名作「高慢と偏見」が感染!? 「高慢と偏見とゾンビ」が日本上陸!
『高慢と偏見』(Pride and Prejudice:「自負と偏見」「プライドと偏見」と訳されることもあります)という作品をご存知でしょうか?
18世紀のイギリスで活躍した作家、ジェイン・オースティンによる長編小説で、反発しながらも惹かれ合う男女の恋愛を描いた作品です。
この歴史的名作に、なんと「ゾンビ」を混ぜ込んでマッシュアップしたのが、今回ご紹介する『高慢と偏見とゾンビ』です。映画化もされ、2016年9月には日本でも公開された作品。
原作好きな方もそうでない方も、要チェックですよ。※多少のネタバレにはご注意を。
『高慢と偏見とゾンビ』 二見書房
ジェイン・オースティン(著)、セス・グレアム=スミス(著)、安原和見/訳
そもそも『高慢と偏見』ってどんな作品?
まずは、もともとの原作『高慢と偏見』のあらすじを確認しておきましょう。
~あらすじ~
舞台は18世紀のイギリス。小さな田舎町ロングボーンに住むベネット家には、5人の娘がいました。主人公は、次女エリザベス。彼女は、読書好きで頭が良く、はっきりと物を言う女性です。
ある日、この町にビングリーという男性が移り住んできます。資産家である彼は、舞踏会で、姉妹の長女・ジェインと恋に落ちます。一方、エリザベスは彼の友人であるダーシーと出会いますが、彼はとても高慢な人物でした。舞踏会の場で手酷く侮辱されたエリザベスは、ダーシーに反感を抱くようになります。
その後、エリザベスは、ある若い士官・ウィカムと出会います。ウィカムはかつてダーシーにひどい扱いを受けたことを明かします。
さらに、ダーシーは、ビングリーとジェインの仲を妨害する陰謀をめぐらせていました。このことを知ったエリザベスは、彼に激しい怒りを覚えます。
しかし実はダーシーの方は、エリザベスの知性あふれる瞳に惹かれていました。
ある日、旅行先でばったり再会した二人。ダーシーはついにエリザベスに想いを告げますが、エリザベスはウィカムとジェインのことを挙げ、これを拒否します。その次の日、ダーシーは真相をしたためた手紙をエリザベスに送ります。エリザベスは、ダーシーの本当の人柄を知り、彼に偏見を抱いていたことを恥じます。そして、ダーシーに徐々に惹かれていくのですが……。
ゾンビに対抗する戦士となった姉妹たち
18世紀、良い結婚をすることが女性の幸せだった時代を背景に、姉妹の結婚までの道のりを描いた作品。そして、ここに何故か「ゾンビ」を加えてしまったのが、『高慢と偏見とゾンビ』です。
18世紀のイギリスには、いたるところにゾンビが徘徊し、人や馬を襲い、その肉をすすっていました。ゾンビに噛まれた人間もまた奇病にかかり、徐々にゾンビ化してしまいます。
5人姉妹の父であるミスター・ベネットは、姉妹を中国へ送り込み、姉妹はリュウ師のもとで少林拳の修行を積んで立派な戦士となり、イギリス国王からゾンビと戦う使命を下されます。
ロングボーンのベネット家にはドージョーがつくられ、日々訓練に励む姉妹たち。しかしゾンビの群れはあらゆるところに出没しては人々を襲います。
ダーシーとエリザベスが出会った舞踏会も例外ではありません。ダーシーに侮辱され、エリザベスは戦うことを決意します。
「戦士道にのっとり、名誉を守るために復讐せねばならぬ。」(p.18)
しかし、エリザベスの前にゾンビたちが襲撃してきます。
不運にも窓際に立っていた客たちは、たちまちつかまって餌食になった。エリザベスは立ち上がった。見れば、逃げようともがくミセス・ロングの頭に、二匹の女ゾンビがいましも噛みついたところだった。頭蓋骨がくるみのように砕け、黒っぽい血しぶきが噴きあがって、天井のシャンデリアを汚していく。
客たちが四方八方逃げまどうなか、その叫喚を切り裂いてミスター・ベネットの声が響いた。「娘たち! 死の五芒星だ!」(p.19)
知性ある勇敢な戦士・エリザベスの痛快アクション!
原作通り、知性をそなえた女性であるとともに、卓越した武道の腕前と、気高い戦士としての誇りを持ったエリザベス。持ち前の気の強さも相まって、カタナを手にばっさばっさとゾンビを倒していく姿は痛快そのもの。
ゾンビや少林拳、ニンジャなどトンデモ要素を盛り込みながら、それでいて、原作のストーリーを壊さず、破綻なく進んで行きます。
中盤では、エリザベスを快く思わないキャサリン夫人が、エリザベスとニンジャを戦わせるというバトルシーンまであります。(あ、この作品でのキャサリン夫人は、ゾンビ退治に多大なる貢献をした偉大な戦士…という設定です。)
エリザベスはいつもの試合用ドレスに、頼りのカタナを身に帯びた。レディ・キャサリンが試合開始の合図をしようと立ちあがると、エリザベスはこれ見よがしに目隠しをした。
「これこれ、お嬢さん」レディ・キャサリンは言った。「おふざけは身のためになりませんよ。わたくしのニンジャたちは手加減などしませんからね」(p.208)
ドレス姿にカタナ! 映画も注目!
18世紀のイギリスの淑女がゾンビと戦う、かなりぶっとんだ設定で、「ちょっと勘違いされた東洋」要素まで盛り込まれた異色作です。
ナタリー・ポートマンさんがこの作品に惚れ込み、映画化権を得て、リリー・ジェームズさん主演で映画化されました。
ドレスを着た美しい女性がカタナを手にゾンビを退治していく姿…ぜひ映像で見てみたいですね。
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♦『高慢と偏見とゾンビ』 二見書房
ジェイン・オースティン(著)、セス・グレアム=スミス(著)、安原和見/訳
♦原作『高慢と偏見』 ジェイン・オースティン(著)
ライター
- 3度の飯より本が好き。興味のおもむくままに、いろいろな分野の本を読んでいます。特によく読むジャンルは、IT、美術、語学、旅行、インテリア、漫画など。本好きが高じて、書店員をしていたこともあります。
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