜』
中村理聖(著)、集英社
コーヒーのおともに小説はいかがですか?