ブックオフオンラインコラム
ブックオフオンライントップへ
ブックオフオンラインコラム > 本に出会う > 大人コミック > 藤子・F・不二雄の「SF短編集」が凄い|後味の悪さを感じる6作品を紹介

藤子・F・不二雄の「SF短編集」が凄い|後味の悪さを感じる6作品を紹介


【SF短編集】 藤子・F・不二雄

漫画家、藤子・F・不二雄さんと言えば、日本の代表的漫画家のひとり。特に「ドラえもん」や「パーマン」、「キテレツ大百科」といった漫画は有名ですよね。

さて、そんな子ども向け作品のイメージが強い藤子・F・不二雄さんですが、大人向けのダークな作品も描かれています。

それが「SF短編集」。“すこし・ふしぎな”この作品は、短編ながら非常にメッセージ性が強く、中には精神的恐怖を感じるブラックな展開のものもあります。

ここでは、筆者が特に印象的だった6作品をご紹介しましょう。

 

もしも○○だったら… 別の角度から見えてくるものとは

ミノタウロスの皿 (藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編(1)に収録)

◆ストーリー◆

宇宙船が故障してしまい不時着した主人公は、偶然出会った少女・ミノアに助けてもらうことに。

しかし、地球によく似たこの「イノックス星」は、牛のような姿のズン類が支配する世界。
ミノアたちは「ウス」と呼ばれ、ズン類に食用、愛玩用として飼育されていたのでした。

 

気楽に殺ろうよ (藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編(1)に収録)

◆ストーリー◆
朝、新聞を取りに行こうとしたら原因不明の激痛が。しばらくすると痛みは治まったけれど、なにやら周りの様子がおかしい。

食欲と性欲に対する考えが逆転し、殺人が公認された世界。納得いかない主人公は、病院に連れていかれてしまい…。

 

この「ミノタウロスの皿」と「気楽に殺ろうよ」で描かれている価値観の違い。
私たちが当たり前だ、常識だと思っていることが、もし違っていたら……世界はこんなにも変わってしまうのか!と驚かされました。

食べられる側の視点を描いた「ミノタウロスの皿」
生命の尊重とはなんなのか問う「気楽に殺ろうよ」

どちらの話も考えさせられますね。

 

前半からは想像できない、ゾッとするラスト

ヒョンヒョロ (藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編(4)に収録)

◆ストーリー◆
幼いマーくんが大きなウサギにもらった手紙。なんとそれは誘拐を予告したものでした。

大ウサギが要求しているのは“ヒョンヒョロ”というもの。しかし、誰もそのヒョンヒョロが何なのかわかりません。

大ウサギの言動も支離滅裂で、わからないまま時間はどんどん過ぎていき――。

 

コロリころげた木の根っ子 (藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編(1)に収録)

◆ストーリー◆
新人編集者の西村は、運悪く、結婚記念日に暴君で有名な小説家・大和の原稿を受け取りに行くことに。

締切直前まで仕事をしない大和は、完成するまで西村を家に留めます。しかし、どうも家の様子がおかしくて……。

 

思わず「うわぁー…」と言ってしまうようなラスト。とてもドラえもんを描いている作者とは思えないブラックさです。

特にヒョンヒョロは前半がコミカルだったので、この展開は予想していませんでした。この後主人公たちはどうなってしまうのか?想像するとゾッとします。

 

まさか…未来を予想している!?リアルすぎる世界

間引き (藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編(1)に収録)

◆ストーリー◆
コインロッカーの管理人をしている主人公。最近は妻も素っ気なく、夫婦の愛情など感じられない。

そんなある日、訪れてきたひとりの新聞記者。
赤ん坊をコインロッカーに捨てる事件について取材する新聞記者は、事件が多発する理由について「人間の間引き」の仮説をたてるのでした。

 

定年退食 (藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編(1)に収録)

◆ストーリー◆
高齢者の人口増加による年金給付の問題、医療供給、さらに原因不明の汚染地域の拡大による食糧不足と、問題が山積みになってしまった政府。

とうとう“一定年齢以上の高齢者に対する食糧配給と医療支援の打ち切り”を定めた法案を可決してしまいます。
支援打切りの対象になった主人公は同じ境遇の老人と出会い……。

 

後味の悪いラストをむかえるこの2作品。

少子高齢化、年金問題、殺人や愛情の薄弱と、決して漫画の中だけの問題ではないところが怖いですね。10年後、20年後、本当にこんな世界になってしまうのではないか?と感じてしまいます。

これが本当の出来事になってしまわないようにしていかなければいけませんね。

 

一度は読むべき名作

『SF・異色短編集』

このSF短編が描かれたのが1970年ごろ。しかし、とても45年も前の作品とは思えません。

これまでになかった着眼点、まるで未来を見てきたかのようなリアリティのあるストーリー、短いながらもどの作品も印象深く、読めば読むほど藤子・F・不二雄さんのすごさを感じます。

「間引き」や「気楽に殺ろうよ」以外にも考えさせられる作品が多く、大人にこそ読んでもらいたい内容ですね。

藤子・F・不二雄さんの漫画を実際に読んだことがない人も、もちろんファンの人も、ぜひ一度読んでみてください!

【こちらもオススメ!】手塚治虫作品の「短編集」漫画ランキング

今回ご紹介した漫画作品

藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編
藤子・F・不二雄(著)、小学館

 

ライター

イワモト
イワモト
ゲームを見るのもするのも好き!でもマリオの1-1すらクリアできないどヘタな20代。現在フリーホラーゲームにはまり中。たまに着物を着てます。