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手塚治虫の隠れた名作|マンガの神様!手塚治虫の傑作から厳選


更新日:2019/9/19

漫画の神様と呼ばれる、手塚治虫さん。

手塚さんといえば『火の鳥』『ブラック・ジャック』『鉄腕アトム』『リボンの騎士』などが有名ですが、ほかにもさまざまな作品を遺しています。

手塚さんの漫画は傑作ばかりですが、今回はその中でも「隠れた名作」をご紹介します。

意外な作風の作品もあるので、参考にしてみてください。

 

悪魔のような男を描くピカレスク
『MW
(ムウ)』

『MW(ムウ)』表紙

MW(ムウ)
講談社

結城がまだ幼かった頃、訪れたとある離島で化学兵器ガス「MW(ムウ)」が漏れ出し、島民が全滅。結城は死を免れたものの、良心のまったくない悪魔のような人格になってしまう。

ガス漏れ事件を揉み消した人物に次々と復讐していく結城。自分の死期が近いと悟り、全人類を巻き添えにしようと企む――。

 

悪魔のような心を持った主人公による、ピカレスク(悪党)作品です。

手塚作品には多くの悪役が登場しますが、誰しも弱みや躊躇があるものです。
ところが結城にはひとかけらの良心もなく、美しい顔立ちと甘い言葉で男性も女性も誘惑し、用がなくなれば簡単に殺してしまいます。

手塚さん自身があとがきで「あっけにとられるようなピカレスクドラマを書いてみたいと思った」と述べているように、暴力・裏切り・強欲など、あらゆる社会悪が描かれた問題作です。
結城の最期がどうなるのか、ぜひ確認してみてください。

 

地下牢に閉じ込められた少女の出生の秘密
『奇子』

『奇子』表紙

奇子
角川書店

戦地から戻った天外仁朗は、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)から、ある男を殺すよう命じられる。そして天外家の末っ子である奇子(あやこ)は、一族の体面を守るために、地下牢に閉じ込められ、死んだことに……。

男たちが嘘と罪を重ねるなか、奇子は美しく成長を遂げ、20年ぶりに外の世界を見ることになるが――。

 

舞台は戦後の日本。東北地方の大地主、天外(てんげ)一族の崩壊を描いた作品です。
戦後の激動の時代を背景に旧家の閉塞感を描き、人間の欲望とタブーが存分に盛り込まれています。

奇子の出生には、知られてはならない秘密があります。
手塚さんのほかの作品に見られるような愛や正義あふれる展開を期待しながら読むと、ショックを受ける人もいるかもしれません。

しかしながら、人間の闇を徹底的に描いた緻密なストーリー展開には目が離せず、読み進めてしまう魅力があります。
手塚作品をあまり知らない人にこそ、読んでもらいたい重厚な物語です。

 

『鉄腕アトム』のセルフリメイク!
『アトムキャット』

『アトムキャット』表紙

アトムキャット
秋田書店

いじめられっ子のつぎ夫は、汚れた子猫を拾い、アトムと名付けて飼い始める。

ある日、地球を訪れていた宇宙人との交通事故に遭遇し、アトムは死亡。ところが地球の生き物のことをよく知らない宇宙人の勘違いにより、鉄腕アトムの「7つの力」を持つアトムキャットに改造されてしまい――。

 

誰もが知る手塚さんの代表作『鉄腕アトム』のセルフリメイク作品。作品の随所に、昔の漫画として鉄腕アトムが登場します。

能力を手に入れたアトムが、つぎ夫のピンチを救っていく。そんな楽しい雰囲気の中にも、自然破壊や人間の身勝手な振る舞いを批判する手塚作品らしさがあります。

無邪気で賢いアトムがつぎ夫のために奮闘する描写がたいへん可愛らしく、こんな猫がうちにもいたら良いのに! と思わせる作品です。

 

知能を持つ鳥が支配する未来の地球
『鳥人大系』

『鳥人大系』表紙

鳥人大系
角川書店

鳥人類の社会では、人間の知能が退化。そして、家畜として飼われるようになっていた。これは、「人類が地球の支配者にふさわしくない」と考える、地球外の高等生命により仕組まれた計画だった。

ところが文明の発展とともに、鳥人類にも差別・格差・種族間といった争いが絶えなくなり――。

 

高等な知識を持つ鳥が現れるようになり、やがて地球の支配者が、人類から鳥類に変わっていく未来を描いたSF作品です。

鳥の支配が始まる序盤は一話ごとのオムニバス形式で、異なる作風の作品が鳥人類の物語に繋がっていく、不思議な構成です。そして、新たな支配者に選ばれた種族にも驚かされました。

文明が進化しても差別や戦争がなくならない現実を批判しており、読後は人類の行く末を考えさせられます。

 

戦国時代が舞台の『ファウスト』
『百物語』

『百物語』表紙

百物語
集英社

お家騒動のとばっちりで切腹を命じられた武士の一塁半里は、自分の命と引き換えに3つの願いを叶える契約を、悪魔の娘スダマと結ぶ。

命拾いした半里は、不破臼人(ふわうすと)に名前を変え、天下一の美女を手に入れるためにスダマとともに旅に出た――。

 

ゲーテの古典作品『ファウスト』を下敷きに、舞台を戦国時代に変えて描かれた作品です。

戦国時代、悪魔との契約、妖怪や妖術といった要素があり、手塚さんの有名作品『どろろ』に似た世界設定の作品です。

スダマの健気なサポートもあり臼人は出世していきますが、人生に満足することは、魂との引き換え(=死)に近づくことでもありました。
果たして、臼人は天下一の美女を手に入れることができるのでしょうか?

 

手塚作品は名作ばかり!

手塚治虫さんの隠れた名作をご紹介しました。可愛いロボットが活躍するファンタジー作品から欲望渦巻くサスペンス作品まで、ジャンルの幅の広さに驚かされますね。

興味を引くものがあれば、ぜひ一度読んでみてください。

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