絶対読むべき! 伊坂幸太郎 おすすめ小説
デビューから数々のヒット作を生み出してきた伊坂幸太郎さん。
作品の多くが映像化され、若者から大人まで絶大な人気を誇っている伊坂さん。日本を代表するエンターテイメント作家といっても過言ではありません。
ここでは、ジャンルや読み味が違う伊坂作品をご用意しました。これから伊坂作品を読もうとしている方は是非参考にしてみてくださいね。
『アヒルと鴨のコインロッカー』
『アヒルと鴨のコインロッカー』
東京創元社
大学へ進学するために一人暮らしをはじめた椎名。引っ越して早々、同じアパートの住人である河崎から「一緒に本屋を襲わないか」と持ち掛けられる。
断り切れなかった椎名は、広辞苑を奪うため河崎と共に本屋を襲いに行き――。
吉川英治文学新人賞を受賞した本作。物語は、現在と過去が交錯しながら展開していきます。
大学生の椎名。ペットショップ店員の琴美。2人の物語が少しずつ繋がりを見せ、終盤に驚愕の事実が明かされます。
どこかほろ苦く切ないストーリー。人間ドラマの裏にあるミステリー的な仕掛けにも注目です。
『アイネクライネナハトムジーク』
『アイネクライネナハトムジーク』
幻冬舎
会社の先輩の命令で、不本意ながら街頭リサーチをすることになった若者が経験する、ささやかな出会いの話「アイネクライネ」。
その先輩が、運転免許の更新に行き自分の進む道を見つける話「ドクメンタ」など、5つの話が少しずつ絡んで進み、19年後の最終話「ナハトムジーク」で大団円を迎えます。
6つの短編で描かれる連作集。綿密に張り巡らされた伏線を、最終話で回収していくところは見事の一言です。
伊坂さんの作品によく描かれる個性の強烈な人は、ここには出てきません。どこにでもいそうなごくごく普通の人たちの、ささやかな出会いの物語なのです。
『グラスホッパー』
『グラスホッパー』
角川書店
交通事故で妻を亡くした鈴木。犯人の男に復讐するため、鈴木は男の父親が経営する会社に入社する。
ところがあるとき、寺原の長男が車にはねられて亡くなってしまう。どうやらそこには「押し屋」と呼ばれる殺し屋が関わっているようで――。
本作は、鈴木、鯨、蝉の3人の視点から展開されます。
「押し屋」と呼ばれる殺し屋をめぐり、つながっていく3人の物語。伏線が回収され、やがて物語は1つの結末を迎えることになります。
2015年に映画化された本作。続刊の『マリアビートル』もあわせてぜひ。
『重力ピエロ』
『重力ピエロ』
新潮社
遺伝子を研究する泉水と、芸術的な才能を持つ春。そんな2人が暮らす仙台では、謎の連続放火事件が起きていた。
火事を予見する謎のグラフィティアートの出現、そしてグラフィティアートと遺伝子ルールの不可解なリンク。泉水と春は事件の謎解きに乗り出すが――。
「親子とは」「兄弟とは」「家族とは」というありふれたテーマで、これほど重々しい物語をこれほど爽やかに読ませるのは伊坂さんの筆力。
さらに、読者の心を鷲づかみにする「春が二階から落ちてきた」という書き出しは、光るセンスを感じずにはいられません。
書き留めておきたいフレーズや名言・格言が要所にあり、知的でユーモアがある描写が楽しめます。
『陽気なギャングが地球を回す』
『陽気なギャングが地球を回す』
祥伝社
嘘を見抜く達人の成瀬。スリの天才の久遠。正確な体内時計を持つ雪子。口の立つ響野。彼ら4人は百戦錬磨の銀行強盗である。
その日も綿密な計画のもと、銀行から数千万円ものお金を奪うが、その逃走中に一つのアクシデントが彼らを襲い――。
本作は「陽気なギャング」シリーズ第1弾。4人組の銀行強盗がさまざまな事件に巻き込まれていく物語を描いた長編サスペンスです。
次々と展開していく話が1つに収束していく様は爽快です。
繋がる伏線、意外な結末、魅力的なキャラクターなど、一級品のエンターテイメント作品となっています。
『火星に住むつもりかい?』
『火星に住むつもりかい?』
光文社
凶悪犯罪をなくすために作られた「平和警察」。街は四六時中監視され、住民同士が探り合って密告。そして強制的に「危険人物」にされた無実の人が次々と処刑されていた。
そんな中現れたのが「正義の味方」と名乗る謎の男。彼は本当に世界を救うヒーローなのか、それとも――。
本作のテーマは中世ヨーロッパで行われた「魔女狩り」。至るところに監視カメラが設置され、住民同士が互いを監視する世界が舞台です。
逃れられない現実。逃げたいなら火星に住むしかない。そんな中、物語の中心である仙台でも遂に「危険人物」が処刑されてしまいます。
読んでいて心が沈むような混沌とした情景が続くなか、ヒーローの登場によって、一気にテンポアップ。
先の読めない怒涛の展開が続き、ラストには意外な事実が待ち受けています。
『チルドレン』
『チルドレン』
講談社
何事にも物おじせず歯に衣着せない男、陣内。彼の周りには「時間が止まる場所」や「消えた銀行員」など、魅力的な謎であふれています。
本作には、そんな陣内を中心とした日常の謎ミステリーが5つ収録されています。伊坂作品の中では最も「本格ミステリー」に近いのではないかなというのがわたしの感想です。
「不可解な謎」と「結末の意外性」。本作はそのどちらも併せもっていて、さらに「本格ミステリー」には欠かせない「探偵役」も登場しますよ。
『オーデュボンの祈り』
『オーデュボンの祈り』
新潮社
おとぎ話に出てきそうな人や物が当たり前に存在する荻島が舞台。警察に追われていた伊藤は島民に助けられ、荻島へ連れてこられる。
あるとき、未来予知ができるはずのカカシが何者かに殺され――。
本作は、伊坂幸太郎さんのデビュー作。設定はファンタジーですが、話の展開はミステリーです。
伊坂作品の魅力でもある洒脱な会話や繋がる伏線は本作でも健在。デビュー作でありながら完成度は非常に高く、構成力や発想力など伊坂幸太郎さんの地力の高さが伺い知れる作品となっています。
伊坂作品を読むならば、まずはこれから! というような作品です。
面白い伊坂ワールドへ
ジャンルや読み味の違う作品をご紹介しました。これらの中からお好みに合わせてまずは1作品手にとってみてはいかがでしょうか。
ちなみに筆者のイチオシは、デビュー作である『オーデュボンの祈り』です。
どの作品にも伊坂幸太郎さんの作家性のようなものが滲みでているため、一つ気にいれば、他の作品も気にいること間違いなしです。
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