宮部みゆき『火車』のあらすじ・見どころ|おすすめミステリー小説
更新日:2016/7/31
代表作を挙げてくださいと言われてどれにしようかと迷ってしまうほど、宮部みゆきさんは粒ぞろいの作品を多数執筆されています。
多くのファンを持つ魅力的な小説群から、宮部さんが31歳の時に出版した『火車』をご紹介しましょう。
宮部みゆきさんの代表作!
『火車』
新潮社ほか
どれも読者をぐいぐいと惹きつける宮部みゆきさんの小説ですが、代表作の1つはミステリー小説の『火車』。
住宅ローン、カードローンなど借金の恐ろしさを扱った本作は、1992年に第六回山本周五郎賞を受けています。
『火車』には、いったん読み始めると、読み終わるまで本を置くことができなくなる宮部さんのストーリーテリングが遺憾なく発揮されています。
次第に謎が解かれていく話の運びがとてもわかりやすく、次々とページをめくりたくなるはず。
この、読者を一気読みに誘い込むストーリーテリングこそが、『火車』を宮部さんの代表作の1つにしているのです。
『火車』あらすじ
失踪した関根彰子を探すよう依頼された休職中の刑事の本間は、事件に巻き込まれた被害者として調査を始める。
ところが調査を進めるうちに、被害者と思われた彰子が実は加害者ではないかという疑いが浮上して――。
読者は、本間の調査によって彰子のさまざまな顔を知り、やがて彼女の罪を知ることに。そして現れるもう1人の女性が、この失踪事件の鍵を握っている人物として描かれます。
彰子の過去が語られる部分では、彼女の境遇に同情する読者もいることでしょう。彰子が手に入れたかったごく普通の幸せとは、どんなものだったのでしょうか……。
本作からは、宮部さんの小説に共通する「道を踏み外した人間」と同じ地平に立った眼差しが感じられます。
脇役たちのサイドストーリー
宮部さんの小説で特徴的なところは、主役だけでなく脇役たちのサイドストーリーが丁寧に描かれることです。
『火車』では、本間がただ舞台回しの役割にとどまらず、1人の夫や父親の面も見せてくれます。父親の体を心配する息子から「そんなこと、お父さんがしなくてもいいじゃんか」と怒られる場面も。
また彰子の幼なじみである保は、妊娠中の婚約者・郁美の前でも、彰子を「しいちゃん」と呼んで心配します。
そして郁美は「ずっと気にしてるの。ずっと好きなのよ。子供の時の思い出を共有してるんだもの、あたしには勝てないわ」と呟くのです。
こうして、メインとサイドのストーリーが絡まり合って重層化し、単に筋が面白いだけではない厚みのあるストーリーになります。
絶対に読み逃さないで!
ミステリー界に燦然と輝く宮部みゆきさんの『火車』は、ぜひ読んでもらいたい1冊です。
彰子の足跡をたどる本間が、途中から心の中で彰子のことを「君」と呼ぶようになっていく過程を、どうぞ共有してみてください。
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今回ご紹介した書籍
『火車』
宮部みゆき(著)、新潮社ほか
ミステリーはもちろん、時代小説やSF、その他作品など!
宮部みゆきさんの作品をご紹介します!