宮沢賢治の作品を「絵本」で読もう!
更新日:2020/1/17
宮沢賢治の作品を読んだことはありますか?
もし「読んだことがない」「小説を読むのが苦手」であれば、絵本で読んでみてはいかがでしょうか。
宮沢賢治の故郷である岩手県を彷彿とさせるような情景描写や、不思議なキャラクターなど、絵本だからこそ生まれる魅力があります。
子供と読むのはもちろん、大人が1人で読むのも日常を忘れられて良いものですよ!
ここでは、絵本で読みたい宮沢賢治の作品をご紹介します。
不思議、だけど楽しい
『やまなし』
『やまなし』
宮沢賢治を絵本で読むなら、真っ先におすすめしたいのがこの作品です! 絵本にすることで、透明感のある清流の様子がとても分かりやすくなっています。
「クラムボン」など、何のことか分からない不思議な描写が楽しい作品。5月と12月の2部に分かれており、川底に住むカニの兄弟の会話をベースに、綺麗で透き通るようなキラキラした川底の様子が描かれています。
カニの兄弟から見た水中風景の幻想的な美しさは本当に魅力的です。自分も同じ場所からこんな風景を見たいなと思わせてくれますよ。
大きな魚やかわせみなど、生と死を感じさせる描写にドキッとさせられて、それも良いアクセントになっています。
おかしな裁判の判決やいかに?
『どんぐりと山猫』
『どんぐりと山猫』
宮沢賢治が遺した作品の中でも、不朽の名作として名高い作品です。
少年の一郎が、山猫が手を焼いていた裁判の手伝いをするストーリー。物語の舞台は、少々お堅いイメージがある裁判所です。
しかしそこで待っているのは、「誰が一番偉いのか」で揉めているどんぐりたち! しかも、裁判の内容や参加者たちの発言は、滑稽さを感じさせるものばかりです。
これだけでも、どんな面白い展開が待ち受けているのかワクワクしますね。
判事である山猫は、どのような判決を下すのでしょうか?
幻想的な世界が広がる
『黄いろのトマト』
『黄いろのトマト』
とある博物館内に展示されている蜂雀(はちすずめ)の剥製が、昔の出来事を回想する形で物語が進みます。
話の中心は、幼い兄ペムペルと妹ネリが、丹精込めて育てていた立派な黄色いトマト。鉢雀は、しきりに2人の幼い兄妹をかわいそうだと語っていますが、それには深いワケがありました。
純真無垢な幼い子供たちの息づかいまで聞こえてきそうな、臨場感あふれる描写が魅力的な作品です。まるで、映画を見ているような感覚になります。
兄妹にとって黄色のトマトは黄金と同じ。だけど、トマトは決してお金ではありません。とっても不思議な物語なのですが、読後はとても切なく、やるせない気持ちになりました。
花と美しい言葉で癒やされる
『花の童話集』
『花の童話集』
花を題材とした宮沢賢治の作品のうち、『まなづるとダァリヤ』など6つの短編がおさめられている絵本です。
お子さんと一緒に1日1編ずつ、感想を交わしながらじっくりと読み進めてみるのもおすすめですよ。
独特の感性が光る比喩に驚かされたり、美しい言葉の数々に感動したり。なかには、「めくらぶどう」など、普段はあまり目にすることがない珍しい花も登場します。
自然の美しさや儚さ・生命力などを、宮沢賢治というフィルターを通して感じてみませんか。
どこか懐かしい版画絵本
『雪渡り』
『雪渡り』
『雪渡り』は、さまざまなテイストの絵本として出版されています。なかでも、豊かな自然の風合いが楽しめる作品が佐藤国男さんが手掛けた版画絵本です。
木目を生かして描いた自然の風景や草木は、躍動感に満ちています。愛らしい動物や子供たちも登場し、版画を見ているだけでも、ほっこりと温かい気持ちにさせてくれますよ。
動物たちが子供に対して、愛することや自然界のすばらしさを教えてくれる物語。大人になっても忘れずに持ち続けておきたい思いやりの心や、相手と理解し合うことの大切さを再認識させてくれます。
生まれ故郷の懐かしい風景を思い出す方もいらっしゃるかもしれません。
爽快感あふれる物語
『風の又三郎』
『風の又三郎』
宮沢賢治作品のなかでも、独特な擬音を使った書き出しが有名な『風の又三郎』。ある小学校に突然転校してきた少年・三郎の身のまわりで起こる出来事を中心に、物語は進んでいきます。
ガラスのマントをまとった三郎の正体は何だったのか? 推理力を働かせながら読む楽しみもある作品です。
子供が持つ素直な心でしか感じ取れない美しい世界を、この絵本を通じて思い出してみませんか。大人になってから改めて読み直してみると、一味違う楽しさがあるかもしれません。
親子の愛が溢れる作品
『いちょうの実』
『いちょうの実』
秋の空を彩るいちょうの木をお母さん、その木の実をたくさんの子供たちとして擬人化し、物語が展開していきます。
とうとうやってきた旅立ちの日に、いちょうの実の子供たちは、どんな行動をするのでしょうか。
親元から旅立つ子供たちの心境や、それを送り出す母親の心境が繊細かつ丁寧に描かれ、親子の深い愛情が感じられる作品です。
思いやりや感謝の気持ちがあふれる自然な会話のやりとりが、ほっこりと温かい気持ちにさせてくれます。
卒業など大切な人生の節目を迎える前に、親子そろって読んでみませんか。
ゴーシュと動物たちのと掛け合いが面白い!
