司馬遼太郎 傑作短篇選『戦国の忍び』がおすすめ!
更新日:2017/7/9
『戦国の忍び』
司馬遼太郎(著)、PHP研究所
『戦国の忍び』の内容
司馬遼太郎さんが描く、戦国時代の忍びの短編集です。
上忍にこき使われる生活に嫌気がさし、伊賀を抜けた若い下忍の話「下請忍者」など、「忍者四貫目の死」「伊賀者」「伊賀の四鬼」「最後の伊賀者」の5編が収められています。
忍者の生きざまって?
司馬遼太郎さんの忍者ものといえば、豊臣秀吉暗殺を企てる伊賀者を描いた『梟の城』が有名です。『梟の城』は直木賞を受賞し、司馬さんが新聞社を辞めて作家生活に入るきっかけとなった作品となりました。
その司馬さんが、新聞記者時代に書いた短編などから、忍者の話を集めたのがこの短編集です。
群雄割拠の戦国時代、功成り名遂げていく戦国大名たち。
そんな彼らに雇われて働く忍者は、表に出ることなく、手柄を立てても武士になれるわけでもなく、家族を持つことも許されず、低い身分のまま生涯を終えるのです。
5つの短編では、彼ら忍者の生きざまが描かれています。忍びの技を磨き、名誉を求めず、ひたすらに己の腕一本で世の中を渡っていく忍者は、悲しいけれどかっこいいですよ!
「下請忍者」では、忍者の中にも上忍、下忍という階級制度があることがわかります。
今の社会でいう正社員と非正規社員のような関係でしょうか。いつの時代も下っ端は大変……そんな気持になってしまいます。
本作の忍者の生きざまには、「新聞記者時代の司馬さんが、名もなくひたすら取材をして、記事を書くことだけに明け暮れていた姿と重ね合わされているのでは?」との説もあるそうです。
時代に翻弄され、過酷な現場で働く忍者達への、司馬さんの眼差しが温かく感じられるのはそのせいかもしれません。
今回ご紹介した書籍
『戦国の忍び』
司馬遼太郎(著)、PHP研究所
『坂の上の雲』や『功名が辻』など、多くの歴史小説を発表した司馬遼太郎さん。
他にも紀行文や対談集など、司馬作品を紹介した特集はこちら。