タイムリープやタイムトラベル!「時空もの」小説の傑作
更新日:2019/2/26
過去や未来を行き来する時空ものの小説は、日常では味わえない世界を楽しめるのが魅力ですね。子供はもちろん、大人になっても「こんな世界があったら……」なんて空想に浸るのは楽しいものです。
小説のジャンルの中にはタイムリープなどを扱う「時間もの」があります。
そのなかでも特に根強い人気があるのが「ループもの」。「ループもの」とはループする時間の中で起きる出来事を描いた作品です。
ここでは、タイムリープ・タイムトラベルが登場する不思議な世界を描いた小説の中から、厳選した5冊をご紹介します。
1日を何度も繰り返す…あなたは耐えられますか?
『ターン』
『ターン』
北村薫(著)、新潮社
仕事で同じような毎日を繰り返してばかり……と自覚していた頃の私がハマった1冊です!
ある夏の午後にダンプと衝突してしまった真希。気づくと自宅の座椅子で目覚めます。
一見いつも通りの世界なのですが、どこまで行っても真希以外、誰1人いない世界になっていました。
その日から、1日をどう過ごしても、また同じ1日が訪れるループの日々が始まってしまいます。次第に無気力・絶望感に襲われる真希に、突然電話がかかって来ます。
孤独な世界に押しつぶされそうになる真希が、必死で希望や未来を描こうとする――。読んでいくうちに、いつしか自分自身を重ねていました。自分も頑張ろうと無理せずに思えた、素敵な物語です。
『ターン』は北村薫氏の『時と人 三部作』のひとつで、他に『スキップ』と『リセット』があります。『ターン』と同じく時空をテーマにしているので、気に入ったらこちらも読んでみてください。
王道だけどやっぱり名作
『時をかける少女』
『時をかける少女 新装版』
筒井康隆(著)、角川書店
タイムリープというとこの作品を連想する方も多いはず。
ある日突然、時間を超越する能力を身につけた高校生の少女が、様々な体験を重ねていく物語です。
私がこれを初めて読んだのは中学生の頃で、SFに青春・恋愛なども盛り込んだ胸キュンな展開に、一気に引き込まれたのを覚えています。
かなり頻繁に映像化されている作品でもあります。1983年に原田知世さん主演で映画化、1994年に内田有紀さん主演でドラマ化され、2006年には細田守監督によりアニメ化されて話題になりました。
それぞれの作品で物語の設定・展開・結末がちょっと違うので、その違いを楽しんでみるのもおすすめです。
手に汗握る感覚&結末の感動がたまらない!
『オーロラの彼方へ』
『オーロラの彼方へ』
トビーエメリッヒ(著)、竹書房
刑事のジョンがある日無線で交信した相手は、なんと30年前の世界にいる亡くなった父親でした。しかも事故で死ぬちょうど一日前というタイミングです。父親を救うため、ジョンは無線交信を使って様々な手を尽くします。果たして父親を救い、過去・そして現在を変えることはできるのか……。
オーロラの彼方へは、時空もの+親子の絆+サスペンスが入り混じった傑作です。手に汗握る感覚と、結末で訪れる感動はもうたまりません。
2000年には、デニス・クエイドさん主演で映画化されました。小説とはちょっと設定やストーリー展開が違いますが、感動ものの展開には変わりなし! 小説を読んだらぜひこちらも見てください。
私は小説でも号泣し、映画ではデニス・クエイドさんの熱演にまたしても号泣してしまいました。
猫×SFの傑作
『夏への扉』
『夏への扉』
ロバート・A・ハインライン(著)、早川書房
1956年にアメリカの小説家、ロバートA.ハインライン氏が発表したSF小説。初めて聞いた方も多いかもしれませんが、今の時空もの小説のおおもとを作ったとも言える作品のひとつです。
主人公の青年であるダンの愛猫ピートは、冬になると家じゅうのドアを開けてくれとせがみます。それは、扉のどれかが楽しく明るい夏へと続いていると信じているから。
そしてダンもまた、夏への扉を探すというストーリーです。
ダンが途中まで悲惨な状況で、裏切りや発明アイデアを奪われるなど様々な絶望的な出来事に見舞われ、さらに2000年まで冷凍睡眠させられてしまいます。
その後偶然出会った科学者のタイムマシンを見つけ、原因を探るために過去へ。過去と未来を行き来しながら、すべてが明らかになっていく展開です。
西暦2000年が未来として描かれていますが、1956年発表であることを考えるとうなずけます。愛猫ピートの可愛らしさにも注目してみてください。
ロマンティックな展開で読みやすく、題名の通りひと夏に楽しむ小説としてもおすすめです。
思わず涙してしまいます
『青天の霹靂』
『青天の霹靂』
劇団ひとり(著)、幻冬舎
芸人の劇団ひとりさんが書いたタイムトラベル小説。過去の世界にワープして、自分の生い立ちを目の前で体感することになるというお話です。
