2017年アメトーーク!本屋で読書芸人で紹介された本まとめ
テレビ番組「アメトーーク!」の人気企画のひとつ「読書芸人」。2017年11月16日の放映はご覧になられたでしょうか?
私は、自分の知見を拡げるためにも「読書芸人」は欠かさずに見ています。非常に勉強になるんですよね。
芸人という多忙な日々を過ごしながら、月に何十冊もの本を読む「読書芸人」の皆さんを見ると、モチベーションがおのずと上がります。
今回出演されていたのは、オアシズ・光浦靖子さん、ピース・又吉直樹さん、メイプル超合金・カズレーザーさん、東野幸治さんの4人。
光浦さん、又吉さん、カズレーザーさんは「読書芸人」でお馴染みですが、東野さんは今回が初登場。
ここでは、番組の中で紹介された本をまとめてご紹介します。
2017年「アメトーーク! 本屋で読書芸人」で紹介された本
<オアシズ・光浦靖子さんの好きな本>
- 西加奈子『 i (アイ)』
- 吉村萬壱『臣女』
- パク・ミンギュ『ピンポン』
- 塩田武士『罪の声』
- 今村夏子『星の子』
- 奥泉光 『東京自叙伝』
<ピース・又吉直樹さんの好きな本>
- 岸政彦『ビニール傘』
- 羽田圭介『成功者K』
- 若林正恭『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』
- 中村文則 『R帝国』
- 山下澄人 『しんせかい』
- 古井由吉『ゆらぐ玉の緒』
- 呉明益 『歩道橋の魔術師』
- せきしろ 『1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった』
- 西加奈子『 i (アイ)』
- ジョン・アーヴィング 『神秘大通り』
<メイプル超合金・カズレーザーさんの好きな本>
- 呉座勇一 『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』
- ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史』
- 宇佐和通、石原まこちん『ムー公式 実践・超日常英会話』
- 眉村卓 『妻に捧げた1778話』
- 上川敦志、小口覺 、監修:大谷和利『スティーブ・ジョブズ』
<東野幸治さんの好きな本>
- 恩田陸『蜜蜂と遠雷』
- 本橋信宏『全裸監督 村西とおる伝』
- 宿野かほる『ルビンの壺が割れた』
- 佐藤多佳子『明るい夜に出かけて』
- 中村文則 『R帝国』
- 野崎幸助『紀州のドン・ファン 美女4000人に30億円を貢いだ男』
- 燃え殻 『ボクたちはみんな大人になれなかった』
- 柳澤健『1984年のUWF』
- 伊坂幸太郎『ホワイトラビット』
おすすめ作品ピックアップ!
読んだことのある本は何冊あったでしょうか?
これらの中から私が特におすすめしたい作品を3冊ピックアップして紹介したいと思います。
自分のアイデンティティを探し求める『 i 』
『 i (アイ)』
西加奈子(著)、ポプラ社
直木賞受賞作家の西加奈子さんによる作品。
主人公のアイは、アメリカ人の父、日本人の母に養子として引き取られたシリア生まれの女の子。
裕福な家庭で育ったアイは、世界中に存在する貧困を生きる子どもたちと、自分は何が違うのだろう?と考えるようになります。自分が生まれたシリアでは、今日も争いが繰り広げられているのに……。
両親と違う肌の色。アイデンティティーの確立のためにもがくアイのエピソードを読んでいると、つい涙が出そうになります。
現在の社会情勢のなか、日本で生きる身として、どのように生きていけばいいのか。どう立ち向かえばいいのか。その指針を教えてくれるという点で、他の作品にはない魅力が詰まった作品だと思います。
きっかけは、幼少期の自分の病気を治すため『星の子』
『星の子』
今村夏子(著)、朝日新聞出版
デビュー作『こちらあみ子』が三島由紀夫賞を受賞。2作目の『あひる』が芥川賞の候補。いまもっとも新作が待望される今村夏子さんの3作目です。
ちひろの両親は、「金星のめぐみ」という水が、ちひろの幼少期の病気を治したと信じています。
「金星のめぐみ」をタオルにかけ、そのタオルを頭に乗せて暮らしている両親。そんな家庭風景がおかしいと分かっていても、何も言えないちひろ。
みなさんも一度考えてみてください。大切な人が自分のために信じていることを、あなたも一緒に信じることができるでしょうか? また、信じられなくても、理解することはできるでしょうか?
科学的根拠がない、と切り捨てるのは簡単なことです。もしあなたがちひろの立場ならどうしますか?
