年の差カップルを描く大人の恋愛小説 おすすめの名作たち
星の数ほどある恋愛小説。さまざまな関係性やシチュエーションが存在しますが、今回のテーマは「年の差カップル×恋愛小説の名作」。
ピックアップした作品は、すべてベストセラーとなった有名作品ばかりです。
年の差を描いた恋愛小説という共通点はありながらも、ノスタルジーを味わえるプラトニックな作品、老いも含めて相手を愛すゆったりとした作品、官能的な禁忌を描いた作品。痛快で後味がスッキリとする作品の順に紹介しています。
ぜひお好みに合わせて読んでみてください。
高校時代の自分を救ってくれた先生との叶わぬ恋
『ナラタージュ』
『ナラタージュ』
島本理生(著)、角川書店
本屋大賞選出作品。大学生の”泉”が、高校時代の自分と”葉山先生”のつながりを追体験する物語。
高校時代、いじめに遭っていた泉の心を救ってくれた葉山先生。一方で、葉山先生も秘密を抱えており、泉と接することで心を救われていました。互いに好意を持っていた二人でしたが、葉山先生は結婚していて……。
一言で言うと『大人を感傷的にさせる作品』。プラトニックな恋に、どこか懐かしい気持ちになるのです。
作中、「私があなたのことを気にかけたり、いまだに執着しているのは、自分が1番つらかったときに、今みたいに助けてもらったせいじゃないかって」と泉が言うシーンがあります。もしかすると、読者のなかには封印していた過去の感情や記憶を思い出す方がいるかもしれませんね。
切なくも温かい恋愛小説
『センセイの鞄』
『センセイの鞄』
川上弘美(著)、文藝春秋
谷崎潤一郎賞受賞作品。37歳・独身の”ツキコ”と、高校時代の国語教諭の”センセイ”の物語。
二人が再会した場所は、駅前の一杯飲み屋のカウンター。まぐろ納豆、蓮根のきんぴら、塩らっきょうと同じタイミングで同じものを頼んだ隣のご老体を、趣味の似た人だなとツキコが眺めるシーンから物語ははじまります。
二人の年の差は30歳以上。ですが、その年齢差を懸命に埋めようとしないーあくまでも自然体で、あるがままの老いを受け入れながら、穏やかな愛を育んでいく二人。30代と70代の恋愛において、この関係性はなかなかに珍しいのではないでしょうか?
ゆるやかで穏やかな恋愛小説を読みたい方にオススメです。
親子となった二人の禁断の愛
『私の男』
『私の男』
桜庭一樹(著)、文藝春秋
直木賞受賞作品。24歳の”花”と、40歳の養父”淳悟”の約15年間を回想する物語。
震災孤児となった花を引き取ったのは、遠縁の親戚だった淳悟でした。愛情に飢えた二人は、心身ともに互いに依存していきます。
「親子のあいだで、しちゃいけないことなんて、この世にあるの?」「誰よりも、大切なのに」。家族の性愛というタブーにフォーカスした問題作です。嫌悪感を感じる人もいるかと思います。
ですが、本書が直木賞受賞作品であることも事実です。選考委員の北方謙三さんいわく「あえてこれを受賞作として世に問うてみよう-という結果になった」。禁忌までも芸術へと昇華させる桜庭さんの資質をぜひ味わってみてくださいね。
勉強が全てではない、主人公に共感!
『ぼくは勉強ができない』
『ぼくは勉強ができない』
山田詠美(著)、文藝春秋
高校2年生の”秀美”は、勉強ができないフリをした、頭の賢い劣等生。彼女は年上の”桃子さん”。
この作品、とにかく痛快です。学校の廊下で避妊具を落とした秀美を「だから勉強ができないんだ」と叱る先生に、秀美は「ぼくは、まだ若くて、彼女に子供が出来ても育てていける筈がない。だから、こういうものを使うんだ。何故かって、真剣だからです。真剣だから、彼女の体を気づかうんです」と言ってのけたり。
母子家庭であることを触れられたときは「女手ひとつだと、母親は、そんなにも辛酸を舐めなきゃいけないって決まってるんですか? その子供は、必ず歪んだ育ち方をするんですか? 人間って、そんなもんじゃないでしょう」と言ったり。
秀美が言う言葉はまさに正論なんですね。いつだって大人が正しいわけではないし、無意識に勝手な決めつけや偏見を持っていることも多いのです。
スカッとした気持ちになるのと同時に、こういう大人にならないように気をつけよう……と教訓にもなった作品です。
さまざまな恋愛が描かれる小説の数々
年の差カップルをテーマにした作品でも、その切り口は大きく異なります。
どの作品もベストセラーとされた有名作品であり、多くの人に支持されるのも納得の作品なので、ぜひ全部読んでいただきたいと思います。ぜひ、お好みの作品から読んでみてくださいね。
今回ご紹介した書籍
『ナラタージュ』島本理生(著)、角川書店
『センセイの鞄』川上弘美(著)、文藝春秋
『私の男』桜庭一樹(著)、文藝春秋
『ぼくは勉強ができない』山田詠美(著)、文藝春秋
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