読書の秋!子どもに読ませたい名作児童文学5選
国語力の低下や情緒の欠如は、読書不足が大きく関係していると言われています。
大人になって本を嫌いにならないためにも、子どもたちにはたくさん本を読んでほしいですね。
しかし、いざ子どものために本を選ぼうと思っても、どんな本を選んでいいのかわからないという人も少なくないでしょう。
そこで、今回は、長年“名作”として親しまれている、小学生中~高学年向けの児童文学を選んでみました。
平等とは何か、正しさとは何か
兎の眼
『兎の眼』
灰谷健次郎(著)、理論社
小谷先生は大学を卒業したばかりの新任教師。
1年生の担任となった小谷先生が赴任早々出会ったのは、学校で一言も口をきかず、次々と問題を起こす少年でした。
誰にも心を開かない少年とどう向き合っていいのかわからず、小谷先生は途方にくれます。
物語は公害が社会問題となっていた時代のお話。小学校は工場地帯の中にあり、古い塵芥処理場が近くにあるという環境です。
クラスには、処理場の臨時職員の子どももいれば裕福な家庭の子どももいます。一方、小谷先生は何の不便もなく育った医者の一人娘。今まで経験したことのない状況の中で、子どもたちとどのように心を通わせていくのでしょうか。
劣悪な環境、差別、大人たちの対立など、子どもたちを取り巻くさまざまな問題にどう対峙し、小谷先生自身どのように成長するのかが、この物語の見どころです。
さまざまな立場の人たちが交錯する中で、人のつながりの素晴らしさとともに、正しさとは何か、平等とは何かを考えさせてくれる作品です。
戦争は心の中で続いているのかもしれない
太陽の子
『太陽の子』
灰谷健次郎(著)、理論社
ふうちゃんは神戸生まれの神戸育ち。
沖縄料理店を営む優しい両親と、家族のような常連さんたちに囲まれて暮らしています。沖縄出身の両親はもちろん、常連さんたちもみんな沖縄派。沖縄の自慢ばかりするので、「うちは神戸派や。沖縄なんて知らん!」とふうちゃんは頑なに神戸びいきを貫いていました。
ところが6年生になった頃、お父さんが心の病気に罹ってしまいます。ふうちゃんはお父さんの病気には沖縄の戦争が関係しているのではないかと思い始めます。
そんな中、ふうちゃんは集団就職で神戸に来たキヨシという少年に出会い、生まれて初めて沖縄が差別されてきた事実を知るのです。
この作品のテーマは戦争の悲惨さと社会的差別。これだけ聞くと重苦しい内容に思えますが、この作品を通して心に残るのはむしろ人の温かさと強さです。つらい体験をしながらも前向きに生きる人たちと、優しい大人たちに見守られて悲しい現実と向き合い、受け入れようとするふうちゃんとキヨシ少年。
この作品を読んだ多くの大人が「忘れられない一冊」と語る感動作です。
ネバーエンディングストーリーのモデルになったファンタジー
はてしない物語
『はてしない物語』
ミヒャエル・エンデ(著)、岩波書店
バスチアンはデブで弱虫。
ある日、いじめられっ子から逃げ込んだ古本屋で一冊のあかがね色の本を見つけます。
「はてしない物語」というその本になぜか惹かれたバスチアンは、店主の目を盗み黙ってその本を持って帰り、学校の屋根裏部屋で隠れて読み始めるのでした。その物語の世界は「虚無」に吞み込まれそうになり壊滅寸前の「ファンタージエン」という国。国を救うためには、人間の世界からあかがね色の本を読んでいる10歳の少年を連れてくるしかないと言う。
「ぼくのことだ!」と叫んだ瞬間、バスチアンは本の世界に吸い込まれていまいます。
バスチアンはファンタージエンを救えるのでしょうか?そして、元の世界に無事戻れるのでしょうか?
この作品は映画「ネバーエンディングストーリー」のモデルになったことで知られています。
物語はまさにはてしない世界。バスチアンとともに冒険をしているような、そんな気分になれる作品です。
「ほんとうの幸い」を探す銀河の旅に出る
銀河鉄道の夜
『銀河鉄道の夜』
宮沢賢治(著)、講談社
ジョバンニの家は貧しく、学校に通いながら働いて家計を支えています。
孤独なジョバンニはクラスのいじめっ子からいつもからかわれ、幼馴染みのカムパネルラはジョバンニに申し訳なく思いながらも、黙ってみているしかありませんでした。
星祭の夜も一人で空を見上げていたジョバンニ。すると「銀河ステーション!銀河ステーション」という声が聞こえ、いつの間にかカムパネルラとともに銀河鉄道に乗車してしまいました。
二人は銀河鉄道で「ほんとうの幸い」を探しにさまざまな星を旅します。しかし、カムパネルラは途中でよくわからない言葉を残して消えてしまうのです。
「銀河鉄道の夜」は宮沢賢治の代表作のひとつ。叙情的な美しい世界観とともに哲学的な側面を持っています。
小学生には理解が難しいかもしれませんが、小学校時代に読んでいて、そして大人になってからもう一度読み返してみてほしい作品です。きっと、何かを深く考えさせられることでしょう。
豊かな感受性と好奇心を持っていた黒柳徹子さんの自叙伝
窓ぎわのトットちゃん
『窓ぎわのトットちゃん』
黒柳徹子(著)、講談社
小学校に入学したトットちゃんは問題児と呼ばれ、たった3ヶ月で退学になってしまいます。
お母さんは彼女の好奇心と豊かな感受性を受け入れてくれる学校を探します。やがて、見つけたトモエ学園はユニークな教育方針の学校でした。
初めて登校した日、校長先生は「好きなことを話してごらん」とトットちゃんの話をニコニコしながら聞いてくれるのです。
黙ったまま4時間も話を聞いた校長先生はトットちゃんに語り掛けます。
「きみは、ほんとうはいい子なんだよ。」
トモエ学園で楽しく伸び伸びと毎日を過ごすトットちゃんでしたが、やがて彼女たちの周りにも戦争の影が忍び寄ってきます。
この作品は、黒柳徹子さんが自身の幼少時代を描いた自叙伝で、トモエ学園での経験が生き生きと描かれています。楽しい時間は長く続かず、子どもたちも学校も戦争に巻き込まれていくのですが、そこに悲惨さや暗さはありません。
ラストの校長先生の一言がとても印象的な作品です。
子どもと一緒に読んでほしい
子どもの頃に読んで印象だった本は大人になっても覚えているものです。
ご紹介した児童文学は、子どもたちに読んでほしい一冊であるとともに、大人にも読んでほしい作品でもあります。
さらに、大人になってから読むことで、きっと、子どもの時とは違う何かを感じられるはずです。
今回ご紹介した書籍
『兎の眼』灰谷健次郎(著)、理論社
『太陽の子』灰谷健次郎(著)、理論社
『はてしない物語』ミヒャエル・エンデ(著)、岩波書店
『銀河鉄道の夜』宮沢賢治(著)、講談社
『窓ぎわのトットちゃん』黒柳徹子(著)、講談社
子どもが本を好きになってくれたら嬉しいですよね。
どうすれば子どもが本を好きになってくれるか、考えてみました!