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女のドロドロした関係を描いた小説|あなたは共感できる?


更新日:2019/6/5

嫉妬心、ウラオモテ、悪口、黒い感情、格付け、マウンティング……女同士の「ドロドロした関係」を描いた作品を集めてみました。

実際に「ドロドロ」に巻き込まれるのは避けたいのに、読んだあと嫌な気持ちになるとわかっているのに、どうしてか「ドロドロ」小説を読みたくなる……そんな方も多いのではないでしょうか?
(私もそのうちの1人です。ドロドロのドラマも大好きです)

今回ご紹介するものは、「イヤミス」のようなミステリー小説ではなく、あくまでも「ドロドロの人間関係」を描いたものです。もしあなたが女性でしたら、共感できる部分もあるかもしれません。

じんわりと、怖い世界をお楽しみください。

 

あなたの中にもイジ女(いじめ)はいる

『イジ女』表紙

イジ女
春口裕子(著)、双葉社

「イジ女(いじめ)」を含む短編集。
比較的コミカルな作風で「女性の醜い部分」が描かれているのが特徴的な1冊。そのため、ドロドロ小説にもかかわらず、読後感が軽く読みやすい作品です。

女性客が多いお店に行っては「私には彼氏がいるのよ」と周囲を見下す女。
派遣社員の中で勃発するいじめ。
取り巻きを引き連れたボス的存在の女 VS. 控えめな女のバトル。
タワーマンションで行われる主婦同士の見栄の張り合い。

日常の中に潜む「ドロドロ」ってなんでこんなに面白いのでしょう? 個人的には「あ~確かにこういう女性いるいる~」と共感しながら楽しめました。

 

自分より劣っていると思っていた

『女友達』表紙

女友達
新津きよみ(著)、角川書店

女性の深層心理を描いた長編。主人公の千鶴と、何もかもが千鶴より劣っている亮子の関係性がテーマとなっています。

相手の容姿を見て「自分より上か下か?」を判断する女。
容姿、社会的立場など総合的に「自分より下」の人間には優しく接することができる女。
見下されていると分かっていても、美しい女と一緒にいることで「女の価値」が上がったような錯覚を起こす女。

女性特有のいやらしさのオンパレードが続きますが、本書はそれだけでは終わりません。

もし、自分より劣っていると思っていた相手が、ある日自分を超えてしまったら? ……続きはぜひ手にとって確認してみてください。心が凍りつきます。

 

「微笑みがえし」の本当の意味とは?

『微笑みがえし』表紙

微笑みがえし
乃南アサ(著)、 祥伝社ほか

「表面上では親友でも、陰では……」という女のウラオモテを描いた長編。

登場人物は、阿季子、由記、玲子、ちなみの同級生グループ。中学時代からの付き合いで、表面的にはお互いに笑いあっていますが、腹の底では憎悪がひしめき合う怖い関係です。

中学時代には夢を語り合っていた4人ですが、大人になり、夢を叶え、成功したのは阿季子ただ一人。そして事件が起こります……。

女同士の妬み、恨みつらみ、いろんな感情が悪意となり爆発して、ストーリーは進んでいきます。
とにかく怖くゾッとしたいならこの作品を。ラストスパートにかけての「微笑みがえし」の意味が分かったときは、つい唸ってしまいました。

 

「嫉妬で女は磨かれる」

『嫉妬』表紙

嫉妬
林真理子(著)、 ポプラ社

さまざまな観点からの「女の嫉妬」をテーマにした短編集。

東京生まれ東京育ちのお嬢様に憧れる、田舎出身の冴えない女。その憧れの同級生が仙台で暮らしていることを知り、東京在住の主人公は優越感を感じるようになります。

他には、敵うわけがない相手を、勝手にライバル視して嫉妬心を燃やしていたり。

他人から見ればちっぽけな優越感でも、何かしら上の立場に立っていないと気が済まない女たちがこれでもかと言わんばかりに描かれています。

解説は内館牧子さん。「嫉妬で女は磨かれる」という言葉にはつい納得してしまいました……。

 

