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敬老の日に読みたい! おじいちゃん・おばあちゃんと孫にまつわる小説


更新日:2019/9/5

おじいちゃん・おばあちゃんと孫にまつわる小説

9月の第3月曜日は「敬老の日」。

敬老の日にちなんで「おじいちゃん・おばあちゃんと、孫の交流を描いた小説」をピックアップしました。

心温まるもの、ニヤリと笑えるもの、泣けるもの、感動するもの……
ご自身のおじいちゃんやおばあちゃんに思いを馳せながら、読んでみるのも良いかもしれません。

良書揃いですので、興味を持っていただけたならぜひ手に取ってみてください。

 

祖父と孫、そして、父と娘の再生の物語
『西日の町』

『西日の町』表紙

西日の町
湯本香樹実(著)、 文藝春秋

西日を追うようにして辿り着いた北九州の町、若い母と十歳の「僕」が身を寄せ合うところへ、ふらりと「てこじい」が現れた。無頼の限りを尽くした祖父。六畳の端にうずくまって動かない。どっさり秘密を抱えて。秘密?てこじいばかりではない、母もまた…。よじれた心模様は、やがて最も美しいラストを迎える。(表紙裏)

 

『夏の庭』で知られる湯本香樹実さんの長編小説。湯本香樹実さんといえば、児童文学のイメージがあるかもしれませんが、本書は完全に大人向けです。

主な登場人物は、僕、母、母の父である「てこじい」。てこじいは、ある日、母子家庭の僕たちのアパートに転がり込み一緒に住むようになります。

てこじいを邪険に扱い、あの手この手で出ていってもらうように模索する母でしたが、てこじいは部屋の壁にもたれかかり、動きません。そして、てこじいは、なぜか夜になってもけっして横たわることがないのです。

謎の多いてこじいに戸惑う僕。一緒に住むことで、色々と分かってくる真相。

祖父と孫の関係だけでなく、父と娘の再生もテーマとなっています。号泣間違いなしの作品ですよ。

 

魔女修業で大切なことは“何でも自分で決める”こと
『西の魔女が死んだ』

『西の魔女が死んだ』表紙

西の魔女が死んだ
梨木香歩(著)、 新潮社

中学に進んでまもなく、どうしても学校へ足が向かなくなった少女まいは、季節が初夏へと移り変るひと月あまりを、西の魔女のもとで過した。西の魔女ことママのママ、つまり大好きなおばあちゃんから、まいは魔女の手ほどきを受けるのだが、魔女修行の肝心かなめは、何でも自分で決める、ということだった。喜びも希望も、もちろん幸せも…。その後のまいの物語「渡りの一日」併録。(表紙裏)

 

登校拒否になってしまった中学生の少女まいと、イギリス人のおばあちゃんの交流を描いた作品。ベストセラーにもなっており、児童文学の最高峰だと個人的には思っています。

私が初めて本書を読んだのはもう何十年も前ですが、いつ読んでも、何度読み返しても、感動のあまり涙が溢れてしまいます。

作中、まいはおばあちゃんに人間関係の悩みを相談します。すると、おばあちゃんはこう言うのです。

「自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ」

「シロクマがハワイより北極で生きる方を選んだからといって、だれがシロクマを責めますか」(本文より)

私にとって、この一言は大切な言葉です。

おばあちゃんの愛情がめいっぱいに伝わってくる作品。疲れた心をあたたかく包んでくれますよ。

 

少年の運命を変えるヘンテコなおじいちゃん
『僕とおじいちゃんの魔法の塔』

『僕とおじいちゃんの魔法の塔』表紙

僕とおじいちゃんの魔法の塔
香月日輪(著)、 角川書店

岬にたたずむ黒い塔。まるでお化け屋敷のようなその塔は、鎖と南京錠で封印されているはずだった。だけど、ある日、塔に行ってみると、そこには、僕が生まれる前に亡くなったおじいちゃんが住んでいた!しかもその塔には、もっと驚く秘密もあって…!?幽霊のくせに(だからこそ?)ヘンテコなおじいちゃんとの出会いが、僕の決まりきった生活を変えていく―。運命を変えられた僕のびっくりするような毎日がはじまった。(表紙裏)

 

『妖怪アパートの幽雅な日常』で知られる香月日輪さんの人気シリーズ。

主人公の龍神は、1巻ではまだ小学生。ある日龍神が見つけた塔には、亡くなった「おじいちゃん」と使い魔が住んでいて……というファンタジー小説です。

よく出来る弟と比較され、家族の中で居場所を感じられず、常に違和感を持っていた龍神。疎外感を感じていた龍神の居場所になったのは、おじいちゃんが住む塔でした。

普通を装っていた龍神は気づくのです。これまでは「つくりもの」だったのだと……。そして龍神は、あるがままに生きることを模索し始めます。
そして、クラス内に蔓延る偽善と違和感に声をあげ、いじめに遭ってしまいます……。

不器用な龍神に対する、おじいちゃんの愛のある視線に、涙がこぼれる人も多いでしょう。読めば読むほど、もっともっと読みたくなる中毒性を持ったシリーズです。

香月さんの死去によって、続きが読めないのが残念でなりません。

 

古書店を営むおじいさんと孫が事件を解決
『寂しい狩人』

『淋しい狩人』表紙

淋しい狩人
宮部みゆき(著)、新潮社

東京下町、荒川土手下にある小さな共同ビルの一階に店を構える田辺書店。店主のイワさんと孫の稔で切り盛りするごくありふれた古書店だ。しかし、この本屋を舞台に様々な事件が繰り広げられる。平凡なOLが電車の網棚から手にした本に挟まれていた名刺。父親の遺品の中から出てきた数百冊の同じ本。本をきっかけに起こる謎をイワさんと稔が解いていく。ブッキッシュな連作短編集。(表紙裏)

 

古書店を営むおじいさんと孫が難事件を解決していく短編集。金曜プレステージ・宮部みゆきドラマスペシャルとしてドラマ化もされています。

さすが宮部さんと言わんばかりの珠玉の作品揃いですが、特筆すべきはおじいさんのイワさんと孫の稔のやり取り。

扱われる事件はどれも本格的で、読んでいると陰鬱な気持ちになるものも多いです。それでもこの読後感の良さは、二人が醸し出す雰囲気の良さから来るものでしょう。

実の親子ではなく、祖父と孫だからこその距離感もリアリティーのあるものでした。孫の恋愛に戸惑ってしまうイワさんの姿には少し笑ってしまいました。

ほのぼのとした2人の関係が楽しい気持ちにさせてくれます。クスリと笑いたいときにいかがでしょうか。

 

敬老の日だからこそ読んでみて

1年に1度の敬老の日。今の年齢になって読むからこそ、得るものも多いはず。これを機に、ぜひ読んてみてくださいね。

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