宮部みゆき『チヨ子』あらすじ・内容| 超常現象が詰まった短編集がじんわり怖い
更新日:2017/7/1
『チヨ子』
宮部みゆき(著)、光文社
宮部ワールド広がる短編集『チヨ子』
主人公の「わたし」がアルバイトで着ることになったピンクのウサギの古びた着ぐるみ。それをかぶって外を覗くと、まわりの人がぬいぐるみやロボットに変わってしまい……。
表題作である「チヨ子」をはじめ、超常現象をテーマにした5編が収められた短編集。
クセになる恐怖が詰まってる!
宮部みゆきさんの『チヨ子』は、未発表の短編を集めて新しい1編を加え、2011年に文庫化されたものです。短編と中編が5編収録されています。
『理由』や『模倣犯』などの強い調子ではないものの、じんわり怖さが伝わってきます。ホラーでもあり、SFでもあり、ファンタジーでもあるお話です。
表題作の「チヨ子」は、自分がぬいぐるみだったら世の中はどんなふうに見えるのだろう、と読者に想像させるようなお話です。
宮部さんはある対談で「人はなぜ幽霊を見るのか」「人間になぜ幽霊が必要なのか」ということを考えてしまう、とおっしゃっています。幽霊を突き詰めて考えると神でもあり、この短編集の中の「聖痕」につながるそうです。
他のお話も死者への愛情がテーマであったり、夫婦愛について描かれていたり、独自の鋭い視点で人間を観察する宮部さんらしさが溢れています。
後味が悪いお話があるため、好き嫌いが分かれるところでしょう。
しかし、単純明快なハッピーエンドではなく、社会、そして人間の心の闇をつくお話にドキリとさせられ、考えさせられるシーンも多々あります。それが宮部作品の魅力です。
ファンタジックでほっこりするシーンもあり、ホラーが苦手という人にも読みやすいですが、直接的な恐怖ではなく、後で思い出してじわじわくる怖さがクセになります。
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今回ご紹介した書籍
『チヨ子』
宮部みゆき(著)、光文社
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