赤ちゃんである自分に注がれるたくさんの愛情を知る主人公。それまで、自分なんてどうでもいいやと半ば投げやりになっていた心境が、少しずつあたたかい方向へ変化していく様子が描かれます。
読み終える頃には、とてもスッキリした爽やかさとあたたかみと若干の切なさ。この絶妙なバランスが何とも言えず心地よいです。
2014年には大泉洋さん主演で映画化されました。Mr.Childrenの主題歌「放たれる」が流れるラストシーンでは、感動の涙が……。
同じ毎日を繰り返す。
『秋の牢獄』
『秋の牢獄』
恒川光太郎(著)、角川書店ほか
どこにでもいる女子大生の「私」は、ある秋の1日をひたすら繰り返します。
彼女はループする時間から抜け出すため、行動や環境を変えてみますが、まるで上手くいきません。そんなあるとき、「私」に転機が訪れます。
作者の恒川光太郎さんは、自分の世界観を持った作家です。彼の作品は、デビュー作の「夜市」から一貫して静謐かつ美麗な雰囲気を持って語られています。
本作秋の牢獄は、文章から秋の香りが匂い立つような、美しい話となっています。
ループものならではの登場人物の心情もその端正な文体でつづられ、読後は少しの切なさと爽やかさが胸に残るようなそんな作品となっています。
本作は表題作でありループものである秋の牢獄の他に2編が収録された中編集。幻想的な恒川ワールドを堪能できる1作です。
何度も繰り返す3月2日。
『空ろの箱と零のマリア』
『空ろの箱と零のマリア』
御影瑛路(著)、アスキー・メディアワークス
1万回以上同じ時を繰り返している音無彩矢。彼女はそのループの中でどうしても起きてしまう「とある事故」を食いとめるため、1人で奔走しています。
そんな折、主人公の「僕」は自分の日常に違和感を覚え、時間がループしていることに気づきます。そして、音無彩矢と事故を食いとめるため、ループから抜け出すため、協力していくのですが……。
何万回も繰り返す3月2日。本作はそのループする時間を非常に斬新な構成を持って描いています。
それというのも本作はループものとしては珍しい「時系列シャッフル」が頻繁に行われているのです。例えば1万回目の3月2日のあとに1000回目の3月2日が挿入される、というような。
その構成によって、読み進めていくにつれパズルがはまっていくような快感を得ることができます。
次第に明かされていく謎。繋がっていく伏線。本作はループものの醍醐味がこれでもかというほどつまった作品となっています。
ループもの×本格ミステリー
『七回死んだ男』
『七回死んだ男』
西澤保彦(著)、講談社
主人公の高校生「僕」は、1日を9回繰り返してしまう現象「反復の落とし穴」にはまりこむことがあります。
「反復の落とし穴」にはまりこむのは毎日ではなくランダムで、いつはまりこむのか「僕」自身もわかりません。
そんなある日、祖父が亡くなってしまいます。「僕」は、繰り返す時間の中で祖父の死の原因を探りはじめます。
本作は、なぜ祖父が死んでしまったのかを「僕」が推理し、食いとめようとする本格ミステリー作品。
ファンタジー的設定やSF的設定を使って本格ミステリーを書くのは非常に難しいものがあります。それというのも、そういった設定は時として話を「なんでもあり」にしてしまうからです。
しかし本作は、その困難を見事にやってのけます。ルールを明確にすることで、ループというSF的設定を使いつつ本格ミステリーとして話を成立させているのです。
ループものが読みたい方だけでなく、ミステリー好きにもおすすめします!
異世界ファンタジー×ループもの
『Re:ゼロから始める異世界生活』
『Re:ゼロから始める異世界生活』
長月達平(著)、大塚真一郎(絵)
KADOKAWA
引きこもりの高校生スバルは、コンビニから帰っている途中、異世界に召喚されます。そこでスバルは、自分を助けてくれたエミリアの探し物を手伝うことに。
やがて盗品蔵に足を踏み入れたとき、何者かに襲われたスバル。次に目を覚ますと、そこはなぜか昼間いた街の中だった……。
本作が面白いのはなんといっても、ループものに異世界ファンタジーを組み合わせた斬新な設定です。
魔法や亜人が当たり前のように存在する世界。そこで、ループする時間を奔走する主人公。先の展開が読めず、次に何が起こるのかわからないページをめくるのが楽しい作品です。
アニメも放送された人気ライトノベルシリーズ。まずは1巻だけでも手にとってみてはいかがでしょうか。
時空もの小説を読んでファンタジー感覚を楽しもう!
タイムリープ・タイムトラベルものは、現実離れしている設定を楽しめます。また、同時に人の心のあたたかさを描いた、感動できる作品も多いです。
今回はハートウォーミングさも感じられる作品を中心に選んでみました。
どの作品も楽しいエンターテインメント作品です。あなたの知らない新しい世界のドアが、少し開くかも……?
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