ホラーより怖い!ママ友トラブル

『森に眠る魚』表紙

森に眠る魚
角田光代(著)、双葉社

東京に住む5人の母親たち。はじめは仲良くしていたが、「子どものお受験」によりいつしかその関係は変容していく……。

5人の母親の関係が、子供の受験をきっかけに徐々に壊れていくさまが描かれます。ありそうでなさそうで、やっぱりありそうな「ママ友トラブル」。

ママ友問題を取り上げた小説はほかにも、重松清さんの『見張り塔からずっと』、新堂冬樹さんの『砂漠の薔薇』などがあります。こちらもぜひ。

 

遺産問題!ドロドロ愛憎劇

『女系家族』表紙

女系家族
山崎豊子(著)、新潮社ほか

大阪、船場の老舗木綿問屋の社長が死去した。血を分けた三姉妹が父の遺産を巡って繰り広げてる争い。最後に笑うのは果たして誰なのか――。

遺産によってあぶり出されるエゴ、欲望。とっておきのドロドロ作品。
お金の切れ目は縁の切れ目と言いますが、やっぱり人は“お金”で変わってしまうものなのでしょうか……。

三姉妹の金銭欲というか、本性が非常に怖いんです。金額の規模はさておき、誰もが巻き込まれる可能性のある遺産相続問題。どんどん読めてしまいます。

 

終わりなき「美」への追及

『テティスの逆鱗』表紙

テティスの逆鱗
唯川恵(著)、文藝春秋

女優、キャバクラ嬢、OL、資産家の娘。それぞれの理由で美容整形外科に通う4人の物語。

「美容整形」をテーマにした禁断の愛憎劇。女たちの美への欲望は次第にエスカレートしていきます。女たちの、そして美容整形の“闇”を映しだす1冊です。

ホラー小説? と思わせるほど恐ろしい「欲望」の数々。一見華やかにもみえる美容整形の裏側を描いた本作は、ドロドロさをかなり楽しめます。

 

普通の主婦だった、あの日までは――

『OUT(アウト)』表紙

OUT(アウト)
桐野夏生(著)、講談社ほか

夜間の弁当工場でパートとして働く平凡な主婦の雅子。
ある日、パート仲間が夫を殺したことをきっかけに、雅子たち主婦4人は暗い暗い闇の世界へと堕ちていった――。

それはそれは目をつぶりたくなるほどの恐ろしい主婦たちの物語。

人間の奥底にあるかもしれない心の闇を描いた有名な作品ですが、かなりグロテスクな描写が多いので、閲覧注意。ドラマにもなっているのですが、当時薄目で見ていたのを思いだしました。

 

親友を助けたかった――

『ナオミとカナコ』表紙

ナオミとカナコ
奥田英朗(著)、幻冬舎

不満を抱えながらも会社勤めをしている直美、夫のひどい暴力に耐える専業主婦の加奈子。
「いっそ、二人で殺そうか。あんたの旦那」
究極の選択をした2人は幸せを手にできるのか――。

夫の暴力に悩みつつも、復讐を恐れて別れられないカナコの相談に対し、ナオミはカナコの夫の殺害計画を立てます。
最初は「殺害なんて」と考えていたカナコも、命の危険を感じナオミの計画にのることに……。

暴力から逃れるために殺害するということを普通は考えもしませんが、追い詰められた心理状態では「こう考えてしまうのかも?」と思わせるのがこの作品。

さまざまなピンチが2人を襲い、一気にラストまで読み切ってしまう一冊です。

 

女同士の怖いドロドロの世界を楽しんで

フィクションだからこそ楽しめるドロドロの世界。女性であれば共感できるものも多いはず。

現実が平和だからこそ楽しめる女たちのドロドロな戦い。気になった作品があればぜひ読んでみてくださいね。

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