梅雨の日に窓辺で読みたい「雨が心を濡らす本」5選
梅雨の季節。
恵みの雨、憂鬱な雨……読者のみなさんにとって、 雨はどのような存在でしょうか?
今回のテーマは「雨が心を濡らす本」。 雨が印象的な作品を選んでみました。
あの日の雨が、2人の運命を変えた…
『龍神の雨』
『龍神の雨』
道尾秀介(著)、新潮文庫
雨によって人生が変わってしまった2組の兄弟の物語。
雨が降ったとき、傘をさすのか、濡れて歩くのか、 雨宿りをして待つのか?それは状況にもよるでしょうし、 一人一人の判断に委ねられます。でも、そんな些細な違いが、人の運命を一瞬で変えてしまう場合もあるのです…。
本書を読みながら思うのは「あの時、 もし雨が降っていなかったら…」。でも、気づいたときにはもう遅い…やりきれない気持ちになる作品です。
宮部みゆきワールド全開の短編集
『地下街の雨』
『地下街の雨』
宮部みゆき(著)、集英社文庫
結婚が破談となってしまった主人公が、とある女性に出会った話。
私たちは地下街にいると雨に気づくことができません。 地上は晴れていると勝手に思い込み、濡れた傘を持った人を見て、 雨が降っていることに気付くのです。
それは、裏切られた時の気分と、よく似ている―。
宮部さんだからこそ表現できる、 雨と地下街の対比が非常に味わい深い作品です。
冷たい雨が人々にもたらすものとは…
『雨のなまえ』
『雨のなまえ』
窪美澄(著)、光文社
雨をモチーフにした短編集。
満たされない思いや、 逃げだしたくなるような現実を抱えた主人公たちが描かれており、 追い打ちをかけるような雨に、読んでいて胸が痛くなります。
こんなに胸が痛むのは、 窪さんの描く世界がリアルすぎるからなのでしょう。
また、性描写の生々しさもリアリティを色濃いものにしています。
モームの短編の中でも傑作といわれる作品
『雨』
『雨』
サマセット・モーム(著)、岩波文庫
ベストセラー作家・モームによる、世界的に知られた短編。
舞台はサモアの小さな島。執拗に降る雨のなか、 描かれる人間の理性と本能。
読んでいるだけなのに、 まとわりつくような嫌な雨とじめじめとした湿気をまざまざと感じてしまう…そんな不思議体験をしたい方には、 ぜひこの一冊をおすすめします。
あの日、空から降ってきたもの…
『黒い雨』
『黒い雨』
井伏鱒二(著)、新潮文庫
広島への原爆投下をテーマにした、日本を代表する戦争文学。
黒い雨とは、放射性降下物(原爆炸裂時の泥やほこり、 すすなどを含んだ粘り気のある雨)のこと。
苦しさのあまり読みはじめるのに躊躇してしまうかもしれませんが 、日本人であるかぎり、 知っておかなくてはいけない、読まなくてはいけない作品だと個人的には考えています。
雨の日は読書を
今回は、雨を窓越しに見ながら、読みたい作品を選んでみました。
ぜひ読んでみてくださいね。
今回ご紹介した書籍
『龍神の雨』
道尾秀介(著)、新潮文庫
『地下街の雨』
宮部みゆき(著)、集英社文庫
『雨のなまえ』
窪美澄(著)、光文社
『雨』
サマセット・モーム(著)、岩波文庫
『黒い雨』
井伏鱒二(著)、新潮文庫
こちらも雨の日に読みたい本をご紹介した記事です。
なかなか外に出れない梅雨の時期こそ、のんびりと読書を楽しんでくださいね!