野球に青春をかける! 高校球児たちを描く「野球小説」5選
夏休みの楽しみといえば、高校野球。たくさんの高校球児たちが甲子園に集い、日本一をかけて戦う姿はいつでも感動を与えてくれます。
今回は、そんな「高校野球」をテーマにした小説をご紹介します。
『イレギュラー』
『イレギュラー』
三羽省吾(著)、角川書店
コーキは、蜷谷村の蜷谷高校(通称ニナ高)の野球部でピッチャーをしている少年。彼は、自分の球に自信を持っていました。
しかしある日、蜷谷村に大型台風が襲い、堤防が決壊して、村の人々は避難所暮らしを余儀なくされます。もちろん野球を続けるどころではありません。
そんな蜷谷高校に救いの手が差し伸べられました。強豪・K高がグラウンドを貸してくれるというのです。
しかし、合同練習の初日、K高に煽られて勝負に挑んだコーキは、圧倒的な力の差を見せつけられます。
それから、打倒K高を目指し、猛特訓を重ねるコーキ。彼らの姿を見るうちに、やがて、彼らを見下していたK高にも変化が訪れます。
水害によって被災した蜷谷村の人々が、苦しい状況の中で野球に希望を見出し、成長していく主人公たちの姿を描く、青春野球小説です。
『晩夏のプレイボール』
『晩夏のプレイボール』
あさのあつこ(著)、角川書店
大人気野球小説「バッテリー」の著者・あさのあつこさんが描く10篇の短編から成る、野球小説の短編集です。
冒頭では、肩を壊してしまったかつてのエース・真郷と、現在のエースで、いじめられた過去のトラウマを抱える律の姿を描く「練習球」。
野球が好きなのに、やめざるをえなくなる女子を描いた「驟雨のあとに」。
部員3人だけで廃部寸前でも甲子園に行きたいと願う「このグラウンドで」。
甲子園に行きたいと願いながら、幼いうちにこの世を去った息子への思いを描く「空が見える」など、さまざまな視点から「野球」に関わる人々を描いています。
少し切ない話が多いのですが、逆境の中にありながらもひたむきにボールを追う人々の姿が胸に迫ってきます。
『大延長』
『大延長』
堂場瞬一(著)、実業之日本社
甲子園の決勝戦。新潟の新潟海浜高校と東京の恒正学園の対戦は、延長に延長を重ねていました。延長は15回にまで及びますが、結局決着はつかず、次の日の再試合に持ち越されます。
海浜の監督・羽場と、恒正学園の監督・白井は、大学時代にバッテリーを組んでいた仲でした。
自分自身の過去の苦い経験から、甲子園をひとりで投げ続けてきたピッチャーの牛木を慮り、牛木なしでの戦略を組み立てる羽場。
しかし、羽場の性格を知り尽くしていた白井は、「それでも牛木に投げさせるだろう」と想像し、戦略を練ってきます。因縁の対決のその行方とは。
試合が進むにつれ、監督や選手たちの心が変化し、熱い戦いが繰り広げられていく様子は、手に汗を握ります。じりじりとした熱い太陽を感じるような熱量をもった作品です。
『熱球』
『熱球』
重松清(著)、新潮社
主人公のヨージは、38歳の男。
20年前、彼は周防高校の野球部に所属していました。決して強いチームではありませんでしたが、夏の甲子園の県予選を嘘のように勝ち進み、ついに甲子園出場をかけた決勝戦への切符を手にいれた矢先、不祥事によって棄権させられてしまいます。
そのことから、世間の目が厳しくなり、地元にいづらくなったヨージは東京の出版社に就職しましたが、妻のアメリカ留学を機に退職し、娘とともに故郷に戻ってきました。
かつてのチームメイトと再会し、交流するうちに、過去を乗り越えていくヨージ。かつて失ったものを取り戻し、新しい出発をする男の姿が描かれています。
野球のみならず、かつてスポーツに打ち込んだことのある人なら、きっと共感することのできる作品です。
『エースナンバー 雲は湧き、光あふれて』
『エースナンバー 雲は湧き、光あふれて』
須賀しのぶ(著)、集英社
三ツ木高校に赴任してきた生物教師、若杉は、ろくに野球の経験もないのに、野球部の監督に抜擢されてしまいます。
三ツ木高校の野球部は、公式戦はいつも初戦敗退の弱小チーム。しかし若杉は、チームを勝利に導くため、練習試合を組んだりと努力を重ねていきます。
やがて「負けて当たり前」と思っていた部員たちも、「勝ちたい」という欲が出てきます。しかし、勝つためにはときには冷酷な判断をしなくてはならないことも。
「勝利したい」という気持ちと「努力が報われてほしい」という気持ちの狭間で揺れる、監督と野球部員たち。「甲子園に行きたい」という願いが、彼らを動かします。
爽やかな読後感のある、青春野球ストーリー。高校生たちの純粋な姿がまぶしく感じられます。
まとめ
高校野球にはたくさんのドラマがつきもの。甲子園での高校球児たちも、さまざまなバックグラウンドを背負って戦う若者たちです。野球好きの方も、そうでない方も、スポーツに青春をかける彼らの姿にきっと心を打たれるはず。
夏まっさかりのこの時期に、ぜひ小説でも高校野球を楽しんでくださいね。
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