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リベラルアーツとは? 学びたい欲が高まる!池上彰『おとなの教養』


『おとなの教養』表紙

おとなの教養
池上彰(著)、NHK出版

現代の教養とは具体的に何を学べばいいでしょうか。

すぐには役には立たなくても、社会に出て、やがて有効に働くようになる。

そういう生きる力になるものとは、何でしょうか。

それは、「自分がどういう存在なのか」を見つめていくことなのではないでしょうか。

「自分自身を知る」ことこそが現代の教養だろうと私は思います。

自分はどこから来て、どこに行こうとしているのか。この場合の「自分」とは、文字通りの自分のことでもあるし、日本人あるいは人類のことでもあります。(表2)

 

現在、池上さんは、東京工業大学の「リベラルアーツセンター」という組織で教授をされています。

池上さんが当センターに就任するきっかけとなったのは、東日本大震災の報道を見て、「文系と理系の間の溝の深さ」を感じたからなのだそう。

理科系の専門家の人たちによる解説は、あまりに専門的で、何がなんだかわからない。文科系の人たちは、数字や理科系の発想が出てきただけで、思考停止になってしまう。

ここに、日本社会が抱える問題や不幸の根っこがあるのではないか、というのが池上さんの考えでした。

 

一方、大学側も、「数学や理科の成績は良いが、社会的な視野が狭かったり、歴史のことをまったく知らない学生たちに、世の中のいろんな仕組みや歴史を教えてほしい」という考えを持っていました。

 

このように双方の問題意識が一致したことで、池上さんによる「リベラルアーツ」教育が開始したのです。

本コラムでは、「リベラルアーツ」とは何なのかを紐解きながら、書籍の紹介をしたいと思います。

 

「リベラルアーツ」とは?

そもそも、「リベラルアーツ」とは何でしょうか。

「リベラルアーツ」とは、ギリシャ・ローマ時代に源流を持ち、ヨーロッパの大学で学問の基本だとみなされた七科目のこと。

具体的には①文法、②修辞学、③論理学、④算術、⑤幾何学、⑥天文学、⑦音楽の計七科を指します。

かつてはこうした科目に習熟することが、教養人の条件でした。(p24)

 

リベラルアーツの「リベラル(liberal)」は自由、「アーツ(arts)」は技術、学問、芸術を意味します。つまるところ、リベラルアーツの意味は「人を自由にする学問」ということになります。

これらの教養を身につけていれば、人間は自由な発想や思考を展開していくことができる、という意味あいですね。

 

日本だと、弁護士になりたい学生は大学で法学部に入って司法試験の勉強をします。ですが、アメリカでは、学部で四年間リベラルアーツを学んだ後で、ロースクールにいくという流れとなっています。

つまり、リベラルアーツを学ぶ=「自分を支える基礎となる教養」を学ぶことが、アメリカの大学では優先されているというわけです。

 

池上さんは、日本におけるリベラルアーツ=日本人にとって必要な「現代の教養」を以下のように考えています。

私が考える「現代の自由七科」とは次のようなものです。

①宗教 ②宇宙 ③人類の旅路 ④人間と病気 ⑤経済学 ⑥歴史 ⑦日本と日本人(p31-32)

 

本書には、この七項目において、「礎」となるような必須の項目が書かれています。基礎的なものが多く、「こんなこと、もう知ってるよ」と思う部分もあるかもしれません。
ですが、これら七項目すべてを網羅している方は少ないはずです。

ぜひ、池上さんのわかりやすい言葉で、知っておくべき基礎教養を学び直してみてはいかがでしょう?

 

わずか30ページで、各項目の「礎」を学ぶことができる

さて、池上さんが掲げる七項目の中で、みなさまが興味のある分野はどれでしょうか。

 

私が本書の中で、最も「腑に落ちた」のは⑤の経済学でした。経済学の古典はひとしきり目を通し、一般教養として学んではいたものの、あまり頭に入ってこなかったのが正直なところでした。

そのため、池上さんがピックアップしている「歴史を変えた四つの理論」についても、完全には理解できていなかったのです。

 

ところが、本書を読んで「そういうことだったのか」と理解できた部分は多々ありました。池上さんの説明はどれも端的で、頭にすっと入りやすいのです。

経済活動は「見えざる手(市場経済が持つ自動調整機能)」によって自動調節されるから、よけいな規制をかけずに市場に任せておくのがいい。自由競争という視点から経済の仕組みを解き明かしたのが、近代経済学の父アダム・スミスでした。(p153)

 

マルクスは、資本主義の法則を読み解くことで、資本主義が最終的に崩壊するという経済理論をつくり上げました。それに対して、経済政策を適切に行えば、資本主義の欠陥を補った上で十分にうまく回すことができると考えたのが、イギリスの経済学者ジョン・メイナード・ケインズです。(p162)

 

初学者でも分かるように、具体例を交えて解説してくれているんですね。

また、一項目が30ページ前後なのも本書の魅力です。わずか30ページ程度で、教養の「礎」を学ぶことができるのですから、読まなくては損だと個人的には思います。

 

おとななら知っておきたい基礎教養を身につける一冊

いかがでしたでしょうか?

大人になってから「学びたい欲」が強くなったという方は多くいらっしゃると思います。

本書を「幅広い教養を身につける導入本」として活用いただければ嬉しく思います。

 

今回ご紹介した書籍

おとなの教養 私たちはどこから来て、どこへ行くのか?
池上彰(著)、NHK出版

池上彰×佐藤優『僕らが毎日やっている最強の読み方』

 

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