本書をお供に、社会問題を身近なものとして一度考えてみるのも面白いですよ。
作者の体験をベースに作られた作品『しんせかい』
『しんせかい』
山下澄人(著)、新潮社
第156回(2017年度)芥川賞受賞作。あの有名脚本家・倉本聰さんが主宰する、富良野塾第二期生である作者が、当時について語ったとして話題にもなりました。
主人公である19歳の青年スミトが、演劇塾【谷】で塾生とともに共同生活を送る物語です。自然に囲まれた【谷】では、脚本の勉強を行いながら、自給自足、すべて自分たちで賄わなくてはならない暮らし。
その裏側には「良い脚本・良い演技というのは体を動かすことと連動している」という思想があったのです。
夢を追い、夢に悩む青春小説を楽しめるだけでなく、倉本聰さんの名言、富良野塾の内情なども知ることができて、個人的には大変興味深い作品でした。独特な文体もクセになりますよ。
リクエスト「熱くなく、ファンタジーじゃない本」は?
また、今回の「読書芸人」では、東野さんの「熱くなく、ファンタジーじゃない本」というリクエストに対して、3人の読書芸人がプレゼンをおこなうという企画がありました。
三者三様のプレゼンに心を打たれた人も少なくないはずです。それぞれどのような本なのでしょうか。
又吉さんチョイス:町田康『ゴランノスポン』
『ゴランノスポン』
町田康(著)、 新潮社
現実から遠く離れた非日常や、いわゆる“普通じゃない”ぶっ飛んだ世界を楽しみたい時にはこの一冊を。ハッピーと魔力の混沌を描く「黒すぎる笑い」が特徴的な短編集です。
タイトルになっている「ゴランノスポン」の主人公は、お金がなくても、精神的にゆとりがあればそれでOK。ストレスを抱えるぐらいなら金持ちになりたいと思わないし、気が向かなければバイトも休む。だって精神的に満ち足りている方がハッピーだから。という考えを持つ男。
彼の思想は薄っぺらく、その場かぎりで、でも本人は根拠なき自信に満ち溢れています。端から見れば滑稽な男の行く末は……?
表題作以外の作品においても、出てくるのはどこか不穏な男ばかり。読んだ後は、間違いなく心がざわつく、そんな作品に仕上がっています。
光浦さんチョイス:桐野夏生『夜の谷を行く』
『夜の谷を行く』
桐野夏生(著)、文藝春秋
1972年に起こったあさま山荘事件から45年。構想10年、連合赤軍の兵士を含む、多数の関係者の取材を経て完成した、実話ベースの大作です。
主人公は、連合赤軍の一員だった西田啓子。連合赤軍では、内部分裂による凄惨なリンチ殺人事件が起きており、啓子はその現場から命からがら脱走してきた1人。
逮捕され出所後、細々と目立たずに生きていましたが、ある日を境に、忘れたい過去に追われるようになります。
なぜ、20代の仲間同士が殺し合う結果になってしまったのか? 革命を夢見ていた女たちの真実とは? 犯した罪は、忘れたい過去は、もう二度と消えることはないのか? 連合赤軍とはいったい何だったのか?
国際情勢が不安定な今だからこそ読まれるべき傑作だと思います。当事件を知らない方にこそ読んでほしいですね。
カズレーザーさんチョイス:田中芳樹『岳飛伝』
『岳飛伝』
田中芳樹(著)、講談社
1100年代に活躍し、中国史上NO.1との呼び声もある武将・岳飛(がくひ)の物語。
歴史小説という形ではありながら、内容は伝記ではなくフィクションです。エンタメ色が強い作品となっており、歴史小説が不得意という方も楽しめる作品と言えるでしょう。
生後まもなく家が流されるという不遇の幼少時代から、聡明でリーダーシップ溢れる男性に成長した岳飛が、その頭の良さと機転で、頂上に上り詰めていく姿は、とにかく痛快です!
人情味溢れる作品や、勧善懲悪ものがお好きな方ならきっと気に入るのではないでしょうか? スカッとできて、中国史の勉強も同時に行えるので一石二鳥です。
また、田中さんは「人の目があまり向いていない時代と人物を掘り起こしていきたい」という言葉を度々仰っています。人があまり知らない、一味違った作品を読みたい方にはおすすめですよ。
『読書芸人』太鼓判の作品たち
興味のある作品はありましたでしょうか? ぜひ選書の参考になさってくださいね。
過去の「読書芸人」で紹介された書籍のまとめはこちら。