『セロ弾きのゴーシュ』
音楽会の演奏が間近になり、セロ弾きが下手なゴーシュは、楽長からもっと練習をこなすように言われます。
そんなゴーシュのもとに夜ごと様々な動物たちがやってきて、何かしら理由をつけては演奏をお願いされてしまうのですが……?
本作は、宮沢賢治自身がセロ(チェロ)を練習していた経験をもとにつくられたと言われています。
セロを弾くゴーシュ、そしてその音色に聴き入る動物たちの様子を描いたイラストはまさにファンタジー。タヌキやネコなどの動物がたくさん出てくるので、子供もより楽しめるのではないでしょうか。
ゴーシュが住む古びた小屋が、絵本にすることでグッと魅力的になるんです!
動物たちに振り回されているように見えるゴーシュですが、実は大切なことを動物たちから教えてもらいます。
子供が楽しめるのはもちろん、大人が忘れかけている教訓がこの作品にはあります。
最後に2人の紳士はどうなる……?
『注文の多い料理店』
『注文の多い料理店』
ある山奥に迷いこんだ2人の紳士が、「山猫軒」というレストランを見つけます。
そこは西洋風の素敵な建物ですが、中に入るといくつものメッセージが。帽子を取ってください、コートをここにかけてくださいなどさまざまな注文をお客さんに要求するスタイル。
変わったレストランがあるものだと思いながらも、2人は注文に従っていくのですが、途中から明らかにおかしい注文が登場して……?
どう考えてもおかしい注文をつけられているのに、自分たちに都合のいいように解釈する紳士たち。予想外な展開に驚きつつ、人間の欲深さや、「言葉」というものの難しさも感じます。
最後は宮沢賢治らしいユーモアあふれる表現も出てくるのでお見逃しなく。
最後のよだかの決心とは……
『よだかの星』
『よだかの星』
本作は、苦しいことばかりの一生を懸命に生きた、よだかという鳥を描いた作品です。
よだかは外見が醜いため、色々な鳥に嫌われている鼻つまみ者。タカからは、「お前みたいなのがタカを名乗るなど許さない。名前を変えろ」などと強要され、生まれ故郷の森から追い出されてしまいます。
そんなよだかは、虫を食べる最中「自分は小さな虫の命を奪っておきながら、タカに殺されないように逃げ回っている」という矛盾に気づきます。
最後までよだかには切なく苦しいことばかりが訪れるのですが、最後によだかが見つけ出した答えに息を飲みました。そこには少なからず、宮沢賢治の人生論が反映されているように思えてなりません。
不思議あふれる宮沢賢治ワールド!
絵本ならではの魅力に浸ってみて
宮沢賢治作品のもつ独特ながら美しい世界観は、絵本にすることでより鮮明に感じることができます。子供はもちろん、大人も魅了されるはずです。
小説は苦手だと言う方も、まずは絵本から触れてみてはいかがでしょうか?
好きなイラストレーターの方が絵を担当したものから、ぜひ選んで読んでみてくださいね。
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